ニルハナの感想・レビュー

情緒不安定な女性を題材に、複数の悲劇的な人間関係を描くはなし。
交際相手を事故で亡くした主人公くんが、夢世界での追体験により、心を擦り減らしていく。
自傷癖のあるメンヘラ、古代インドの聖娼児童虐待された少女の話が錯綜して提示される。
最後は複数の話が主人公くん視点に統合され、自罰意識を乗り越えて、救われる。
私は読解力がなくて神殿娼婦とか、ユウの魂の分化とかが読み解けませんでした。申し訳ない限り。

概要

  • 主人公くんとカスリのはなし
    • 情緒不安定な少女と交際するうちに、逆にメンタルを削られていく主人公くんの関係について。ヒロインのカスリは家族、特に母親と良い関係ではありませんでした。カスリが生まれる前に母親は流産を体験しており、死産した兄とカスリを比較し続けるのです。いない存在の兄は母親により理想化され、それと常に比較されるカスリは情緒不安定な女になったのです。主人公くんは最初は善意と思いやりで接していましたが、無償の奉仕は難しく、徐々に精神が蝕まれてくるのでした。
    • 二人の関係性を変えたのは、カスリの飛び降り自殺でした。幸運なことに一命をとりとめ、さらには辛いリハビリや入院生活を励ましたのも主人公くんだったのです。しかし主人公くんはカスリがいつまでたっても自分ではなく母親の呪縛に甘んじていることに苛立つようになり、カスリを征服したい、いやカスリは征服されるべきだと思うようになっていったのです。それでも何とか優しく接しようと努力していた主人公くんでしたが、カスリが自立し始めると動揺することになります。自立して主人公くんと対等になりたいと願うカスリと、カスリがいてくれればそれで良いと思う主人公くんの溝は徐々に深まっていき、ついには破局。諍いの末、出ていったカスリはその途中で事故死するのでした。
    • カスリが死んだ後も主人公くんは惰性で生き続けるのですが、そこをユウにスカウトされて、リュウヤの下へスパイとして派遣されることになったのでした。この派遣先で夢を操られ、カスリとの関係をフラッシュバックさせられます。

  • 空木リュウヤとマユのはなし
    • 語り部の主人公くんは、夢世界でリュウヤとマユの過去話を見せつけられます。リュウヤは父子家庭で育ちましたが、父の死を契機に、顔も知らない母親に引き取られることになります。しかし、その母親は男に抱かれることで、はしたカネを稼ぐ惰性と倦怠染まった娼婦崩れだったのです。そしてそこにはリュウヤのイモウト:マユがいました。出生届も出されていないマユはネグレクトされており、リュウヤはマユの世話をするうちに愛着を抱くようになります。マユも良く懐き、束の間の平和を享受しかけるのですが・・・ある時、リュウヤは母親の客であった男がマユを犯している現場に遭遇してしまったのです。男を撲殺するリュウヤ。この時、リュウヤはマユと共に逃げようとするのですが、マユはそれを拒否したため、一人で逃亡することになります。マユは兄を庇うため、凶器を隠します。その男が不法滞在者であったこともあり、罪に問われることなく、リュウヤは不起訴となります。マユはリュウヤに連れ去ってもらいたかったのですが、リュウヤは拒絶されたと思い込み、マユを置いて立ち去ります。
    • リュウヤと別れた後のマユは、娼婦の母親の客である男性たちに犯され、二度も堕胎することになります。その後、マユと再会したリュウヤは、何とかマユを回復させようと願い、インドで孤児院のボランティアをする友人:澄田の下へマユを預けます。インドの地で澄田によりケアされたマユはメンタルを回復されるのでした。しかし、リュウヤにとって誤算だったのは、イモウトの好意が自分には向かず、澄田に向いてしまったことでした。マユと澄田が交際していることを知ったリュウヤは、またもインドに飛びます。
    • マユは人並みの幸せを得られそうになったのですが、ここで澄田死亡のお知らせ。発狂するマユに対し、歓喜したのはリュウヤでした。傷心のマユを抱いて、今度こそ自分のものにし、性行為によりマユの罪悪感を散らしていきます。しばらくしてマユは小説を書くようになり、しかもそれが評価されて軌道に乗ります。一大ビッグプロジェクトを担当することになったマユでしたが、ここで妊娠のお知らせ。これまで子供を堕胎したことに対して、子供を殺したという自責の念を抱いていたマユは、産んで育てようというリュウヤの提案に喜んだのでした。しかし、ここでも赤子は生まれることはありませんでした。マユはまたもやメンタルクラッシュし、一大ビッグ企画もポシャってしまったのでした。

