院政期の絵巻物と鎌倉時代の似絵における人物の顔の描写の差異

院政期の絵巻物の引目鉤鼻と鎌倉時代の似絵を対比する問題。
引目鉤鼻が画一的であるのに対し、似絵が写実的で個性を重視していることを書けば点数がもらえる。

絵巻物編


まず訓練された受験生なら院政期の絵巻物って言われた瞬間に「四大絵巻」が思い浮かばなければならない。全部言える?分からなければ資料集見てね。


えーっと『源氏物語絵巻』『伴大納言絵巻』『信貴山縁起』『鳥獣人物戯画』かしらね。


出題者は「人間の顔の描写」を要求しているから、絵巻物における顔の描写「引目鉤鼻」を描けばいいのです。




源氏物語絵巻』とかの登場人物をみるとみんな同じ顔だわ。キャラの書き分けができていない。「太い眉」「細く線を引き、瞳だけをわずかに入れた目」「鉤形の鼻」「小さな赤い口」。


まぁ絵巻物だと登場人物は一種の記号で書かれていたわけです。現在のアニメ絵とかでもコンタクトに味噌汁がよそれるくらいの瞳だったり鼻が極端に小さかったりするでしょ?あれと同じようなノリです。


せっかく受験日本史の絵巻物を見たんだから、そのほかに出題されるポイントの紹介して欲しいわね。


絵巻物の特徴といったら上述の「引目鉤鼻」。そして「吹抜屋台」と「異時同図法」。



「吹抜屋台」って建物内部の人物を表現する場合に、屋根や天井を描かずに、上方から見下ろす視点で描く技法でしょ?これをみるたびに私はどらくえを思い出すのよね。ファミコンのどらくえって町や城の内部の描写に屋根ないでしょ?




そして最後は「異時同図法」。同一画面の中に同一人物が複数回登場する表現非法。時間的推移を表現しているとされます。有名なのは「信貴山縁起絵巻東大寺大仏殿で尼公が一場面に6回描かれてるやつ」や、「鳥獣戯画の第16紙後半〜第18紙でカエルがウサギを投げ飛ばすやつ」ね。




ここで紹介するのは「伴大納言の子どものけんか」のシーン。1場面の中におなじ子供が3回、父親が2回登場しているわね。?こどものけんか、?父親登場、?父親キック、?母親が子どもを連れて逃げる。




このようにして、同じ場面に同一人物を二度三度と書き、動きと物語の進行をあらわすことを異時同図法という。

似絵編


「似絵(にせえ)」は偽物の絵ではく、本人に似せている絵なんだよぉ〜とかいって塾とか予備校では教えている。


似絵のポイントは「写実的」「記録的」「個性を重視」の三点ね。作者としては藤原隆信・信実親子が知られているわね。


歴史は書き換えられる〜というのがブームになった時に、源頼朝じゃない!とか騒がれたのが隆信の作品でしたね。現在は「伝」源頼朝像として資料集や用語集に載っています。


信実の似絵として有名なのが後鳥羽上皇像ね。『吾妻鏡』では承久の乱後の隠岐配流に際して信実に描かせたと記されているとのことだわ。