トリノライン「紬木沙羅」シナリオの感想・レビュー

人工知能によって支配される管理社会の出現を未然に防ぐ話。
火の鳥未来編・バルドスカイシャーマンキングを混ぜ合わせたような感じ。
主人公くんの提言で人間の曖昧さやファジー性が見直され、ついに完全なAIが誕生した。
しかしそのAIは、人間を身体から解放し電子世界のユートピアを構築しようと目論む。
電子体となり仮想空間へと乗り込んだ主人公くんはAIと対峙し生命の有限性ゆえの尊さを主張する。
人間は死ぬからこそ生きているんだと。死を思え、メメントモリ!AI説得してハッピーエンド。

火の鳥未来編(人工知能による管理社会)×バルドスカイ(肉体を捨て去った電子体世界)×シャーマンキング(生命の有限性と死への存在)


  • 人工知能による管理社会は肉体を捨て去った電子体世界
    • 身も蓋もなく言えば、天才少女が主人公くんとフラグを構築するためだけに超回りくどい方法を取っただけというはなしです。紬木沙羅は幼少期にアンドロイドに育てられ学校に適応できませんでした。そんな居場所のない沙羅を救ったのが主人公くんであり、沙羅はそのおかげで孤独にならずに済んだのです。しかし主人公くんのイモウトが死んでしまうとさぁ大変。主人公くんは大切な人の喪失にショックを受けてしまいます。この時、沙羅がフツーに主人公くんを支えていれば物語は終わったのでしょう。しかし沙羅は主人公くんの傷心を癒すにはイモウトアンドロイドを作ることが必要だと思い立つのです。こうして天才少女沙羅のアンドロイド開発への挑戦が始まったのでした。
    • 沙羅が開発したアンドロイドのAIはあと少しで完成のところまでこぎつけます。しかし答えの出ないジレンマ問題を与えられるとフリーズしてしまう欠陥を持っていました。この問題を解決したのが主人公くんであり、人間は曖昧でファジーなのにAIに完璧な答えを求めるから駄目なのだと指摘します。こうして幅のある解釈ができるようになったAIがついに完成したのです。しかし完全形態のAIは人工知能による管理社会を構築しようとします。人間には様々な欠陥があり、ほっておくと欲望が肥大化し、宗教や民族の対立、貧富の格差、戦争など様々な問題が発生するというのです。これに対処するためには、人間の意識を身体から切り離して電子体として仮想空間の中で永遠の平和を享受すべきたと夢想するのです。現実世界ではベッドで横たわるだけの人間をアンドロイドたちが死なないように世話をするという世界が訪れようとしていました。



  • 生命の有限性と死への存在
    • 主人公くんはこの事態を阻止するため、電子体となって仮想空間へとダイヴし、人工知能と対峙します。そして人間の有限性と幸福を語るのです。ここらへんからシャーマンキング展開。人間には寿命があり死への存在である。だからこそ死の可能性と向き合うことによってはじめて、人間は固有な自己への存在にめざめることができるのだ云々と論じます。はいはい、ハイデガーハイデガー。で、そもそも人工知能さんは人間のことが大好きであり、人間に良かれと思って管理社会を構築しようとしていたの。よって主人公くんによって人間の幸福の在り方が提唱されると、それに対する哲学的考察を始めようとするのです。主人公くんが唱える幸福の在り方は正しいの?間違っているの?まだまだサンプルとデータが足りないわ!!と、いうことで観測者たる人工知能さんは主人公くんに人間の幸福を見せてくれ!!と要請します。相分かったと主人公くんは、沙羅との幸福な人生を人工知能さんに見せつけることで、AIによる管理社会を否定しようとするのですね。
    • 以上により主人公くんはアンドロイドについてもっと学ぶたいと意欲を示すようになり、他方で沙羅は研究室に引きこもるのではなくもっと人間との関わりを学ぶために世界へと飛び立とうします。二人はこれから別々の道を歩むけど、離れていても繋がっているんだとハッピーエンドを迎えます。