概要
札幌聖心女子学院における近現代オスマン帝国史の取り組みが紹介されている。必修授業ではなく高3数十名に対する選択の世界史授業である。タイトルが「教科横断の試み」とあることからも分かるように、音楽・文献講読・小説・映画・家庭科と様々な視点から近現代トルコの臣民意識・民族意識・国民意識について迫っている。最初からトルコの体系的な学習を試みたのではなく、最初は「帝国」について学習していたが、生徒の散発的なつぶやきをもとにして、ナショナリズムの具体例として偶発的にトルコを題材にしたとされている。歴史教育でコンセプトベースな理解を持たせることが必要で、それにはルーブリック評価を行うことを提唱している。
札幌聖心女子学院
「オスマン帝国を例にした世界史演習」の授業構成
- 1.「帝国」の定義(4時間)
- 生徒に「帝国」の定義について考えさせる時間。調べ学習を行わせ、生徒の疑問点を集約して、教員が「帝国」の定義をした。
- 2.「トルコ行進曲」はトルコっぽくない?(1時間)
- 3.文献講読『オスマンVSヨーロッパ』(15時間)
- 生徒たちに分担箇所を決めさせ、レジュメの作成と報告をさせる。
- 4.クイズ「小説の舞台は、いつごろのどこ」(2時間)
- 5.映画「タッチ・オブ・スパイス」の鑑賞(3時間)
- 6.調理実習「ソウルフードを実食!」(2時間)
- 7.再び「トルコっぽさとは」(1時間)とルーブリック評価
- 生徒たちがトルコナショナリズムの重層性から「トルコっぽさ」を考えられるようになったことを紹介。
- 評価はルーブリックや提出物・発表などを点数化する。(ルーブリックとは子どもの学習到達状況を評価するための評価基準表)。「評価基準を事前に示すことで、生徒達はこの授業で何が求められているかを理解をしたうえで臨める利点がある」とメリットが述べられている。
「コンセプトベース」な理解の重要性
- 人物名や年代を記憶することは、あくまで自身がその歴史をどう評価するかを考える時に役立てる手段。
- 社会が求める人物像は「思考すること」の価値を認め、社会、世界に対するコンセプトベースな理解を持っていること。
- ここでいうコンセプトベースとは何か?
- 科目・教科の枠をこえて無限なコンテンツからいくつかを選び取り、批判的に検証し、そこから何かの普遍的、あるいは本質的な考えを導き出せる力。
- ここでいうコンセプトベースとは何か?
- 柔軟な想像力や真理を見抜く力を磨くために、多面的に広く深く世界や社会を眺める経験が、批判的思考力・論理構成力とともに求められている。→それをはかるにはルーブリック(子どもの学習到達状況を評価するための評価基準表)による評価が必要。