あの晴れわたる空より高く「黎明夏帆」シナリオの感想・レビュー

事故で視力を喪失しかけている素直クールとロケットの電装部門でRLGのジャイロを作るはなし。
人に迷惑をかけまいと心を閉ざしがちな夏帆と心を通わしていく展開は心が躍る。
先を見通し諦めがちな夏帆に限界を突破する意欲を促す主人公くんの活躍もなかなか良い。
最後はみごと電装部門で優勝し、夏帆は手術を受けて視力を取り戻すのであった。

黎明夏帆√概要


  • 黎明夏帆のキャラクター表現とフラグ生成過程
    • 黎明夏帆素直クールで自分の感情を抑えがちな女の子。ロケット開発電装部門の実力者です。夏帆は幼少時にロケット事故に巻き込まれ大きな傷跡を負ってしまいました。父親はロケットエンジンの開発者で、母親はロケットの乗組員でした。父のロケットで母が宇宙へ行くという壮大な計画が実行に移されましたが、それは失敗に終わり、母親は死亡し、父親も責任をとって辞職しなければなりませんでした。夏帆自身も事故に巻き込まれて破片が目に入り、視力に障害を負うようになってしまってのです。しかしながら事故の原因究明はあやふやにされ、全てが夏帆の父にせいにされてしまったのです。無念を抱えながら夏帆はいつしか父の無実を証明したい、父の設計したロケットエンジンを使ってペイロードに母の遺骨を乗せて宇宙にロケットを飛ばしたいと願うようになったのでした。夏帆は自分が障害者であるからこそ周囲に迷惑をかけたくないと人一倍強く思っており、自分の感情や弱みを人にさらけだせません。そんな夏帆の心の支えとなってあげればフラグは成立さ。ロケット開発において足を捻挫した際、誰にも言い出せずびっこ引き引き帰ろうとする夏帆に主人公くんは心を打たれます。お姫様だっこで夏帆を送迎した主人公くんは途中の公園でブランコの二人乗りをしながらお互いの感情を吐露します。母親がいなくて寂しいと思う夏帆に対し、同じく母親を亡くしている主人公くんと喪失の感情を共有し、誰にも分かってもらえない気持ちを分かり合ったのでした。


  • 優等生の夏帆には出来ない主人公くんの意外な発想
    • 夏帆√ではロケット開発の電装部門でRLGのジャイロを作ることになります。ロケットを水平発射させて定点にどれだけ近づけることができるかを競うジャンルです。光学ガラスに適した基盤、表面粗さを最小にする研磨方法、反射率を最大にするコーティング方法を検討していきます。優秀であるからこそ後ろを向きがちな夏帆に対し、主人公くんは夏帆と一緒に悩みながら前へ前へと進んでいき、ひょんなことから夏帆が困難を乗り越えるためのアイディアを出していきます。フレネル反射の場面ではミルフィーユ・カレー・オムレツから誘導体多層膜を想起させたり、逆上がりパンツではRLGの精度低下の原因を発見させたりするのです。また主人公くんが漁師スキルを遺憾なく発揮して風読みの特技を発動させるところはナイスな感じ。そして夏帆は目が見えないからこそ感性が研ぎ澄まされ、研磨した時の手触りで反射率が分かる領域にまで達するのでした。



  • 視力を失う恐怖と手術への勇気
    • 艱難辛苦を乗り越えて、完成寸前にまでこぎ着けるのですが、ここでアクシデント。なんと夏帆の目は失明寸前であり、ほとんど見えなくなってしまったのです。部員に迷惑をかけまいと身を引こうとする夏帆に対し主人公くんは男を魅せます。夏帆を迎えに行って「一生、俺がお前の目になるよ」と少女の全てを引き受ける覚悟を示すのです。こうして主人公くんに受け入れられた夏帆は自分の弱さや恐怖を認めることができ、手術を受けるのが怖かったと白状し、部活を続けたいと述べたのでした。大会本番の水平発射では強風に視界を遮られるのですが、夏帆は目が見えなくてもやってのけたことを想起した主人公くんは、風を読み切り、定点まで20メートル地点につけ優勝を果たします。優勝トロフィーなんていらねぇ、夏帆の笑顔が優勝トロフィーだ!とくさい台詞を放つ主人公くんのことばがマイクに拾われ全国放送されるのもお約束。そして部門優勝は夏帆に勇気を与え、目の手術を受けることを決意させます。時は流れて卒業式。そこには目が治り元気にチャリをこぐ夏帆の姿が!!ハッピーエンドを迎えます。