水葬銀貨のイストリア「フラグ分岐編(夕桜&ゆるぎ√)」の感想・レビュー

水葬銀貨のイストリアは第8章で大きく分けて2つに分岐します。
小夜&玖々里の正・真ヒロイン√か、夕桜&ゆるぎのサブヒロインズ√です。
第8章において夕桜も人魚であることが判明し、玖々里と夕桜のどちらを見捨てるかの選択を行います。
ここでは夕桜&ゆるぎを選んだ展開について述べていきます。

EPISODE 08 「Which?」


  • イモウト回。優先順位のはなし
    • 茅ヶ崎夕桜は愛する兄の優先順位の中でいつも後塵を拝していました。主人公くんの優先順位はいつだって小夜であり、自分は二の次だったのです。拉致監禁事件の凄惨さの体験を共有していた夕桜はそれを甘んじて受け入れていましたが、今度はさらに自分よりも上位の存在が兄にできてしまったのです。故に、夕桜はついに物語の舞台に上がることに決めたのでした。救うのには許可はいらない、勝手に救うだけだとして、主人公くんを救済しようとしたのです。
    • 第7章の際、玖々里が「涙を流せる」ことは周知の事実となってしまいました。ゆえに久末家は玖々里を取り戻さんとやってきます。この時、主人公くんは小夜か玖々里で苦悩することになるのですが、主人公くんの優先順位はいつだって小夜であるため、体験版に続いて再び玖々里を捨て去ることになるのです。そこへ突如名乗でたのが我らが夕桜であり、なんと彼女もまた人魚であるので、玖々里ではなく自分を連れていけというのでした。
    • 夕桜はいつ「涙を流せる」ようになったのでしょうか?それは拉致監禁事件の時でした。これはもともと小夜を人魚として覚醒させるためのものだったのですが、小夜ではなく夕桜が人魚として覚醒してしまったのです。拉致監禁事件においては、小夜が心を破壊され、兄は身体を破壊されました。そして主人公くんはついに死にかけるのです。そんな時、ペットとして人格を破壊されていた夕桜は兄のために「涙を流せる」ようになり、人魚として覚醒しました。クレバーである夕桜は自己の能力をひた隠し、主人公くんの治癒を死なない程度の限度で制限してきたのでした。
    • 以上により、玖々里のために夕桜は自らを捧げるのですが、ここで主人公くんに対し、茅ヶ崎征士から無慈悲な選択肢が突きつけられます。玖々里を見捨てるのか、夕桜を見捨てるのか、どちらかを決めよと言われるのです。自らの意志で愛する女に優先順位をつけ、見捨てたという苦悩を背負わされる主人公くん。このどうにもならない序列化を迫られ、それを主人公くんを通してプレイヤー自身が選ばなければならないという意思決定が委ねられているのです。

EPISODE 09「My sister」〜夕桜・ゆるぎ√選択ver.〜


  • 心が折られ、地べたをはい回ってこそ、人生
    • 第8章の選択肢で玖々里を見捨てるか夕桜を見捨てるかによって、「夕桜・ゆるぎ」√か「玖々里・小夜」√かの分岐になります。
    • 玖々里を見捨てると小夜の借金は久末家が処理し、主人公くんは八椚家から解放され、茅ヶ崎征士は自動的に殺害されます。そして小夜自身のトラウマもアッサリ解決。小夜は主人公くんに構って欲しいがゆえに、主人公くんがいないと精神崩壊するように無意識的に演じていただけで、別に主人公くんがいなくても平気であったことが判明します。こうして小夜の隣にいる必然性もなくした主人公くんは、心が折れ地べたに這いつくばって生きることになる代わりに全ての業から解放されたのでした。
    • そんな心を埋めることになるのが小不動ゆるぎ。正ヒロインと真ヒロインを捨てた主人公くんを最後まで支え続けることになります。弱みも辛さも失敗も挫折も、そういった経験をしたからこそ、意味があるのだと受け入れてくれます。不幸を知らない人間は誰かを救うことはできない、どん底を知ったからこそ意味があるとの演説が炸裂します。こうしてゆるぎによって支えられた主人公くんは、今まで禁じていた自分が幸せになることを求めることができるようになりました。

以下ゆるぎ演説(ダイジェスト版)

先輩には、きっといろいろなことがあったのだと思います。嫌なこと、恥ずかしいこと、思い出したくないこと、辛いこと。生きることを難しくさせてしまう何かが、先輩の心を覆っていて。――それでも先輩は、生きなければいけません。生きて、幸せにならなければいけないのです……何かのためとか、犠牲があったとか、そういう後ろ向きな理由ではなく。先輩は、沢山の不幸を見てきたと思います。わたしが知っている以上に、不幸な人生だったはずです。そんな先輩は、何よりもまず、自分のために幸せにならなければいけないのです。……全てはそこから、始まるのですから。

