雑録

2017年発売ノベルゲームまとめ

  • はじめに
    • 皆さん、こんにちは。市場規模の縮小が叫ばれるノベルゲーム業界ですが、2017年にはどのような作品が発売されたのでしょうか?皆さんと一緒に振り返っていければ幸いです。名作でもスルーしてしまったものや積んでるものも多々あるのであしからず。
    • 雑感としては市場縮小への対応として、分割商法や短編、あのね商法が多くなったように感じられました。分割商法だけでもグリザイア、9-nine-、つり乙2FD、あおかなEXと結構目立ちます。
  • 2017年超個人的面白かった作品
    • 個人的に面白いと感じた作品については、鬱ゲー(鬱屈し煩悶しながらも社会で生きていかざるをえない系)の作品が好きなので、『水葬銀貨』と『夜巡る』が良かったと思います。特に『夜巡る』は教員精神崩壊シリーズにまた1ページ名作が刻まれたと思います。りこ√は人生に疲れた人たちにおススメ。
    • これまでの挫折系教員シリーズ
      • すばひび世襲系教員で生真面目で熱心ではあるが深い考えもなく教員となってしまったがため、権力構造の再生産に疑問を抱く。
      • 天色…担任クラスでイジメが発生し解決に向けて奔走するものの生徒が転校する結果となり精神崩壊して退職。
      • みあよぞ…手のかかる児童ばかり担当させられ、問題を起こされる度に嘔吐し、さらにパワハラで業務を押し付けられ疲弊しきる。
  • 地雷
    • そして最後は地雷作品についても触れないわけにはいかないでしょう。折角なかひろをライターに起用しながら残念なシナリオになってしまったのが『星恋*ティンクル』。そしてハイクオソフト10周年記念と宣伝され、サイドエピソードや本編前夜の「泥亀の月」ではとても面白かったにも関わらず、本編のシナリオがブン投げられてしまった『面影レイルバック』。この2本が2017年地雷大賞だと思います。
    • 『野良猫ハート2』はシナリオは面白いのですが、製品版を買ってもインストロールエラーになるし、修正パッチあてないと全テキスト読めなかったりします。

目次

片岡とも他『ラムネ2』 (ねこねこソフト) (2017-01-27)

片岡とも先生の御家芸「現実世界に適応できない系少女」はやはり破壊力抜群。「現実の世界はどうしてこんなにも辛く厳しいのだろう」と痛感している人たち程、ナナミの姿を見て涙に打ち震えるのではないでしょうか。作風としてはナルキ系よりもすみれ系作品群に近いです。現実世界においてフツーに生きるだけなのに、それがとても困難で辛い。世間一般におけるフツーは私にとっては苦痛なのです。そんなナナミが主人公くんと共に過ごすことで主体的な意志を恢復し、自分で主人公くんを掴み取ろうとする姿は分かっていても一種のカタルシスを感じてしまいます。社会で苦労しているオッサン向け。

 


なかひろ『星恋*ティンクル』 (きゃべつそふと) (2017-01-27)

2017年地雷作品。ライターのなかひろ先生は聖域シリーズの分割商法が巻数を重ねるたびに内容が劣化していったため、作品の質が危惧されていましたが、ここでついに地雷を生み出してしまったのです。粗製乱造された安易な展開に、短い個別√。さらには突如、超展開となり、宇宙から地球にやってきた開拓民とか言い出されるのでプレイヤーは置いてけぼりになることこのうえありません。これやるんだったらもう少し描きようがあったのではないでしょうか。なかひろ先生は『こいとれ』や『星空のメモリア』あたりがピークだったかもしれない。

 

 

保住圭 , なかひろ『アストラエアの白き永遠 Finale -白き星の夢-』 (FAVORITE) (2017-01-27)

白羽幸お姉ちゃんゲーです。火星の雪氷生物と地球上の人類の融和を図るという壮大な設定に加え、異能バトルに北欧神話も踏まえながら、複雑な家族関係を描き出します。『星空のメモリア』における夢√を彷彿とさせる場面が多く、焼き直しとも思えなくもありません。なかひろさんの作品はなぜこうも異母姉弟や異父姉弟が多いのでしょうか。最近、なかひろ先生はやたらと異能バトルとかを設定に盛り込んできますが、フツーに人間関係の機微とかの描写の方が面白く感じます。

