逆ONE的ヒロイン存在忘却系泣きゲー。作中でもメタってますが2017年になっても泣きゲーです。
真ヒロインの虚姫は神様であり、不特定多数の万人に愛され、不特定多数に恩恵を与える存在。
そんな神様が特定の一人の人物だけ愛してしまったら?信仰心を喪失し、人々から忘却されます。
気丈に振る舞えど無性に寂しくて最後の最期にライブを行い人々の記憶に残滓を焼き付ける!!
それでも存在忘却を止めることはできなくて、虚姫は粒子となって消えていくのであった・・・
感動のエンディング!2017年になっても泣きゲーはイイネ!と思ったらエンド後に華麗に復活。
復活させずに、唯一神様を忘れなかった田井中幸さんとビターエンドで良かったんじゃ・・・
2017年になっても逆ONE的存在忘却系泣きゲーを投げてくるとは!!
- 主人公やヒロインが死ぬ(消滅する)ゲーム概説
- 皆さまは泣きゲーが流行った時代をご存知でしょうか?主人公くんがヒロインたちから忘れ去られるのがONE(1998-05-29)。それをモチーフに今度はヒロインが死ぬor存在忘却されるシナリオが流行りました。とにかくヒロインが死ぬ。ヒロインが忘却される。壮大なストーリーの末ヒロインと別離する。そんなエンドが90年代後半〜ゼロ年代に流行りまくったのですONE、KANON(1999-06-04)、AIR(2000-09-08)、月姫(2000-12-29)、それ散る(2002-06-28)、narcissu(2005-08-02)等々。
- 90年代〜ゼロ年代
- なぜそのような現象が生じたのかが当時盛んに議論されましたが、それには社会的背景にも一因があります。失われた時代はとにかく怒濤の時代だったのです。ざっくりと思いつくままに書き殴ってみましょう。91年にバブルが崩壊し、93年に冷害による米不足、95年には阪神大震災に地下鉄サリン事件、97年にはアジア通貨危機、98年からの小渕政権の金融国会では北海道拓殖銀行の経営破綻や山一證券の自主廃業が処理されます。神の国発言のIT革命森喜朗では2000年問題。そして小泉内閣(2001年4月〜2006年9月)では新自由主義経済が展開されて格差社会が進みます。2001年には世界貿易センターに飛行機突っ込みましたし(9.11)。
- このようにして、90年代〜ゼロ年代は社会不安とこれまでの既存の秩序の崩壊により、ポストモダンが叫ばれ「大きな物語の終焉」などがテーマとなっていたのです。そのため「救われない」物語を追体験し「泣く」ことによって自己の存在を認識していたのです。
- 2006年〜2012年
- 2012年〜2017年
- 本作の展開
- 「おにくる」の「虚姫√」はシナリオライターが作中で自らメタ的発言として揶揄しています通り、2017年においても「正統派泣きゲー」です。話の筋書きは以下の通り。
- 虚姫は過去の時間軸において豪族層の娘でした。村は慎ましくも穏やかな生活を営んでいたのですが、商業資本の浸透により地域共同体が伝統が緩んできました。しかし資本主義において景気変動はつきものであり、常に好況とは言えません。しかし一度上がった生活レベルを落とすのは難しく、人々の間には不穏な空気が蔓延していたのです。そんな中、虚姫の友達が口減らしによる身売りされることになります。無力、圧倒的に無力!!自分の無力感に絶望した虚姫が神に祈ると、自らの存在を代償に神となるかを問われます。こうして形而上学的存在となった虚姫は穢れを祓って村に安寧をもたらしたのでした。
- 時は流れ現代の時間軸。体験版でのお話です。不治の病の姉を抱える主人公くんが無力感を噛みしめ神に縋ると虚姫顕現。信仰心を集め神力回復までは良かったのですが、主人公くんとフラグが成立するとあら大変。もともと土地神であった虚姫は万人から愛される特性を持つ代わりに、万人を愛さねばならなかったのです。しかし主人公くんという特定の人物を愛してしまえば・・・。虚姫は自分の存在意義を喪失し消滅することになります。プレイ中はゼロ年代泣きゲーじゃあるまいし、どーせ死ぬ死ぬ詐欺で最期のライブで信仰心回復してご都合主義ハッピーエンドだろー?と軽い気持ちでシナリオを読んでいたのですが・・・。決して、そんなことは、なかった・・・。
- 最後のライブに参加したのはたったの4人。しかも虚姫を覚えているのは主人公くん及び虚姫を祀る巫女の田井中さんだけ!虚姫が最期のライブで自分の生きた証を少しでも人々の心に焼き付ようと足掻き、感情を剥き出しにするところは思わず真剣に読んでしまいました。しかもこのライブでも虚姫が復活するという安易な展開にはなりません。虚姫は消滅していきます。ラストの月の寓話が心に染み渡ります。月は自ら輝くのではなく、他者によって輝くのだと云々のシーンはグッときますね。そしてそんな月に向けて粒子となった虚姫は散っていくのでした。〜Fin〜感動の泣きゲーエンドです。
- まぁエンド後のエピローグであっさり復活した様子を思わせる描写が挿入され、ちゃぶ台返しとなるのですが。個人的には最後まで虚姫を覚えていた(現在でも覚えている)田井中さんとの懐古的ビターエンドが良かったかもしれません。