凍京NECRO 「ネクロポリス編(コン=スー√)」の感想・レビュー

自己増殖する都市をリビングデッド化し全世界を飲み込まんとするネクロポリス計画を防ぐはなし。
早雲とエチカをリビングデッドにするとイリアが自罰の念を抱き絶望してこの√に入れる。
イリアは電脳世界に閉じこもりヒッキーとなるが、早雲やコン=スーが働きかけて現実を見る。
訳も分からずリビングデット化してしまった早雲たちが自分の死に意味付けをしていく場面がおすすめ。
なんか電脳世界の情報思念体というとリバースコロニーやココロファンクションを思い起こすなぁと。

ネクロポリス編概要


  • イリアの過去について
    • デザイナーズチャイルド
      • イリアは児童を利用した生物実験の被験者でした。この際イリアは類まれなる共感能力を発現していきます。電脳空間に発生した思念体と接触できたのもこの能力のおかげでした。イリアは生体実験施設でコン=スー(当時はリザ)と親友となります。このコン=スーがイリアのために奮闘する姿を描いたのが、ネクロポリス編の見せ場となっていきます。イリアとコン=スーは生体実験施設から脱出するのですが、その際に離れ離れになってしまいます。コン=スーは苦労の末、ハッカーとして店を持つまでになり、職務の傍らイリアを探し始めます。一方イリアは軍用ロボットの製造販売で名高い企業家に目をつけられ保護されていたのです。ある時、イリアは電脳空間疑似体験ソフトを開発します。これをプレイしたコン=スーはモチーフが幼少期の想い出の場所であることに気づきイリアの生存を確信するのです。こうしてコン=スーはイリアの解放を画策するようになり、凍京副都知事誘拐事件につながるのです。こうして物語の序盤における早雲とイリアの出会いが実現するのです。
    • 電脳空間における身体を超えた同一化について
      • イリアはなぜ軍事ロボット開発者に目をつけられたのでしょうか?それはこの人物が身体を超えて電脳情報思念体と同化し、電子空間における普遍的な存在になろうとしていたからです。90年代にもエヴァという作品があって、集合的無意識によって身体を超えて人類の同化を目指していましたね。あれも愛する女のクローンと同化しようとして拒絶されていましたが。そんなわけで軍事ロボット開発者はイリアを利用して電子情報思念体を出現させるのですが、結局は同化することに失敗し、肉体に戻ることもできず消滅していきます。イリアは自分が思念体をおびき寄せるための餌に過ぎなかたことに愕然とし、しかも情報思念体を裏切ってしまったことにも絶望するのです。



  • ネクロポリスについて
    • この物語の世界では電気信号によって自在に形状を変えられる物質が存在しています。この物質は人々の感情によって成長速度を高めることができました。ゆえに人々の感情に働きかけることのできる情報思念体が必要とされており、その思念体に接触できるイリアが求められていたのでした。しかし、上記の便利物質そのものがリビングデッド化されてしまうのです。人々の感情に応じて成長速度を高める物質がリビングデッド化すると、人々の負の感情に感応して次々と都市を飲み込んでいきます。物語の世界観では人々が負の感情抱きやすい状況にあるため、瞬く間に全世界が滅亡する危機に陥るのです。これを救えるのはイリアだけなのですが、イリアはすっかりヒッキーになり電脳世界に閉じこもってしまっていたのです。早雲を死なせてしまい、エチカも死なせてしまい、さらに情報思念体を二回も裏切ってしまったイリアは現実世界から逃げ出します。これを救うのが早雲とコン=スーであり、電脳世界と現実世界の両方でイリアに働きかけます。すでに死んでしまった早雲は自分の物語を終わらるために人生の意義づけを行うのですが、それがきちんとイリアとお別れをすることだったのです。電脳世界にダイブした早雲に対して、コン=スーは現実世界から働きかけます。21世紀初頭の仮想空間を具象化し、人々に希望を与えるのです。こうして人間は負の感情を持っているけれども、それをひっくるめて人間なんだと人間肯定がなされます。早雲との関係に決着をつけ、コン=スーに手を伸ばされたイリアは現実世界に戻っていきます。イリアが現実に回帰することで、負の感情を食い物にするネクロポリスは止まります。そして早雲やエチカは電脳空間の意識体となり、情報思念体と同化して、世界の一部となるのでした。