 

 

 

桐月『月影のシミュラクル -解放の羽-』 (あっぷりけ) (2017-01-27)

短編。伝奇ゲー。蜘蛛神さま伝承☆人形屋敷殺人事件。あっぷりけ御家芸のフローチャートを駆使して、伝承の謎を解き明かしていく。田舎の旧家の封建的なしがらみが良く描けていて面白いし、メインヒロインもクーデレ可愛い。しかしよく指摘されることではありますが、メインヒロイン以外が物語の謎を解き明かすための、パーツとしての役割になってしまっていることも挙げられます。最初からメインヒロインの魅力が強すぎるのかもしれない。日本の民間伝承というか自然崇拝的な人間と神との交わりというのは結構好きな展開です。

 


クロ『神様のゲーム −監禁された6人の男女−』 (XUSE) (2017-01-27)

閉鎖空間極限状況モノ。神様によって閉じ込められた密室で殺し合いをするという内容。神様によって生存ポイントが設定され生殖行為の内容によってポイントを増加できるいう設定です。仲良くハーレムするという展開にはならず、初期メンバーは男性1人に女性5人という状況で出せる精液に限界があるので、様々な駆け引きのもとで殺し合いに発展してしまうのです。生き残りたいという人間の本性から生じる生存本能の汚さを視聴者にぶつけています。最後はビターエンド風味で終わるのですが、主人公くんの弟が悪魔のゲームに参加すればヒロイン全員蘇生できるよ!という展開になり、続きは次回作を買ってね!というオチになります。

 


双葉亮一 , 夜村卓『人気声優のつくりかた』 (MintCUBE) (2017-01-27)

お仕事もの。声優モノのアニメや漫画が流行ったのでノベルゲームでもやろうぜ!という内容。折角だからエロゲ声優についてもクローズアップしてくれれば良いと思ったのですが攻略対象は全員一般声優ヒロインです。人気声優、駆け出し声優、初デビュー声優の3人を通して、声優業界事情をネタにしながら、フラグ構築が行われていきます。専門性を描いたお仕事モノは大好きなのですが、途中から声優に関するはなしはどっかへ行ってしまい、ヒロイン個人に帰結されてしまうのが、残念なところ。一番の見どころはやはりメインヒロインの駆け出し声優。勤勉で努力家であるためデビューには成功したものの、中々お仕事が入らずオーディションにも通らず苦労の日々が描かれます。現状を変えるにはブレイクスルーが必要だ!ということで様々な修行をする特訓シナリオは燃えるものがありますね。

 

『Dear My Abyss』(ベリアル) (2017-02-02)

同人ゲー。クトゥルフ神話モノな百合ゲー。クトゥルフニャル子さん以外の知識がないもので良く分かりませんでした。それでも古代メソポタミア聖娼のはなしと孤独者の箱庭のエピソードはグッときました。特に孤独者の箱庭は破壊力バツグン。他者との人間関係の構築が下手くそであり、それでも現代社会では社会参加しなければならず。そのような中で勝手に自己の中で他人を妬みつらむようになり、自滅して、社会関係の中で生きることに疲れてしまう、そんな少女の鬱屈さが素晴らしい。そして人間関係に疲れた人々が癒される孤独者の箱庭の中で一生を遂げようとする世捨て人になりかけるのです。これを読んだとき、本当に世捨て人になりたいなと思ったのでした。魂の安寧が欲しい。

 


さかき傘『しゅがてん! -sugarfull tempering-』 (Recette) (2017-02-24)

ごちうさの亜種。和みゲー。2017年お菓子系3部作(しゅがてん、恋愛ルセット、家まろ)の初発。洋菓子職人の祖父が倒れてしまい、孫娘とその友達が店を経営しようとしても上手くいきません。助けて!といったところにお菓子スキル持ちの主人公くんが颯爽と現れます。そこへ店を買収しようとするライバルたちも現れ、さまざまな困難に立ち向かっていく・・・というのが筋書きなのですが、和みゲーなので深刻なテーマとかはありません。そして主人公くんはサンタクロースだったというわけで、あっさり諸問題を解決していくのでした。余計なストレスもなくキャラもほんわかしているのでまったりとプレイしたい時におススメです。

 


ルクル『水葬銀貨のイストリア』 (ウグイスカグラ) (2017-03-24)