……発奮奮起して再起に臨む。あなたは、それでも誰かを助けるヒーローを志すのでしょう!……幸福を知らない人間が、誰かを幸せに出来るとは思いません。誰かを救うことができる人というのは、幸福の在り処を知っているはずですから。同様に――不幸を知らない人間だって、誰かを救うことは出来ないのですよ。……痛みを知らない人間に、傷を負った人間の気持ちは分かりません。やさしさの温もりを知らない人間に、抱く希望などはなく。幸福を知らない人間は、幸せの掴み方が分からないのです。……幸福も不幸も全て体験した先輩なら――きっと、素敵なヒーローになれると思います。だから今は、自分の幸せを見つけてください。誰よりも先に、先輩が幸せになる必要があるのです。……小夜さんのためでもなく……犠牲になった人のためでもなく……――他ならぬ、幸せを欲する、自分自身のために。

……いつの日か、立ち上がることを信じています。今はヒーローになれなくたって、いつかきっと、立ち上がることの出来る日が来るでしょう。……幸せになって下さい。幸せに、生きて下さい。過去を改めることも大切ですが、今の自分を大切にしなければ……未来はないと思います。……もちろん、失敗を重ねて気が故に、訪れる困難もあると思います。先輩を恨み、憎む人だっていると思います……だけど、そこで折れてはいけません。罪を背負って、償うなんて後ろ向きな言葉は、いりません……――もう二度と、誰も犠牲にしない、格好良いヒーローになってやる!前向きで身勝手な覚悟こそ、今の先輩に必要なものだと思いますから!

…(英士「女の子二人を見捨てて、それでもヒーローを志すなんて、傍から見たら馬鹿馬鹿しくて愚かしいことだろうな」)はい。でも、ヒーローなんてそんなものだと思いますよ。理解を得られたくてやっているわけではありませんから!……失敗して、間違えて、恨まれて、嫌われて……それでも、先輩は生きているのですから。生きた先輩が次の求めるのは、幸せであるべきなのです…………もしまた誰かを救いたいと願った時に、先輩が不幸な表情を浮かべていたら駄目ですよ。不幸は不幸を呼ぶのですから、同じことの繰り返しになってしまいます。安心して下さい!先輩に邪魔だと言われないかぎり、いつまでもお傍にいますから!先輩が挫けそうなときは、不肖、このわたしがお助けに参りますよ!

……(英士「ねえ、小不動さん。失敗は、何度まで許されるのかな。誰かを救うことに失敗して、再び心が折れてしまっても……次もこうして、立ち上がらなければいけいないのかな」)無論、死ぬまで……ヒーローに、諦めるという選択肢はありません。命あるかぎり、失敗は失敗のままで終わらせてはいけないのです。……私たちは絶対のヒーローになれないのですから、自分なりに頑張れば良いのです。そうやって、人は強くたくましく、成長してくのでしょう。

EPISODE 10「Valentine day」


  • ケイドロをするはなし
    • コメディ。ゆるぎ演説によって立ち直った主人公くんが夕桜をとるかゆるぎを取るかで選択を行うはなし。いや、もう二人とも二グ構築しちゃえよと思うのですが、この作品では個別エンド以外は許されない模様です。そんなわけで主人公くんを巡る女の争いが勃発し、町内を舞台にケイドロ大会が行われることになります。ゆるぎが警察役、夕桜が泥棒役となって逃げるのですが、1対1のケイドロって鬼ごっこじゃね?と多くの読者が思ったことでしょう。ですが泥棒役の夕桜には主人公くんと共に逃げるという追加ルールが課せられていたのです。つまり、ゆるぎと夕桜の対決かに見えて、実質は主人公くんがどちらを選ぶかという問題だったのですね。携帯端末を使ったり協力者を雇ったりと割かしなんでも来いな対決をお楽しみください。すごくどうでもいいことですが、そういえば紙芝居ゲーでケイドロといえば『俺の彼女は人でなし』という攻略ヒロインがすべて亜人というゲームがあって、そこでケイドロしたのを思い出しました。やっぱりケイドロは多人数ゲーだよなぁとか思いつつポチポチとクリックしたのでした。で、ケイドロ大会は茶番臭もあり、最終的にプレイヤーに夕桜をとるかゆるぎを取るかの選択が与えられることになり、個別√に突入していきます。