戦後国際関係史 第三世界

1.第三世界

(1)第三勢力とは何か?

  • 国際政治の中で、米ソ二大陣営のいずれにも与せず、積極中立を主張した勢力。1950年代後半、インドを先頭とするアジア・アフリカの新興諸国が中心となり、反植民地主義・平和共存を主張した。

(2)第三勢力の形成

  • ネルー周恩来会談(1954年6月) 
    • インド、中国間で行われた会談で、5つの外交上の原則を定めた。
    • 平和五原則…ⅰ)領土保全と主権の尊重、ⅱ)相互不侵略、ⅲ)内政不干渉、ⅳ)平等と互恵、ⅴ)平和的共存  
  • ③アジア=アフリカ会議(1955年4月)
    • インドネシアのバンドンで開かれた史上初のアジア、アフリカの首脳会議。
    • 29か国からの首相の参加を得て、平和十原則を発表し、反植民地主義・平和共存などの理念を強く打ち出した。
    • 平和十原則…ⅰ)基本的人権国連憲章の尊重、ⅱ)主権と領土の保全、ⅲ)人種と国家間の平等、ⅳ)内政不干渉、ⅴ)自衛権の尊重、ⅵ)集団防衛の排除、ⅶ)武力侵略の否定、ⅷ)国際紛争の平和的解決、ⅸ)相互協力の促進、ⅹ)正義と義務の尊重

2.中ソ対立

①中ソ対立の起源

  • ☆中国の立場
  • ソ連との対立を招くようになる。

チベット反乱(1959.3)

  • 1958年「大躍進」失敗 → チベットでも大量の餓死者
  • 政教一致の原則とチベット仏教の布教を求めて首都ラサで大規模反乱が起こる。
  • ダライ=ラマはインドに亡命。インドはダライ=ラマと反乱軍を支持し、中国軍と衝突。
    • ソ連はインドの立場を支持 1959年12月 中ソ技術協定破棄

③中ソ対立表面化

  • 1960 「大躍進」失敗後、経済混乱の中にある中国に対して、ソ連人技術者の引き上げと経済援助の破棄
    • →中ソ対立表面化

④公開論争

⑤武力衝突

⑥中ソ対立の影響

  • 社会主義陣営と各国の左翼運動に亀裂をもたらす。
  • アジア、アフリカ諸国への経済、軍事援助でも両国は競合し、民族解放闘争の行方にも大きな影響。

3.第三世界の分化

(1)南北問題…世界の問題を西側資本主義陣営と東側社会主義陣営の対立からとらえるのではなく、豊かな北側先進国と貧しい南側途上国の対立としてとらえる考え方。

  • 国連貿易開発会議(UNCTAD)
    • 発展途上国の経済発展を促進する仕組みを形成していくことを目的に、国連によって設けられた会議。
    • 先進国に有利になっている貿易システムの改善や発展途上国への援助の拡大を通じて、南北問題の解決をはかろうとしている。

(2)南南問題…発展途上国間でも富裕化した国々と最貧国との間に格差が存在すること。

  • ①富裕化した国・地域
    • a)産油国…オイル=ショックによる原油価格の高騰で高所得国に上昇。
    • b)NIES新興工業経済地域。加工業や中継貿易の育成に成功して中所得の国や地域となった。ブラジル・メキシコ・アルゼンチン、香港・台湾・韓国・シンガポールなど。
    • c)ASEAN東南アジア諸国連合。当初は反共軍事同盟であったが、政治経済面での協力機構に移行。92年にはASEAN自由貿易圏が結成され、99年には東南アジア全ての国が参加しASEAN10となった。
  • ②低所得地域
    • 中米・アフリカでは人口の爆発的増大、首都への人口集中プライメートシティ、内戦や自然災害による農業不振、難民増加など解決の道は見えない。

(3)冷戦後の第三世界

  • 第三世界が経済的に多様化
  • ②冷戦体制の崩壊による民主化 → 外交的・政治的に選択肢が増え、武力紛争、内戦が増加

4.多発する地域紛争とあらたな国際協力の模索

(1)多発する地域紛争

  • ★米ソ冷戦体制の規制力の衰退の影響
    • 1980年代~地域的覇権をめざす国際紛争民族主義や宗教対立による内戦やテロ活動、地域主義の動き

(2)多民族共生への反動

  • 社会主義圏崩壊後の民族国家の出現
  • クルド問題…2000万のクルド人が国家を持てず、トルコ・イラン・イラクで少数民族として抑圧される。
  • ③スリランカ内戦…多数派仏教徒シンハラ人と少数派ヒンドゥー教徒タミル人の武力抗争
  • 東ティモール内戦…ポルトガル植民地帝国が崩壊し東ティモールを手放すとインドネシアが一方的に併合したため内戦となった。2002年に東ティモールは独立を達成した。
  • ⑤サハラ以南のアフリカ諸国の内戦 
  • イスラーム原理主義への回帰によるテロ

(3)国際連合の課題

  • ①地域紛争の解決において国連平和維持活動(PKO)や非政府組織(NGO)の活躍
  • ②国連の課題
    • 現地での対立が複雑であったソマリアではPKOが失敗
    • 武力で地域覇権を求めるイラクの軍事行動や政府が関連する少数民族の迫害などへの対応の遅れ
      • →米軍やNATOの軍事制裁に頼ることが多い。

(4)広域協力・経済協力機構

  • 国際連合を補い地域紛争を抑制するための機構の整備
    • ASEAN、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、アフリカ連合(AU)、ポーランド・チェコ・ハンガリーが加盟したNATO