ルクルさんといえば「鬱屈した主人公くんと、さらにそれ以上に捻じ曲がってしまった面倒くさいヒロインズの人間関係を描く」ことで有名ななステキなライターさんです。本作水葬銀貨も過去に凄惨なトラウマを持つ主人公くんが、その過去の責任を果たそうと自己に課しているため、すさまじく面倒になっています。そんな人物描写に加えて「人魚伝説」を下敷きにした賭博系カジノを舞台に複雑な人間関係の背景が解き明かされていきます。現況は主人公くんの父親及び主人公くんの飼い主のパトロン。前者の主人公くんの父親は狂気の人物であり、その異常性とそれに振り回される主人公くんたちが見所。そして後者の黒幕のパトロンは、長寿である人魚が自分の寂しさを癒したいため主人公くんにすごく遠回りなちょっかいを出すという歪んだ好意が楽しめます。

 


和泉万夜 , 保住圭 , 姫ノ木あく , 深山ユーキ『はるるみなもに!』 (Clochette) (2017-03-24)

お気楽なキャラゲー。しんたろー原画企画で『かみぱに』『あまつみそらに』の系譜を引く神様ゲーです。原画ゲーなのでキャラゲーであり、特にシナリオでどうこうということはありません。へっぽこな神様たちを神主見習の主人公くんが支えていくという展開です。神主なので、主人公くんが純潔を尊んでおりへんなトラウマ意識をもっていることからフラグが成立せず!という印象が強いです。あと相変わらずクロシェットの作品は平気で明るい近親相姦します。Let's背徳の「は」の字もありません。そして肝心の原画に関しても、これは人によるのでしょうが、個人的には初回作『かみぱに』が一番キャラ造詣やイベントCGが好きだったりします。

 


御厨みくり , 8 , 鋏鷺 , 花見田ひかる『トリノライン』 (minori) (2017-03-31)

人工知能ゲー。体験版がクライマックスだぜ!!で有名なminori作品。確かに体験版までは非常に面白いです。御家芸である「ヘタレ系」主人公くんの精神的成長が見所か?幼少の頃に亡くしてしまったイモウトの幻影に囚われている主人公くんをどのように回復させるかがテーマ。ここでメインヒロインが主人公くんに寄り添えばゲーム終了だったのですが、天才科学者であるメインヒロインは、死んでしまったイモウトの思考パターンAIを搭載したロボットを作ったわ!とか言い出します。途中まで人工知能との恋愛は可能なのか?というテーマを丁寧に描いていたのですが、途中からAIによる管理社会へとテーマが移行。ロボットが現実世界の人間を管理し、人間は電脳空間で生活を送るという話が飛び出し、シャーマンキング火の鳥バルドスカイな方向へぶっ飛んでいきます。

 


藤崎竜太『グリザイア:ファントムトリガー 01』・『グリザイア:ファントムトリガー 02』(FrontWing) (2017-04-28)

グリザイアの果実3部作が流行ったので、続編として作成されたのであろう軍人ヒロインシリーズ。と、いってもグリザイアの果実3部作は戦うヒロインも魅力的でしたが、超人である風見雄二さんが強烈な主人公くんっぷりをみせていたのでそこが魅力的でありました。しかしファントムシリーズはスポットライトがあたるのが主人公くんではなくヒロインたちなので、雄二さんのようなシナリオを期待すると残念な結果に終わります。相変わらずの説教ゲー風味がひかり、局所局所では面白いのですが、全体として見てみるとヒロインたちの軍事活劇の羅列という印象が強いです。そして分割商法がビミョー。どうみても01は体験版の範疇でしょ?これを作品として売ってしまうという商法はどうなのだろうかと思わなくもありません。

 

 


かずきふみ『9-nine- ここのつここのかここのいろ』 (ぱれっと) (2017-04-28)

