『その日の獣には、』(体験版)の感想・レビュー

題材は演劇。主題は自己の魂と引き換えに欲望を叶えられるかどうかについて。
筋書としては、1年生は夏の大会には出られないという演劇部の因習を打破するために動いていく。
物語の根幹となるのは、魂を捧げることを見返りに望みをかなえる「悪魔的な存在」。
体験版では、幼馴染の磯貝舞雪が悪魔から一時的に演技力を獲得し選考会への出場を勝ち取る。
しかし途中で舞雪は日和ってしまい、選考会を前にして演技力は失われ、チームは空中分解寸前。
そのような中で今度は病弱ヒロインの祈莉が悪魔と契約し、素晴らしい台本を手にする。
果たして、面倒くさい系ヒロインばかりで複雑な人間関係の錯綜の中、演劇は成功するだろうか?

面倒くさいヒロインと複雑な人間関係の錯綜がウリ

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演劇を成功させるために悪魔に魂を捧げるメインヒロイン
  • 自分たちの演劇をするために立ち上がる歪んで捻じれたヒロインたち!
    • 主人公くんたちは名門演劇部に青春を賭ける1年生。しかし、その演劇部には1年生は夏の大会には出られないという因習がありました。主人公くんは理由もない一方的な押し付けに我慢できません。一度目は一人で部長に直訴に行って失敗するのですが、2度目は実力派女優であるイモウトを引き連れ説得に成功します。こうして主人公くん、イモウト、幼馴染、病弱の4人でチームを組み、演劇に挑むことになったのです。しかしながら、主人公くん含め、各ヒロインたちはコンプレックスを抱え若干メンヘラ入っている何とも面倒くさい人物ばかり。そこがこのメーカーの作風のウリでもあります。また、二つ目の作風の特徴として、シナリオやテキストで描写の掘り下げを行わないため、場面転換が急であり、ブツ切りにされたシナリオを無理やり接合した感が若干あります。



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優秀な姉と比較されて自己肯定感ゼロ
  • 優秀な姉との比較され自己肯定感が低いが故に主人公くんへの好感度がMAXな幼馴染
    • まず初めに悪魔契約するのが、幼馴染の磯貝舞雪。この人物は優秀な姉と比較されて育ち非常に自己肯定感が低く泣き虫という設定です。そんな弱さを幼少の頃から、主人公くんに救われてきたので、最初から好感度マックスで主人公くんに尽くすことを歓びとしているのです。一生懸命脚本に取り組む主人公くんの役に立ちたい一心で因習打破グループに参加し、役者に挑戦することになります。素人の舞雪が劇に貢献できることは殆どありませんでした。それ故、悪魔契約発動!魂と引きかえに、役者としてのスキルを向上させます。この舞雪の演技の素晴らしさにより、主人公くんのグループはおめがねにかなって、選考会に出場できることになったのでした。しかしながら、舞雪は悪魔に魂を捧げることを躊躇したため、その演技力の才能は失われることになります。そしてこれが、メンバーを空中分解に導くのです。また、まどマギのさやかちゃんのように自分の一方的な奉仕が相手に通じないと勝手に闇堕ちし始めます。



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他者を見下すことでしか自己の存在意義を示せないイモウト
  • 自分の能力を鼻にかけ他者を見下し優越感を抱くことでしか存在意義を示せないイモウト
    • 主人公くんの義妹である友瀬瑠奈は女優のタマゴです。演技力をそこそこ認められており、主人公くんの誘いに乗ることになります。当初、瑠奈は上級生におもねり下積みで媚びて成り上がろうとします。しかしそれでは因習が崩せないとみるやいなや主人公くんサイドに寝返るのです。しかし、選考会にでるための演劇では、舞雪ばかりが評判になり、瑠奈の演技については1ミリも触れられなかったのです。そのため嫉妬のカタマリとなります。さらに、舞雪が魂を捧げることを日和ったために演技力が失われてしまうと、舞雪に八つ当たりを始めます。主人公くんは舞雪の演技力低下を脚本により埋めようとするのですが、結局は上手くいきません。そしてとうとう瑠奈はチームを見限ってしまうことになります。他者を自分の出世のためのコマとしてか見なしておらず、上手くいかないと責任転嫁して自分はさっさと逃げ出す瑠奈の様子を是非ご覧ください。主人公くんにより、1ミリも評価されなかった瑠奈が今更上級生のもとへ戻っても受け入れてもらえるはずがないと論破されるところがみどころです。



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孤高ぼっち
  • ホスピスであり富裕層の子弟であるがゆえに自分本位でしか物事を考えてこなかったメインヒロイン
    • メインヒロインの深浜祈莉は、ホスピスであり入退院を繰り返してきました。常に浦島太郎状態であることにウンザリした祈莉は自ら人間関係の構築を放棄してしまうようになります。こうしてぼっちを貫いてきた祈莉でしたが、主人公くんに声を掛けられ、演劇部での活動を続けていくうちに、集団行動の価値を見出し、友情を育んでいきます。これまで自分本位で生きて来た我儘な祈莉でしたが、コツコツと参加し続けることの意義を知ったのです。そのため、空中分解していくチームを見て黙ってはいられませんでした。そのため、祈莉も悪魔契約を発動し、自らの命と引き換えに、素晴らしい脚本を手にします。この台本ならきっと上級生に認められる、あとはどのように演技するかだけだ!と新たなブーストを得た主人公くん一派は選考会へ向けて結束し、空中分解を防げたのでした。祈莉はどうやら完治しておらずホスピスのままであり、それゆえ魂を捧げられるのではないかというニュアンスが伏線として張られています。祈莉が用意した脚本こそ、『ソノヒノケモノニハ、』だった!ということでタイトル回収をして体験版はお開きになります。



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決断を迫るメインヒロイン
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主人公のイモウトを殴る幼馴染
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タイトル回収

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