カタハネ ―An' call Belle― の感想・レビュー

流布されている歴史物語の真相を解き明かし逆賊とされた忠臣の汚名を雪ぐはなし。
物書きを目指す少女が演劇の脚本を書き上げるため舞台取材のために大陸一周の旅へ。
そこで知己を得た人々の縁故で舞台の役者を集めて新解釈で史劇を成功に導く。
その過程で歴史の真実が明らかになっていく群像劇。百合もあるよ!
シナリオ構成はAir的構造で現代編から過去編へと飛び再び現代編へと飛ぶ。

概要


  • 語られる歴史と歴史の真相
    • 本作のシナリオはいわゆる『Air』構造をしており、現代編の途中に過去編が挿入され伏線が回収された後、現代の時間軸に戻ってきます。本作では逆賊アインがホントウは忠臣であったというエピソードが回収されていきます。過去編に登場する国家は3国。海洋国家:青の国。大陸国家:赤の国。そして人形技術国家:白の国でした。青の国と赤の国から狙われるのが白の国という構図であり、三国をめぐる国家間闘争から次第に白の国のお姫様クリスティナと人工人形エファの百合ゲーとなります。最終的にアインは国家よりもクリスティナとエファの百合を尊重し亡命√を用意してあげるのですが、両者は心中してしまうのです。この作品の設定では、人工人形は様々な能力を付与された「石」を所持しており、エファは「記憶石」を持っていたのですが、アインはそれをココに託して逃がそうとします。そしてアインは兵を動かしてしまった赤の国と青の国を鎮めるために、自分が姫様を殺したという汚名を被り、それぞれの国が挙兵した名目を自らを討ち取らせるためという大義名分を与えることで戦争を防いだのでした。

  • 演劇でアインの汚名を雪ぎましょう
    • こうして過去編(クロハネ編)を見終わった後、現代編の続きとしてムキィー系女子√と百合√を眺めることになります。ムキィー系女子には辟易することも多かったです。百合女子ズは読みながらそういえば昔は『マリみて』とか読んでたし、すかぢモノでも結構百合出てきたよなぁ(√aaaとか素晴らしき日々とかサクラノ詩)とか思い返しました。本作では過去編で姫様と人工人形の百合がテーマとなっており、現代編では転生したアンジェリナとベルがその役割を引き継いでいます。それらを見終わった後に、過去編で一人助かったココが記憶を取り戻すという形で真相が判明していきます。アインは本当は忠臣やったんや!こうして新説・逆賊は本当は忠臣であった!の劇は大成功を収めるのでした。一応、ココがどのようにして記憶を蘇らせたかやエファとベルの継承とかも説明がなされるのですが、なんか整合性を合わせるためという感じが強いかもしれません。ラストのジーサンの心情吐露で背景が解説されますが、もっとジーサンの人物描写を掘り下げて欲しかったかもしれません。


  • 史劇の脚本
    • 物語の原動力となっているのは、作家を志すムキィー系女子がワナビを脱却するために演劇の脚本を書き上げ舞台を成功させることです。ムキ子は古くから伝わる史劇の改編を思いつき歴史のif物語を書くことを決意します。それは歴史上、売国奴として逆賊となった「アイン」なる人物が実は忠臣であったという歴史改編です。ムキ子は思いを寄せる歴史学専攻の学生が、実家の人工人形を調律に行くのに同行し、その際資産家の調律師から資金援助を得ることに成功します。その際にいくつかの条件を持ち掛けられ、そのうちの一つが史劇の舞台となる都市を実際に回って取材せよというものでした。こうして一行の珍道中が始まり大陸1周旅行の旅となります。この旅の途中で出会った人々を役者としてスカウトしていくという構造になっています。