  • マユとカスリのはなし
    • カスリが主人公くんと対等になるために自立しようとしていた「仕事」とは何かについて。主人公くんから自立したいと思っていたカスリですが、ある時、ファンレターを出します。その宛先がなんとマユであり、精神崩壊していたマユはカスリの手紙で息を吹き返します。こうしてマユはカスリに小説指導することが生き甲斐になりました。カスリに対し、承認欲求を満たそうとして小説を書くのではなく、まず自分の苦悩を書き出してみるのだと説きます。こうしてカスリはノートに文字を綴るのですが、自分の中にある過大なルサンチマンが、文字にしてみると陳腐化してしまい、そのギャップに悩むわけです。自分が抱えていた煩悶が、文字化して客観視すると、この程度だということに耐えられないのです。それ故、カスリは自分自身と向き合うことになり、嗚咽を漏らすのです。主人公くんには小説を書いていることは内密にしており、仕事の内容も教えておらず、不信感を招くことにもなるのですね。その行き着いた先が、主人公くんとの諍いと、カスリの出奔、そして交通事故死。子どもを死産した後、マユが生きる希望としていたカスリも、あっけなく死んだため、またもやマユは精神崩壊。

  • 古代インドの聖娼とかのはなし(ここらへん私の読解力では読み解けなかった・・・解釈が違ってる可能性が大きい)
    • 古代インドパート。聖娼を題材に世界観設定が行われるが、正直よく分からない。分からないけど雰囲気ゲーとして楽しめばいいんじゃないって感じ。
    • 不老不死の異能を持ち、性交すると相手の男性に力を付与できる聖娼が二人出てきます。相手と交わって力を受け渡すと聖娼は死ぬ。二人のうちナームは、自分の人生を諦観しており、その生を受け容れています。ニルハは自分の運命を受け容れず他の可能性を探しています。ナームは人生を受け容れるように諭すのですが、ニルハの生き方にもまた惹かれてもいたのです。で、結局ナームは逃げちゃう。そして不老不死であるため、現代まで生き続けることになり、ついには空木リュウヤと遭遇するのです。当時のリュウヤは親友がマユと交際を始めた衝撃に耐えきれず、インドに来ていました。そこでリュウヤはナームと交わり、力を得たのです。その後、上述したように親友が死ぬと、リュウヤはマユと交わることになるのですが、ここでマユにナームの聖娼の力が受け渡されたのです。
    • リュウヤとの子を死産し、カスリも死に、絶望しかないマユ。そんなマユの魂魄はナームの力により?二つに分化します。リュウヤへの想いの性質を受け継いだナミダと、リュウヤに反発する性質を持つユウに分れたのです。従来、マユは自分の凄惨な人生に対する反発を文字に綴ることで、小説家としての地位を確立しました。魂魄が抜け落ちたマユは、同様に凄惨な過去を持つ人々の感情を奪って生の実感をえるようになります。
    • 魂魄から実体化したユウは、リュウヤの下から出奔し、主人公くんにリュウヤの秘密を暴いてくれと頼むことになるのが、プロローグの部分となります。で、結局の所、カスリは小説を書くために奮闘していたのだということを、主人公くんに教えます。こうして主人公くんはカスリの死を乗り越えることができたのでした。ラストはユウとナミダの魂魄をマユに返そうということで、エンドを迎えます。夢世界で主人公くんが折れないように呼び掛けていたのがニルハ?なんかユウと主人公くんはまた会えるよエンド的な雰囲気となり、実際に会えたような一枚絵がラストに提示され、終わります。

  • 話の流れ整理 
    • 神殿娼婦ナームの力が、リュウヤによりマユに伝わり、マユの魂魄体がユウとナミダに分化。ユウの性質がリュウヤに対する反発であったため、ユウはリュウヤの下を出奔。主人公くんがユウを肯定したため、ユウはナミダとともに魂魄をマユのもとに返った。ということで良いのかな?