雑録

しゅがてん!体験版の感想・レビュー

田舎町の洋菓子店再興物語。ややご都合主義のキャラゲー風味が強いが、悲哀描写もなかなか良い。
体験版は休業中の洋菓子店を再開させるまでの過程がメインであり、店の買収と戦います。
序盤の見どころは何と言っても「お店の再興を諦めかける悲哀」であり、ヒロインたちの心情吐露がすてき。
まぁ結局は、諦めて店を畳もうとする最後の夜の大盤振る舞いが大きな宣伝効果を生むという展開なのですが。
そして客が来なかったのはチラシに住所や電話番号などの情報を載せ忘れていただけというオチ。
こうして「最後の夜」を契機に注文が舞い込むようになり、お店への再興へ一歩を踏み出したのでした。
体験版終局部では、主人公くんの過去を知る女性が市長であることが明かされ新たな試練が匂わされます。

体験版概要

  • 飲食店復興モノ〜記憶喪失の流れ者はパティシエスキル保持者〜
    • 紙芝居ゲームでは飲食店を舞台とする作品はあまた存在し、お店復興モノとしては『さくらシュトラッセ』が、洋菓子店系統では『ショコラ』や『パルフェ』が思い起こされますね。本作品ならではの特徴としては炉利・百合系統の流行に強い影響を受けていることが挙げられます。それゆえ、最初はフツーのキャラゲーかとも思ったのですが、結構、シナリオの方もしっかりしています(※個人的にはもう少しケーキ作りの描写とか詳しくても良かったのではないかとも思いますが)。
    • 主人公くんの設定はパティシエスキルを保持した記憶喪失の流れ者であり、潰れかけた洋菓子店の救世主として登場します。落ち着いた感じの丁寧な常識人であり、ぎっくり腰で入院中の老店長から課せられたショートケーキの課題をこなし、その人材を認められることになります。体験版で扱われるイベントは「洋菓子店に起こっている買収問題」です。田舎町におけるその洋菓子店の工房は資源として求められているものであり、譲渡を願う諸団体がいくつも市役所に掛け合っていたのです。店長も老いており継承者もいないのに孫娘であるヒロインが拘り続けていれば周囲からは白眼視されること請け合いです。そんなおり、ついに買収の交渉人が現れます。孫娘は窮地に陥り苦し紛れに主人公くんのことを匂わせます。そんな孫娘の想いを見て、主人公くんもまた腹をくくりパティシエとなる覚悟を決めたのでした。


  • 悲哀パートにおける店長の孫娘ヒロインの心情吐露がステキ
    • 休業していた洋菓子店は再開されました。ここからしばらくは日常パートが続きますので、炉利ヒロインたちとの交流を眺めて癒されましょう。これでお店が復興してめでたしめでたし〜だったらただのキャラゲーだったでしょうが、ここからもう一ひねりあります。なんと客入りが芳しくないよ問題が発生。これではお店を再開しただけで経営が上手くいっていないことを指摘されてしまいます。そしてケーキは売れ残り客足が戻らないまま年末へ。ここでの洋菓子店の孫娘ヒロインの心情描写が破壊力抜群です。要約すると以下のような感じ。曰く「店長である祖父はもう昔から身体にガタがきていたが、自分が店を開いていてほしいと願ったために無理をさせてしまい、ぎっくり腰になってしまった。また主人公くんにも我儘を言って無理させている。買収を求めに来たヒロイン兄妹も善人で良い人物であると知った。ここまできて洋菓子店に縋りついているのは自分のエゴであり、今の時間は主人公くんがくれたボーナスタイムのようなものである」と云々。


  • 最後は少しご都合主義展開
    • 諦めかけるヒロインに対して、主人公くんができることと言ったら雪だるまを作って励ましてやることくらいでした。しかしこの雪だるまづくりにより子どもたちが集まり、次第にイベント化してきます。最終日もケーキを余らせてしまったので、子どもたちに振舞っていたら人が人を呼ぶことに。こうして新たにケーキを作り始め、とうとう材料が尽きるまで配り続けることになります。このケーキ振舞いイベントがお店のための良い宣伝となり、また今まで客足が伸びなかったのはチラシに電話番号や住所が書いてなかったためであることを知ります。そしてモブキャラのおばちゃんに励まされ店をもう少し続ける決意をします。雪だるまイベント後、お店に戻るとさぁ大変。山のような注文書にひっきりなしに鳴る電話。こうして店の新たなスタートが切られたのでした。そして最後に主人公くんの過去を知る女性が市長であることが明かされ新たな敵の出現を匂わせて体験版はお開きとなります。

  • ヒロインたちのキャラクター表現について
    • 攻略ヒロインは3人でぽんこつ素直クール:氷織、店長の孫娘:める、買収を仕掛けてきたホテルの御曹司の妹で英系カタコト日本語使いのショコラです。特に氷織はメーカー側からもメインに位置付けられていることもあってか破壊力抜群のキャラクター表現となっています。素直クールで色々なことに考えが及ぶものの実はポンコツという古来より伝わるギャップ表現がいい味出しています。お茶を淹れるスキルは一品なものの、料理下手であり、手先もぶきっちょ、ケーキのカッティングもこなせず、陰ながら劣等意識にかられるところはきゅんきゅんしますね。さらにシナリオの進行とミスリードを担当するのも氷織の役割として付与されています。体験版では主人公くんの正体は買収先ホテルが派遣を要請したパティシエではないのか?と読者の思考をミスリードに誘ってくれます。氷織が様々な葛藤の末、自分の考えを開陳しようとした矢先に、全然別の人が登場してオチがつきますがね。主人公くんの正体の伏線としては、市長の存在、妖精さん、屋根の上から遠くに見えるビルのような存在、街の既視感などが伏線として散りばめられていますが果たして。
    • そうそう氷織のキャラクター設定として甘いものが苦手な様子が紹介されるのですが、実は甘いもので酔っぱらってしまう体質であり甘いものじたいは大好きだったのです。酔っぱらった氷織がクールさを消しさり主人公くんに甘えてくるところは分かっていてもグッとくる描写です。

店長の名言について

ショートケーキの作り方を知っておるかね。全てのケーキというのは奇跡のような確率で成り立つ代物よ。ビスキュイの焼き加減、ナッペの軽さ、丁寧さ。作業それぞれは単純でも、ひとつひとつに手を抜けばたちまちただの砂糖と化す。優れたケーキを作り出すことは、それそのものが、奇跡に等しいのじゃ。卵ひとつかき混ぜる。小麦ひとさじ器に移す。そんななんでもない動作のひとつひとつが、終着点のケーキには残る。あの日持ってきたケーキは上出来じゃった。久々によい作り手に出会った。全ての動作に感じたぞ。奇跡を紡ぐ心というものを