9-nine-そらいろそらうたそらのおと(天√)の感想・レビュー

お兄ちゃん大好き妹が、存在忘却されそうになり、喪失危機を契機にフラグ構築する話。
2018年にもなって逆ONE展開が見られますし、さらに異能バトルはバビロンゲートですよ!!
フラグ構築後のヒロインの役割は、主人公くんが抱く罪の意識を無条件承認により解放する事。
構成としてはまとまっており、前回は投げっぱでしたが、今回はきちんと収束されました。
都リベンジがあるなら、主人公の異能を「並行世界の俯瞰的観測」という設定にしてグランド√で都エンドかな?

和泉つばす先生の原画ゲーで可愛い天ちゃんを愛でるキャラゲー


  • 存在忘却という逆ONE展開
    • シナリオの主題として用いられている手法は存在忘却です。存在忘却とは、キャラクターが周囲の人々から認識されないようになっていき、とうとうフラグ構築対象者からも忘れられてしまうというシナリオ構成パターンです。メメントモリ、死を想え、人間は死への存在なのだ実存主義ハイデカー。ホスピスものにも通じるのですが、自分がこの世から消え失せてしまうという意識を自覚することによって人間の実存を意識できるようになるわけですね。具体的事例としては、ONEやそれちる、最近ではサノバウィッチでも使われていました。
    • この『9-nine-』シリーズは学園異能バトルですが、天ちゃんは兄を助けるために相手に存在忘却の異能をかけて危機を凌ぎます。しかしその反動として、天ちゃんもまた周囲に存在を徐々に忘れられていくことになります。忘れ去られようとする天ちゃんを如何にして主人公くんが支えるかということですね。さらに天ちゃんの異能の暴走は止まらず、主人公くんにもまた存在忘却は飛び火していきます。「死を意識する」という喪失危機の中で、天ちゃんは今まで秘めていた恋心を伝えます。お兄ちゃん大好き妹や最初から好感度マックス幼馴染モノでは、最初から仲がいい分、どのように関係性変化を描くかがポイントになります。天ちゃん√では上手く、この存在忘却からの喪失危機をフラグ構築に利用しているのです。天ちゃんが自分のブラコンっぷりを暴露して抱いてとおねだりするところはグッときますね。このような天ちゃんに対し、主人公くんは、喪失危機により告白するのではなく、前向きになって告白しろと激励することによって、イモウトの生きる意志を回復させることに成功します。


  • 罪の意識と無条件承認
    • 妹の存在忘却は異能リセット特効薬によって回復し、異能バトルもヒロインズの総出演で勝利します。しかし主人公くんは相手を殺してしまったという罪の意識に悩まされることになるのです。そんな主人公くんを救うのが、我らが天ちゃんというわけさ。天ちゃんは、たとえ主人公くんがどのようになろうとも、絶対に裏切ることなく肯定し続けてあげるよ!!という無条件承認を与えるのです。イモウトによって赦された主人公くんは罪の意識から解放されます。異能バトルも第一部完と区切りの良い所まで終わり、次回への伏線も張られました。
    • 今回、イモウトの天ちゃんの可愛さが炸裂します。大好きなお兄ちゃんにかまってかまってと甘えまくってくるところは素晴らしいですね!大好きお兄ちゃんアルバム、スマホで寝顔コレクション、お兄ちゃんおなぬーと天ちゃんのお兄ちゃんのこと好き好き大好き好き好きっぷりは絶頂を迎えます。天ちゃんの可愛さを消費するだけのキャラゲーとしても充分魅力を引き出せていたと思います。