イタリアは「未回収のイタリア」問題からフランスに接近し、協商国側に加わって参戦したのか。〜同志社大学 2018年度全学部日程文系(2月5日実施)世界史 大問?設問4 第一次世界大戦における三国同盟に関する記述の正文選択より〜


とりあえずこれを見て欲しいのだわ。正文選択の問題であり、消去法で解けるのだけど・・・
(同志社大学 2018年度全学部日程文系(2月5日実施)世界史 大問?設問4 )



では早速検討していきましょう。まずは外れ選択肢から

  • 選択肢1について。
    • 三国同盟はヴィルヘルム2世ではなくビスマルク。ヴィルヘルム2世は新航路政策で膨張政策を取りました。そして三国同盟の孤立化の対象はイギリスではなくフランス。普仏戦争で大勝利したためフランスの報復を恐れたのでしたよね。
  • 選択肢3について
    • ドイツが再保障条約を結んだのはイギリスではなくロシア。
  • 選択肢4について
    • ビスマルク露土戦争後にベルリン会議を開き、その結果サン=ステファノ条約が破棄されたが、その後再保障条約を結んで相互の中立を約束している。反露ではない。
  • 選択肢5について


と、いうわけで消去法でいくと選択肢2が答えになるのだけど、選択肢2の内容が微妙なのだわ。確かに第一次世界大戦において「未回収のイタリア」に釣られて三国同盟側のイタリアが連合国(協商国)で参戦したのはごくごく有名な話よね。


しかし、多くの受験生はここで「ロンドン密約」を思い浮かべるのではないでしょうか。そうすると、アレっ?確かにイタリアは連合国(協商国)で参戦してるけど、「フランス」に接近したんだっけ?と疑問が生じてしまうのですよね。


とりあえず手元の山川の『詳説世界史』にも東書の『世界史B』にもイタリアがフランスに接近した記述はなかったのだわ。ついでに木下康彦・木村靖二・吉田寅編『詳説世界史研究』(山川出版、2008年)にも木村靖二・岸本美緒・小松久男編『詳説世界史研究』(山川出版、2017年)にもその記述はなかったわね。いやまぁざっと探しただけですが・・・


一応、コトバンクと世界史の窓では、1900年にイタリアがフランスに接近して秘密協定を結んでいることが紹介されています。

…イタリアもオーストリアハンガリーとの利害調整ができず,1900年12月にフランスと北アフリカの植民地に関する秘密協定を結び,協商側への接近をはかった。
(https://kotobank.jp/word/%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3%E5%AF%86%E7%B4%84-879721)

イタリアは、その帝国主義的膨張の対象をオスマン帝国領のトリポリに転換した。それを知ったフランスはイタリアをドイツから離反させる目的で、1900年に秘密協定を結びモロッコをフランスが、トリポリをイタリアが勢力圏とする分割協定を結んだ…
(http://www.y-history.net/appendix/wh0601-091.html)



わぁお。ホントウにイタリア、フランスと接近してますわね。しかし、「フランスはイタリアをドイツから離反させる目的で、1900年に秘密協定を結びモロッコをフランスが、トリポリをイタリアが勢力圏とする分割協定を結んだ」ことを出題するのは・・・


少なくとも私は授業でそこまで扱ってない。