国史概説001「日本における歴史学研究の趨勢について」

【1】歴史学のトレンド

1.戦前
  • 重野安繹・久米邦武らによる漢文編年史

 

 

  • 実証主義とは証拠がなければいけないが、科学主義は客観的とは限らない 必ずや主観的なもの
    • 問題意識があって論点があって初めて結論が得られる よって科学主義≠客観
    • 三上・黒板の歴史は全然客観的ではない。
    • 辻とかみんな右翼 国家主義者 論文:能の「白楽天は天才なり」 日本人が中国人を和歌で打ち倒す スミヨシシンが白楽天を倒す
      • 元ネタ →1419年 応永の外寇(朝鮮政府が対馬に海軍を派遣して襲撃) 客観的ではない主観丸出しの論文
      • 実際に起った事件と結び付けて理解する 因果関係に成功しているとは言えないが、実証主義を目指そうとはしている。
  • 根拠となるもの 歴史学においては史料
    • 史料とは何か? すべて、考古、遺構。「問い」をぶつけて彼らに語らせる
    • 彼らがターゲットにしている史料は・・・古文書 古い資料 ドキュメント
    • 文書 → 誰かから誰かにあてたもの(個人でも役所でも) 手紙・公文書・契約書 さまざま(AからBへ)  
    • 古文書を集めなければならない 古文書を搔き集めてくる 史料編纂所はそれを続けている(マイクロフィル・デジタルなど)
  • 正史をつくるのは諦めよう 正史を作るのは無理 編年史料を作る 古文書の集成と出版 の方針に切りかえる
    • 大日本史料』『大日本古文書』唯一鎌倉時代の編纂は終わっている 中世が日本史の花型!! 
    • 『大日本古文書』は海外資料もある オランダとかポルトガルとかスペインとか 海外史料   
    • 文書はイエに伝わるもの 大きい寺とか神社
    • 江戸時代になると農村文書が増える 戦後にどーっと調査に入る
    • 最初の頃の日本近世史の研究は海外史料
    • ドキュメント 江戸時代は海外文書 外交文書から始まる
  • そもそもディプロマシーは文書 今は外交と訳すが
    • ヨーロッパでは君主同士のやり取り ディプロマシーはお付き合いのテキスト
    • ヨーロッパ流のランケを学んだ人たちは 海外文書 東京大学ではある時期までオランダ語が必修
    • 岩生成一
    • 海外のドキュメントを活かして使う
  • 皇国史観の登場
    • 平泉澄 かなり右よりに偏った人 国粋主義者 ヨーロッパ行ってからおかしくなった
    • 当時の国粋主義 天皇に対する忠誠が大事 日本は神の国 皇国史観
    • 科学主義がないがしろにされていってしまう
    • 時局に合流していしまうことの恐ろしさ アジア太平洋戦争
    • お国のために命を投げ出すことを 実証主義者たちがやる 最高学府の帝国大学でこのような言説がふりまかれる
    • 時局におもねるようではダメ 批判的な目を養う それが研究者 批判的に物事を見るために大学に来ている

 

  • 客観的な歴史学は成立するのか!?  → 戦後へ
2.戦後歴史学 → 科学的 実情はすっとばす 法則だけが先行してそれに当てはまるように分けられる
  • 民族に拘る 
    • 日本民族が新しい日本を創る すごく牧歌的 のんきというかナイーブ 
    • 日本国民至上主義 いってみれば民族主義
  • マルクス主義史観とは すべての民族が同じ進歩で発展していく 進歩史観
    • →時代区分論のはなし 奴隷制(古代)→封建制(中世)→(マルクス主義に近世はない)→資本制(近代) この後は社会主義共産主義へ・・・
    • ※実際にはこの流れで進んでいく民族は殆どない
    • 戦後歴史学にとっては 法則に乗っかっているから 科学的 
    • 地域と国により時期が変わる 例:近世 中国は10世紀 日本は17世紀 プロセスをすっとばしている

 

 

  • 戦後歴史学は実証すっとばして 歴史学が空洞化する 
    • このころの論文は躍動感があって熱いが 実証的には残らない空疎なもの。

  

3.「社会史」 境界領域→よそ者をどのように内包するか
  • 網野善彦石井進笠松・勝俣など
    • 網野先生の例 扇を顔にかざす これは何を意味するのか 結界を作る 外の世界から自分を隠す 穢れとか見たくないもの 扇の骨から覗き見るという作法
    • 勝俣先生の例 中世の一揆は決まったユニフォームがある。笠とか蓑とか 日本の一揆は誰が首謀者を分からないようにするため 顔を隠す
    • 黒田日出男・保立道久など

