「ゆずソフトの歴史」に見る「記憶の共有と再記憶化」(千恋*万花カウントダウンムービー28日前より)

どんなに発売当時に評価が高く、瞬発的な売り上げを記録しても、何もしなければ時間と共に記憶は薄らいでいく。
一方で人口に膾炙し語り継がれることで人々の記憶に残り古典として後世に残ることもある。
ゆえに「歴史」的イデオロギーを利用し、たびたび記憶の「共有」と「再記憶化」を行うことが求められる。
作品の概要をまとめ、それに評価を与えて歴史的な位置づけを行い、人々へ啓発と普及を促すのだ。

その語り口(歴史叙述)がそれぞれの歴史家の醍醐味ともなり、面白さにも繋がる。
また「自らが語る公式の歴史」においては「自らをどのように位置付けているのか」という自己解体を分析できる。
では一体、ゆずソフト自身はみずからの製品をどのように位置付けているのだろうか?

千恋*万花のカウントダウンムービー(28日前)では「ゆずソフトの歴史」を振り返っているので見ておきましょう。

時間配分としては昔の作品ほど長く時間が割かれているが、限られた時間の中で作品の特徴をよくまとめている。
「これこれはこういう作品」という公式の位置づけをキャッチフレーズと共に視聴者に植え付けていることに成功している。
しかし覚えやすくてインパクトもあるが身も蓋もないな。


以下ゆずソフトで感想を書いた作品まとめ
昔書いた文章を読み返すとなんだか稚拙な感じがする。作品紹介というよりは雑感を連ねたような文章である。

J・さいろー、姫ノ木あく、天宮りつ『DRACU-RIOT!』(ゆずソフト)(2012-03-30)

『ドラクリオット!』はお気楽吸血鬼異能バトル活劇。可愛い女の子と一緒に特殊スキルを駆使しながら、犯罪組織を取り締まれ!!というノリ。「吸血鬼」という存在から起こるヒロインたちの対人関係の悩みを共有することで、フラグが成立。その後、ヒロインと協力しながら「社会的な問題」を解決していく。エロゲパターンの型どおりといってもいいほど。「個人的な悩み」⇒解決してフラグ成立⇒『社会的な問題』⇒解決してエンディングという展開。全エンド後に解放されるサブキャラのニコラがキャラ的に一番可愛く感じる。

J・さいろー , 鏡遊 , 天宮りつ , 紺野アスタ『天色*アイルノーツ』 (ゆずソフト) (2013-07-26)

挫折した社会科教師がファンタジー世界で再チャレンジして少女救済に成功し、本当の教師になるはなし。社会科教師が少女救済と書くと『遙かに仰ぎ、麗しの』。なんで舞台をファンタジー世界にしたんだ?と思わざるを得ません。さすがにメインのシャーリィー√はよく描かれていて、挫折した主人公くんが過去のトラウマを乗り越えるシーンでは思わず手に汗握ってシナリオを読んだ記憶があります。各個別√のシナリオの出来の差がバラバラで共通√と個別√で愛莉なんかは人格崩壊しています。あと、ファンタジー世界の核となる世界設定を扱える木乃香√がオマケ扱いです。

保住圭 , 籐太 , 天宮りつ『サノバウィッチ』(ゆずソフト) (2015-02-27)

主人公くんが保有する「他人に負の感情を向けられると実際に苦痛を感じてしまう」異能を題材にして、「踏み込んだ人間関係を構築できない」人々たちの交流を描きます。ヒロイン達はみな他人と踏み込んだ関係を築けず人の絆を求めていました。特にメインヒロインの綾地さんは周囲からクール教で頼れると信仰を集めていましたが、それは周囲から一歩引いてしまったいたことの副産物。なんと綾地さんは発情の呪いにかかっていた痴女だったのです。いや「秘密の共有」を行うことで主人公くんとの関係性を深めるという手法をとる際に、発情を選んだのも英断だよなぁと思います。のっけから角オナで悦楽に浸る綾地さんの表情は一見の価値ありなので、体験版でやってみてください。そしてシナリオの構造にも工夫が見られており、綾地さんの呪いを解くために一緒に協力して事件を解決すると、最終的に綾地さんが消滅し過去改編するために現在の時間軸から消滅してしまうという展開。主人公くんは綾地さんがの存在を忘却してしまったとしても二人の日々で培った物事へ前向きになる姿勢は最後まで残り新たな人生に乗り出していくのだった!!というビターエンドも結構好きです。1周目攻略後にOP画面にリスタートが出現し、2周目では結ばれるのですが。これはフラグ管理しておいて1周目に綾地さんが消滅したからこそ他ヒロインが攻略できるような仕掛けにしておけばかなり面白い試みになったのではないですかね?あとサブヒロインが攻略できて和奏ちんの可愛さが堪能できます。さらにサブヒロインなのに専用の楽曲まで用意され文化祭バンドが実施されるという優遇っぷり。ドラクリオットのニコラもそうでしたが、サブヒロイン可愛いよなぁと。