絵は可愛い。とても可愛い。ループ系中2学園異能バトル。これもまた分割商法で失敗してるよなぁと思ってしまう作品です。1作品の中で区切りがつけられておらず、なんともいえない中途半端な状況でブン投げられて話が終わる感じが否めません。シナリオの内容としては、企業城下町のお嬢様が地元愛のために、異能を駆使して治安活動を行うというもの。メインヒロインの都編では石化の異能を持つ犯人を追跡することが目的となるのですが、結局真相が判明せず、石化能力者は自己を石化させて幕引きとなります。せめて終わるにしても石化問題はきちんと解決して欲しかったと思います。これが分割ではなくフルであれば次章へ持ち越しでもいいでしょうが、分割だとすると次の作品は違う攻略ヒロインとなってしまい折角稼いだ都の好感度と構築したフラグはどうなってしまうの!?というのが問題。ハーレムものなら次々にヒロインが出てきても大丈夫でしょうが、なんかそういうような作風には感じられません。と、すると都との情事はこれで終了であり何とも言えない幕引きとなったのでした。

 


緒乃ワサビ『ニュートンと林檎の樹』 (Laplacian) (2017-05-26)

タイムリープ系偉人女体化歴史改編モノ。ニュートンは少女だった説。歴史系倉庫というwebサイトでニュートンの漫画を読むと史実のニュートンやりたい放題だな!!っ感じになりますが、史実ほどぶっ飛んだ性格でありません。偉大なる科学者を祖父に持つ主人公くんは、幼少の頃においては科学に親しむ理系大好き少年でした。しかしながら挫折し、今は科学とは遠ざかってしまっていたのです。科学者として大成する幼馴染を横目に音楽に逃避する毎日。そんな主人公くんが幼馴染と共にタイムマシンでタイムリープしてしまい17世紀のイギリスへ飛ぶことになります。その際、主人公くんたちはニュートン万有引力の法則を思いついたかという伝説の林檎の樹を燃やしてしまうので。すると歴史は変わってしまい、現世は捻じ曲がってしまったのです。そんな歴史を修正するため、主人公くんたちはニュートン万有引力の法則を思いついてもらうために努力をしていきます。ニュートンって万有引力だけじゃないから、そちらの方向のネタでアプローチすればもっと面白いものになったかもしれない。ニュートン√では歴史を修正し涙の別れを経て現世に戻った主人公くんが科学の楽しさに目覚めてビターエンドで終わります。しかし折角感動的に終わったかと思いきや、ご都合主義ハッピーエンドが最後に提示されて「なんともはや」的にオチとなるのでした。

 


東ノ助『月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!』 (Navel) (2017-05-26)

つり乙商法がついに分割商法へ。つり乙2の後日譚といいながら、一番面白いのは付属で入ってる「つり乙ゼロ衣遠お兄様√」。むしろこっちがメインといっても過言ではありません。服飾・芸術業界を軽視する実業家の大蔵家において、衣遠お兄様は実績を示さねばならない危機に陥ります。衣遠お兄様の相手となるのは親友で天才のジャン。天才という一個の破壊兵器に対して、知恵と努力と工夫で立ち向かわねばなりません。ここでは衣遠お兄様とともにつり乙2のラスボスであるラフォーレの人物像の掘り下げも行われ、天才に凡人が勝つための技術体系が説かれます。ラフォーレは何だかんだ言って衣遠お兄様の服飾作成に付き合ってくれるところが友情パワー。そして衣遠お兄様がジャンに勝利するための装置となるのが、ヒロインのアルタ。人を食ったような性格ながら、衣遠お兄様の鋼鉄の意志に惹かれ、衣遠お兄様のためなら全てを尽くしても構わないと自己を捧げる姿がおススメです。このアルタの滅私奉公により、服飾だけでなくそれを着ているモデルを含めての作品を完成させます。この表現技法が受け衣遠お兄様はジャンに勝てたというわけです。さらにルナ様付きのメイドである八千代が如何にしてルナ様付きのメイドとなったのかも語られます。やっぱ大蔵家シナリオが一番面白いや。

 


桜庭丸男『ChronoBox -クロノボックス-』 (NO_BRAND) (2017-05-26)

二重人格イジメ報復モノ。物語の三分の二は茶番劇ですが作品の構造上仕方がありません。終局部分は面白くなります。主人公くんのモトカノがイジメを受けた挙句、それがエスカレートして殺害されてしまいます。さらに殺害だけで終わらず遺体を弄んだ挙句に、脳みそをカニバリズムするという所まで行ってしまいます。エログロですね。主人公くんはこれらのイジメ集団に報復を決意します。その方法とはイジメを行ったヒロインたちに仮想世界で同じ目に合わせるというものです。そして現実世界で自分たちがおこなった残虐性を噛みしめさせるのでした。物語の最初の3分の2は、全て仮想世界の中におけるシミュレーションという設定なので、フラグ構築もシナリオ内容も全て茶番というわけなのです。そして最後の方は面白くはあるのですが、エログロの狂気を借りた面白さなので、ギミック・ネタ晴らし的な面白さであり、シナリオそのものの面白さではありません。

