雑録

夜巡る、ボクらの迷子教室 共通√の感想・レビュー

面倒見がよく粘り強く生徒を指導しつつも自分をクズだと自己卑下する教員は結局は自己の信条に従っているに過ぎない。
と、いうことでかにしのみやび√を彷彿とさせるような展開です。生徒個人を見ているわけじゃないんだよと。
トラウマを抱えた社会不適合ヒロインがPTSD発動させる場面で視点交換により闇堕ちっぷりを味わえるのステキ。
共通√は天体観測を行った後、ついに過労で倒れてしまった先生が看病に集まった生徒に熱弁を振るう所まで。
その後、好感度に応じて個別へと突入する。全員の好感度を上げていった場合、小清水√に入る。

雑感


  • 結局は自己の信条に基づくことが最優先であり、生徒個人を見ているわけではないという話
    • かにしのみやび√主人公くんとの類似性
      • みなさんはかにしのみやび√をプレイしたことがあるでしょうか。かにしの主人公くんは、みやびが家族の関心を得ようと必死に努力するが空回ってしまう姿を見て、それをサポートしていくことになります。最初は主人公くんのことを受け入れられないみやびでしたが、徐々に信頼感関係を構築していきます。そして家族のためにと頑張るみやびが実は家族から見捨てられており全く期待されていないことを知ってしまい精神崩壊した時に、かにしの主人公くんはそれを支えるのです。こうして好感度がマックスとなるのですが、こうなると今度は主人公くんが逆にみやびと一定の距離を取ろうとしてしまうのです。それには理由があり、かにしの主人公くんもまた実の両親に捨てられていたからだったのです。かにしの主人公くんは実の両親に捨てられた後、養父母に引き取られます。当初は反発したものの、粘り強く愛してくれた養父母に心を開き、このことを契機に「誰も見捨てない」教員になったのでした。つまりは困っている生徒なら誰でも助けるのであり、それがたまたまみやびにしか過ぎなかったのです。エロゲヒロインにおける被攻略性という構造を逆に利用している巧みな表現技法ですね。この後、かにしのみやび√では、実の両親に捨てられたため人を愛せない主人公くんをみやびとリーダさんが攻略していくという流れになります。
    • 本作の場合の主人公くんの信条は亡き母親という教員の理想像による呪縛。
      • 本作の場合、主人公くんは高邁な理想を抱いているわけですが、それが亡き母なわけです。主人公くんは幼少の頃から教員としての母親を身近で垣間見てきました。生徒をまるで我が子のように受け入れる母親を見て、主人公くんは物寂しさを感じながらも、それに感化されていったのです。ですが主人公くんはあまりにも大きすぎる母親の幻影に圧迫され、まさに理想に溺れて溺死することになります。名のあるエスカレータ式私立における教員生活に挫折した主人公くんは定時制高校に流れ着き、カネのためにと自己卑下して自分を偽りながらも、生徒に親身になって接していきます。カネのためとカムフラージュしていますが主人公くんの信条はママンにあり、ママンのような良き教員になるがため、生徒と接しようとするのです。しかしここで考えてほしいのは、結局のところ本作の主人公くんもまたかにしの主人公くんと同様に、自己の信条に基づいて教育活動を行っているだけで、担当する生徒の必然性は全くないのです。たまたま流れ着いた先に、自分と同様な社会不適合ヒロインがいただけの話。こうして主人公くんは自己の信条を満たすためだけの道具として生徒に親身になる行為をなすのです。


  • トラウマを植え付けた世間と戦え!
    • 本作品は主人公くんを含めて全員が脛に疵持つワケアリたちです。ヒロインたちがトラウマ発動しているところはかなりの見どころとなっています。幼女ヒロインの眼の光が消えたり、和菓子屋娘が虫を見て発狂しおしっこをもらしたりぬいぐるみを殺傷したり、青髪メインヒロインが承認欲求のカタマリで褒めてくれ自分を見つけてくれと叫んだりと破壊力バツグン。特に視点交換ザッピングでヒロインの心情描写の掘り下げが行われる箇所では一種の狂気さが感じられます。そんなヒロインたちと接していくうちに、主人公くんもまた自己を肯定されていくのですが、カネのために教育しているに過ぎないことに良心の呵責を覚えていきます。そしてそれはカネでカモフラージュされているだけであり、さらにたちが悪いことに、主人公くんは自己都合、すなわち理想像である母親の幻影により動かされているに過ぎないのです。そんな矛盾を孕んだ主人公くんはついに過労で倒れてしまいます。そんな主人公くんの下へ駆けつける教え子ヒロインたち。主人公くんは看病と称した鍋パーティーとなった場面で、自己の後ろめたさを隠しながら、ホワイトグラデュエーションの演説を一発ぶつことになります。卒業したら結局は自分たちを排斥した世間に出ていかなければなりません。その時、この糞見たいな世間ともう少し良く折り合いをつけられるよう頑張ろうと。学校という一種の特殊な空間を利用して、卒業目指して頑張る中で、トラウマを克服しようと唱えるのでした。こうしてヒロインが持つ問題を解決し、個別攻略する展開が整えられたのでした。