 

  • ※参考文献 面白い本 『中世の罪と罰』(東京大学出版会)
    • 人の暮らしが見えてくる  レベルが変わってくる
  • 外からタームを投げかけるのではなく 実証が下から進んでいく。 
    • 多くの人達が社会史に乗り込んでいく。
    • 文献史料だけでは成り立たなくなる
    • 様々な史料が爆発するようになる 絵画「史」料など 考古学・民俗学・人類学・建築史・文学などなど
  • いろんな史料が使われるようになると・・・雑になる!! 
    • 中国の景徳鎮の焼き物 → 裏に記されていた年代と全然違うのに信じちゃった
    • 異時同図法 絵巻物 同じものが複数書かれている それにも関わらず異時同図知らなくてその図を違うものとしてかいちゃう
      • 事例:書いちゃった人→服部英雄『蒙古襲来と神風』(中公新書) とても恥ずかしいはなし
  • 社会史が流行ると史料の扱いがとても大変
  • 社会史に対する反発は・・・ 安良城盛昭 中世と近世の断絶を強く主張 
    • 太閤検地論争 封建制は中世では達成されていないと主張 (中世のヒト達は鎌倉時代御家人制で達成されてると主張)
    • 太閤検地以前は奴隷制だった!!!という内容 社会全体をどうみるのか一大論争 中世と近世は喧嘩別れしそうになる
    • 最近の研究:平井上総『兵農分離はあったのか』 兵農分離→「作合」の否定 江戸時代を通じて達成されているのか
      • 安良城先生のように中世と近世がぶった切れるわけではない → 中世の人も受け入れてくれている。
4.グローバルヒストリー(中国では全球史とよばれる)
  • グロヒスの種類
    • ビッグヒストリー、環境に特化、世界史上の動きに特化、
    • 昔はネットワーク論と呼ばれていたが、それの全世界版
    • ネットワーク論とは 船乗りとかラクダとか商人に着目して国家にとらわれない歴史をえがこう

 

  • 世界史
    • 従来は地域世界論 セカイを分けて縦系列に学ぶ (※速記者註:これって文化圏学習じゃね?)
    • 地域世界で分けると見えてこないものがある 貿易とか疫病とか → そこでネットワーク論がある
      • 高校世界史に持ち込まれると・・・オアシスセカイ、海域世界、地中海など交易圏をやりだす。
      • 高校生がキャラバンとかソグド商人を学びだす
      • その後、グローバルヒストリー。
  • 【参考文献】水島司『グローバルヒストリー入門』
  • 日本の歴史学の内在から生まれたものではない。
  • 今、揺り戻しが起こっており、ヨーロッパでは外交史が盛んになっている。
  • 今は、歴史学は個別分散化してしまっている。

 

  • 日本史はグローバルヒストリーにどうやって関わらせるか?
    • ヨーロッパの外交は人と人とのディプロマシー
    • 前近代日本史は違う。外交文書のやり取り。すごくアドホックな関係でしかない。だからこそ1回が大事→冊封お願いします。  
    • それはヨーロッパにない文化 彼らはよく分かってない 日本史が貢献できるとしたら、アジア 琉球・明・ヴェトナムとのやり取り それをグロヒスにつなげる
    • 主権国家に変わったのはいつどこでなぜ それをグローバルヒストリーとして投げ出していかねばならない
  • パスポートの歴史 中国は紀元前から通行証として割符を使っている アジアに目を向けましょうよ。 
    • それがひょっとしたら繋がっているかもしれない。
  • 日本外交史
    • テキストだけみていてはダメ 外交儀礼 どういう服装?どういうやりとり?
    • これをグローバルストリーにしていかなければならない
    • なので日本語だけではダメで英語で発信しなければならない。

質疑応答

【質問】
ソ連の崩壊によりマルクス主義史観や発展段階史観が勢力をなくしたことが世紀転換期における歴史学研究の趨勢に関わっているかと思うのだがどうか?

【お答え】
世紀末転換期といえば天皇陛下崩御が大きい 右よりの研究が勢いを無くし、研究が個別分散化する契機となった

授業で読むように指導された参考文献まとめ(紹介された順)