 


若瀬諒 , 風間ぼなんざ , 西ノ宮勇希 , ギハラ『あなたに恋する恋愛ルセット』 (UNiSONSHIFT) (2017-05-26)

2017年お菓子3部作(しゅがてん、恋愛ルセット、家まろ)のなかで一番真摯にお菓子作りに取り組んでいます。特にお菓子の一つ一つにテーマ性が込められていて、お菓子作りを通して二人の絆が深まり、フラグ構築をしていくという展開が非常に巧みに描かれています。お店経営ではなく、綜合的な学習の選択カリキュラムにしたことで店の経営云々を除いて「お菓子作り」に専念できたのが勝因といえるのではないでしょうか。こういう作品だとお菓子そのものが二の次三の次にされてしまいがちですが、お菓子を大切に描いているところが好感度高いです。キャラもまったりしていてほんわけ系であり、やっていて和めます。癒されます。人生に疲れた人たちにおススメです。

 


かづや『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1』 (sprite) (2017-06-30)

本編では元気っ子かと思いきや、とてつもなく面倒くさい系ヒロインだった真白。引っ込み思案で人見知りであり、その反動で1回懐くと依存気味になるまですり寄ってくるわけです。本編初期においては、真白の依存の対象がみさきちだったというわけですね。しかしフライングサーカスを通して真白は精神的成長を遂げ、みさきちへの依存を克服するのです。しかし今度は主人公くんに懐くことになりました。真白は主人公くんに対して依存するだけでなく、尽くしてあげたいと思うようになり、御洒落や料理を学んでいきます。これまで真白は邪神ちゃんというぬいぐるみにイマジナリーフレンドを付与し、愚痴を言うことで自我の崩壊を防いできました。そんな真白が、邪神ちゃんに今まで悪役ばかりさせてごめんねという所が、ファンディスク最大の見せ場となっています。こうして真白は不器用ながらも一生懸命頑張っていくのですが、その頑張ることを諦めない姿勢が主人公くんの心を打ちます。主人公くんは幼少期になまじ才能があったばかりに自信が打ち砕かれた際に立ち上がれなくなってしまっていました。しかし真白の挫折しても何度も何度も立ち上がる姿に励まされ、幼少期のトラウマを払底できたのでした。とにかく真白の可愛さが充分に表現されたファンディスクといえると思います。

 


 

範乃秋晴『景の海のアペイリア』 (シルキーズプラス) (2017-07-28)

人工知能アぺイリアを中心とする空想科学近未来SF。AIやシンギュラリティ、機械知性の法則など今はやりの第四次産業革命に関する知識を下敷きにしながら、VRMMOを作り出し、そこでのイベントを楽しむことになります。しかしただVRMMOをするのではなく世界の陰謀に巻き込まれていくことになります。記憶リセット&周回を繰り返しながら世界の観測を欺き、真相に辿り着くという展開は結構熱くなります。しかし主人公くんたちは実はVRMMOのゲーム内のキャラクターであるAIに過ぎないことが判明します。そんなキャラクターに過ぎない主人公くんがついに現実世界にまで顕現するのですが、ここから面白くなるぞ!というところでタイムリミット。ゲーム内のAIVS現実世界の観測者という構図にはなりません。トートツにVRMMOの世界に戻り、ハッピーハーレムエンドとなります。多くのプレイヤーはおいてけぼりになったになったことでしょう。難解な世界設定を解き明かしながら途中まですごく面白かったのに、終局が雑になってしまい残念。画竜点睛を欠く的な感じ。

 


藤崎竜太『グリザイア:ファントムトリガー 03』(FrontWing) (2017-07-28)

狙撃手ヒロイン軍事潜伏物語。主人公くんまったくイベントで活躍しないし、ヒロインとの絡みもありません。ただフィリピンでのジャングル戦を楽しめれば良いと思うよ?狙撃手ヒロインは同じく軍人の両親から軍事教練を受けていました。メキメキと腕を上げる狙撃手ヒロインでしたが、その一方で父親が軍規に反してジャングルに籠ってしまいます。そんな父親を捕縛したのが狙撃手ヒロインであり親を凌駕した瞬間でした。これで父親殺しとかだったら業が深くなると思いましたが、フツーに父親生きてます。個人的には狙撃手とロシアン忍者ヒロインの百合的な絡みの場面が好きで、ダウナー系のロシアン忍者が人生はクソゲーと述懐するシーンがおススメです。主人公くんはとても強いらしいのですが、如何せんイベントに絡まないので空気感が強く、もう百合ゲーで良いのでは?って感じでした。

 


たとむ , Keikei『面影レイルバック』 (ハイクオソフト) (2017-09-29)

2017年の最大級の地雷。webサイトには興味が惹かれるサイドエピソードがちりばめられ、無料でプレイできる本編前夜の「泥亀の月」までは非常に面白かったのですが、本編でこけた。共通√まではそれなりに読めるのですが、個別√の出来が酷い。えー、これで終わりですか!!と唖然とすることこの上ありません。メインヒロインにおいては財閥一族の権力闘争をあれだけ匂わせておいてあっけない幕切れ。地元サイドもあれだけ開発サイドと対立していたのにも関わらず、あっさりと終結する。主人公くんの活躍も殆どなく空気感が漂います。おそらく私含めて期待して買ったプレイヤーは、泥マサの行方やコマと呼ばれていた主人公くんがどのように成長したかのエピソードを期待していたのではないでしょうか。それらを書いてくれればよかったのに・・・。オープニングはとても良かったです。

 


nanka , 蔵王『鬼がくる。〜姉がひん死でピンチです〜』 (えにしそふと) (2017-09-29)


ヒロイン全員べた塗り黒髪!不死の病に苦しむ弟大好きなお姉ちゃんを救うために神様を顕現させます。姉の病は九死に一生を得たのですが、完全には治癒できなかったため、神様の力を強めるために信仰心アップを図ることになります。体験版では認知度を上げるために体育館ライブとかをやったりアイドル路線を目指すのですが、それは体験版だけで終わり。主人公くんの主体性の無さ・積極性の無さにより姉が死ぬ死ぬゲーなのですが、ゼロ年代初頭の泣きゲーを揶揄しながら、死にかけている姉がいつまでたっても自分を攻略してくれない弟に一発演説をかまし、自分が弟を攻略してやるぜと叫ぶシーンが名場面となっています。神様√では本当に泣きゲー路線に入って消滅エンドとなるのですが、エンドロール後にあっさり復活。これもまた現代のトレンドを意識したものでしょうか。

 


片岡とも他『ルリのかさね 〜いもうと物語り〜』 (ねこねこソフト) (2017-10-27)

片岡とも先生の御家芸ヒロイン殺しが発動します。人生を投げて斜めに見ている鬱屈ヒロインが自分がなぜ生きているのかを自問自答しながら死んでいく姿は泣きゲーの様式美といえます。片岡とも先生がいつも同人の短編『ナルキッソス』でやっている主題ですね。テーマは死生観でそれを表現するためにどのような物語にするかが問われているわけです。片岡とも先生とその他のライターで著しく作風が違っているのもまぁねこねこソフトだから・・・で済まされてしまいそう。しかしルリ鬱√であれだけ神様は鎮めるものでり、現世利益を叶えてもらえる存在ではないと強調しながら、酒屋の娘√では参拝のお賽銭がフラグ構築の重要な手段となっており、違和感が半端ないです。

 


はと(十鳩)『ノラと皇女と野良猫ハート2』 (HARUKAZE)(2017-10-27)

新キャラのアイリスに加え、のらとと1でサブヒロインであったノブチナ・ルーシア・ユウラシアが攻略ヒロインとして昇格しています。主に「家族」がテーマとなっていますが、さらに細かく見るとアイリス√では歴史哲学の話を、昇格ヒロインたちでは家族のコンプレックスを扱っています。作品が重くならないようバカゲーギャグーのノリでコーティングされエンターテイメントとして消費しても何ら問題はないのですが、扱っているテーマ性は重くなかなか考えさせられます。まぁ思索を深めようとした瞬間におふざけおちゃらけバカゲームードになるのですがね!!!そしてそれぞれの攻略ヒロインがぶっ飛んでおり、比較的まともなのが「わざと」キャラ崩壊を演じている極道のノブチナというラインナップ。アイリス√ではノブチナが主人公くんに向かって「お前すごいのと付き合ってるな」と述べるのですが、どの攻略ヒロインにも当てはまりすぎ!!というメタ的ジョークが挿入されています。そして前作で攻略ヒロインだった人達のExtraストーリーですが、どれも短くオマケ的な夜伽のシーンが各キャラ一つずつ用意されているだけ。特に残念だったのは、シャチ√。天界編のリベンジをやってくれるのだと思っていたら、シャチExtra Story用に新キャラまで出てきたのに、なんかブン投げられた感じで終わってしまいました・・・。シャチ√天界編、作ってください・・・。本当にお願いします。

 


 

シャア専用◎ , porori(ぽろり、幌井学司) , 画用紙 , 御導はるか『夜巡る、ボクらの迷子教室』 (SAMOYED SMILE) (2017-11-24)

2017年個人的名作劇場。ライターporori先生は社会不適合者の悲哀を描き出すことにとても長けていますが、本作でもいかんなく発揮されています。少女救済の原理と言ってしまえばそれまでですが、挫折した主人公くんが同じように社会から弾き出されたヒロインたちを救うことで人間性を肯定されて救われるというパターンは大好物です。以下は個人的な感想なのですが主人公くんの境遇がとても自分に似ていて俺ゲーか!!と叫んでしまいそうです。『山月記』読んだとき李徴は俺か!!と叫んだのと同じです。そん時はクラスメイトに「誰が読んでも自分が李徴のように感じられるんだよ。それが小説の普遍性だ」と返答されましたが。自分の価値観とは異なる父親との対立、教員であった母親から注がれなかった愛情、それを克服するために母親を理想の教員像として教員になった世襲性、頑張って就職した名門私立が腐敗していて絶望とか、学校教育の限界とか共感せずにはいられません。あとやはり破壊力抜群なのはりこ√であり、りこの母親が育児と学業と仕事をこなせずいっぱいいっぱいになってしまって「仕事は頑張ったんですけど……」と絶望するシーンとか、周囲に受け入られるために演技で良い子であり続けるりこがストレス過大で精神崩壊とかすさまじい。さらに主人公くんもメンタルクラッシュして「世界は俺を必要としていない」という心境に至る所は心情を揺さぶられるものがあります。

 


葉山こよーて『幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-』 (インレ) (2017-12-22)

歴史上の人物女体化シリーズなタイムリープ系歴史改編モノ。新撰組の隊士となり京都編〜戊辰戦争までを辿ります。新撰組の生き様をハラショーするものであり隊士たちの信条をよく描いていますが、歴史の大局に翻弄される部分も多く、史実を教科書的になぞるだけじゃんというツッコミも見られます。あと折角MAP機能があるのですが、第一部の京都編までであり、第二部の戊辰戦争編に入ってもMAPは京都のまま・・・。東北諸藩の位置関係とか確認したいので第二部もMAPをつけて欲しかったものよ。そして新撰組禁門の変をピークに後は負け戦なので、絶対に勝てないジリ貧消耗戦を読まなければなりません。ここで新撰組の隊士たちがどんなに足掻いても、結局は大村益次郎に悉く叩き潰されるので、大村益次郎ゲーとなります。また土方歳三が立てる巧妙な作戦を、悉く榎本武揚のせいで失敗してしまうので逆の意味で榎本武揚ゲーともなります。そして最後は歴史改編が行われ、土方歳三死なないエンドとなります。土方歳三秋山好古、主人公くんは児玉源太郎となり日露戦争を率いるぞ!という次回作の予告が行われます。

 


さかき傘他『金色ラブリッチェ』 (SAGA PLANETS)

ホスピス死に泣きゲー。理亜ゲー。体験版〜個別ヒロイン√までは、「打ち込んできたものを喪失した主人公くんが第二の人生の生き甲斐を見つける」ことが物語の軸となっています。しかしフラグ構築にあたって重要な役割を果たすのが理亜(√ロックかかってる)であり、主人公くんが精神的に落ちかけると、様々な場面で主人公くんを支えたり導いたりと親身になって接してくれるのです。その交流の中においても理亜が数々の死亡フラグを立ててくるので、死の予感がプンプンしており、正直言ってグランド√の理亜シナリオが気になって仕方がない構造となっています。さらには、主人公くんの過去(部活問題)については、余り深刻にはなりません。個人的にはもっと部活問題に焦点があてられ、主人公くんが懊悩するかと思っていましたが、わりとあっさり目でした。その分、理亜グランド√では人生に於ける生き甲斐が死生観の観点から深い掘り下げがなされています。ローゼンメイデンのメグよろしくホスピスがなかなか死なないパターンにおける家族の介護疲れが発生し家族崩壊してしまうところなんかはグッときますね。父親が心労で死に、母親がブチ切れて理亜を見捨てた故に、主人公くんに対しホスピスではなくフツーに接してくれと懇願するところは感情が揺さぶられます。また主人公くんが恋人を喪失する恐怖や不安、また自分の行いが終末医療にとってホントウに良いものかと煩悶しながらも、理亜の前ではカッコよくいようとする生き様とか結構ステキで好き。そして好感が持てるのが、安易な救いを発生させたりや感動させるためのヒロイン殺しにしたりせず、丁寧に死生観を描いてホスピスが死ぬところまでを描いてくれたところ。2017年には死生観を描いたホスピス死にゲーが結構あって良い年でした。

 


東ノ助『月に寄りそう乙女の作法2.2 A×L+SA!!』 (Navel)

驚くほど短い朔莉アフターや個別エンドまであるのに声優ついてない紅葉エンドなどのすったもんだはありますが、大蔵家要素が入っているシナリオはフツーに良くできています。るみねぇ√はこれまで杓子定規であったるみねぇが適度な匙加減を覚えこれまで頭の凝り固まったステレオタイプから脱却して自ら才華くんのためにお茶目な規則違反をしてのけるところに一種のカタルシスがあります。また確執があった山県大瑛と大蔵家の問題もスルガと大瑛の異母兄弟エピソードがしんみりときますね。メインというべきなのはアトレストーリーであり、アトレが兄に抱いた歪んだ奉仕心を解消するところが見所。アトレの歪みは才華くんの幸福により解消できるので別にアトレ√でなくとも他ヒロインエンドでもかまわないのですが、アトレ自身を攻略することでトラウマを解消するというのがオツなところです。才華くんが自主性がないと説教されるところもおススメポイントです。惜しむらくは才華くんが覚醒してからダイジェストモードでトントン拍子に大成功となったので、もう少し一捻りあっても良かったのかもしれません。そして音声無しの紅葉√作るんだったら九千代も救済してくれればよかったのに・・・

 

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山野詠子『ニルハナ』(ゆにっとちーず)

凄惨な過去を持つ悲劇的な女性を題材に、古代インドの神殿娼婦を下敷きにした伝奇ゲーっぽい作品です。主人公くんが夢世界で断片的に登場人物たちの過去を見せつけられるという形式でシナリオが進んでいきます。メインの核となるのは、空木マユという少女。この少女に事故死した主人公くんの彼女:カスリと聖娼:ナームが結びつきます。マユは児童虐待&ネグレクトされていたのですが、そこからさらに凄まじい人生が始まります。マユは自分が強姦されかけた際に、犯人を兄が撲殺する所を目の当たりにします。さらにマユは凶器を隠蔽して兄を助けるのですが、ツンデレ的に拒否してしまったため、兄に置いていかれてしまいます。そして、恒常的に強姦されるようになり、二度も堕胎を経験するのです。子殺しの咎を背負うマユ。このような境遇の中、もう一度兄に助けられ、インドでリハビリをすることになります。マユはこの時に自分をケアしてくれた澄田さんと恋仲になるのですが、今度は澄田さんが死亡。拠り所を失ったマユはついに兄と近親相姦することに。その後、マユは文才が開花し、小説でヒットするのですが、大きな企画を貰えた所で兄の子どもを懐妊。しかし、その子供が死産。それでも、何とか立ち上がり、今度は自分を慕う、ファンレターをくれた少女(主人公くんの彼女:カスリ)に小説を書く技法を伝えようとするのですが・・・カスリが事故死という展開になります。そして聖娼ナームの力を兄を媒介にして受け継いだため、マユの魂魄は二つに分化して抜け落ちていきます。主人公くんはこの分化した少女のうち、自己を「咲かない花」と称するユウを肯定することになります。こうして魂魄体はその魂をマユに返却することになり、エンドを迎えます。