『ゾンビランドサガ』全12話の感想・レビュー

ゾンビが御当地アイドルになって佐賀県を振興するアニメ。それが『ゾンビランドサガ』!
佐賀県は「地域ブランド調査」で我らが群馬県と共に最下位周辺をうろつく関係でした。
茨城・群馬・佐賀で広報担当が鼎談する程の仲でしたが・・・
(cf.茨城がまさかの4年連続最下位、群馬・佐賀と「地域ブランド調査」に物申す!、2016.11.04
なんと、佐賀県コンテンツ産業と組んで話題作りを展開し、一歩抜きんでて急上昇。
おそ松さん』のコラボを始め、アニメによる地域振興で成功をおさめる佐賀県
その佐賀県の魅力を見習うべく、ゾンビランドサガを視聴することになりました。
(※1.初見に優しい面白コメディ回が第5話なので未視聴者は第5話から入るといいかも。)
(※2.地域ブランド調査2018年では佐賀県は44位だったもよう→地域ブランド調査2018 pdf)

目次

第1話「グッドモーニング SAGA」の感想・レビュー

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  • 存在自体が風前の灯火である佐賀を救え
    • 物語は即落ち2コマ漫画のノリで始まります。時は2008年、メインヒロインの源さくらは高2進級を契機にアイドルになろうと決意します。オーディションの書類を出すべく、玄関を開けて新しい日々にチャレンジするぞ☆と公道に出た瞬間軽トラにはねられて死亡するのでした。さくらが意識を取り戻したのは薄暗い洋館の中。次々と襲い掛かってくるゾンビから逃れて警官に助けを求めるも、発砲され打たれてしまいます。愕然とするさくらがカーブミラーを見ると、自分もまたゾンビィになっていたのでした。
    • わけのわからないまま、さくらは謎のプロデューサーからご当地アイドルになり佐賀を救えと命じられます。ご当地アイドルが終焉を迎える今だからこそ、有象無象がなくなり、淘汰されてきているチャンスなのだと。そこへ食い込めと。そして存在自体が風前の灯火である佐賀を救えと言われるのです。
    • 最初のチャレンジは、デスメタルに飛び入り参加。さくら以外のメンバーが未だ意識を覚醒せず這いよるゾンビの中、ノリと勢いだけでデスメタルに挑戦し、シャウトをかますのです。イベント自体は滅茶苦茶のうちに終わってしまうのですが、この体験が功を奏し、メンバーズが覚醒します。こうして佐賀県を救うため、ゾンビアイドルたちが立ち上がったのでした!!

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第2話「I♡HIPHOP SAGA」の感想・レビュー

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  • やる気のないチームメイトを眼前にしたメインヒロインはブチ切れて、佐賀城でシルバー人材相手にラップをかまし大受けしちゃうの
    • 佐賀県振興のために結成されたゾンビアイドルグループ。無理やり強制されていることに納得のいかないメンバーは、ろくに練習することもなくやる気がありません。彼女らはゾンビィだから行く場所がないからここにいるだけで、佐賀県に対する愛情もアイドルをやろうという意欲も全くなかったのです。プロデューサーに、佐賀県のこと知らないんですかぁ?とおちょくられた平成アイドルの愛が、九州とだけ口惜しそうに答える一連の漫才が良い味だしています。そんな低空飛行の中、メインヒロインのさくらだけが前向きに取り組んでいきますが、それをサキはいいこちゃんだとしてよく思わず、昭和アイドルの純子も平成アイドルの愛も白けているばかり。脱走する純子と愛でしたが、そこでも警官に銃で撃たれ、自分達がゾンビィにしかすぎない現実を目の当たりにしてしまうのでした。
    • そして本番当日。チームメイトが誰も協力してくれない中で、アクシデントやハプニングが立て続けに起こり、ついにさくらはブチ切れ!ラップ口調で元ヤンのサキと戦い、純子と愛に対しても糾弾し、さらにはシルバー人材に対しても、高齢化などクソ食らえで立ち上がれ佐賀人民と説くのです。こうしてブチ切れラップは功を奏して観衆にバカ受け。そして根性あるやつとしてさくらはサキにも認められることとなり、チームは一歩前進したのでした。

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第3話「DEAD OR LIVE SAGA」の感想・レビュー

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  • 唐津駅でゲリラライブをするはなし
    • 佐賀県振興のためにゾンビとして甦りアイドルをすることになった少女たち。今回は突如としてゲリラライブを行う指示が下されます。歌も踊りもそんなに簡単に覚えられるわけねーわなと苦労する一方で、それでもチームリーダーやチーム名が決められて前進していきます。しかし元アイドルであった純子(昭和アイドル)・愛(平成アイドル)と他のメンバーでは知識も経験もやる気も意識も何もかも違ったのです。上手くいかずに深夜の公園においてグルグル遊具で黄昏れつつも、それでも、徐々に意識を確固たるものにしていきます。ここでメインヒロインのさくらが良い事いった感になるのですが、トートツに元花魁のゆうぎりにビンタされ、発言の要旨を持っていかれる理不尽ギャグが挿入されいい味だしています。
    • 再びやる気を出したさくらたちですが、純子と愛はいまいち乗り切れずプロデューサーに食ってかかったりなんだり。踊らぬゾンビィはただのゾンビィだと断罪される二人。翌日のゲリラライブでも純子と愛は職務放棄して参加しませんでした。それでも、今できることを必死に成そうとするさくらたちを見て次第に感化されていきます。そして、さくらが歌詞を忘れてしまい呆然とするなかで、二人は手助けに来てくれたのでした(JKに小馬鹿にされるシーンが共感的羞恥を煽ってやみません・・・)。最終的に聞いてくれたのは小さな女の子一人だけ・・・。それでもゲリラライブをやり遂げることで、自らのアイドル観に固執する純子の偏屈な心をほんの少し動かすことできたのでした。

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第4話「ウォーミング・デッド SAGA」の感想・レビュー

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  • 嬉野温泉久光製薬の慰安旅行の余興の出し物をする話
    • 活動資金が無くなったゾンビアイドルたちは、慰安旅行の余興の仕事を得ます。そんなわけで嬉野温泉へGO!地道な営業をするプロデューサーの幸太郎さんですが、ゾンビアイドルたちには観光と称していたため、アイドルたちもまた練習せずに嬉野温泉を観光することに。しかし、足湯に浸かりながら己の心を開くことで、親睦が深まるのもまた事実。アイドル活動に対しての意識の違いが問題となっていましたが、嬉野温泉の足湯に浸かることによってお互いの理解が促進され、本気で取り組む覚悟と決意をさせたのでした。
    • そして、慰安旅行の余興として出し物をするゾンビアイドルたち。これでもかというくらい久光製薬サガンシップゼットが押し出されています。思わず視聴者たちが検索してしまいグー〇ルの予測検索に出てきてしまうほどです。→そんなシップはなかった!!!大成功のうちに余興を終え、シップとのタイアップの話が進むかと思っていましたが、ここで大チョンボ。なんとゾンビバレしてしまうのです。温泉に入りたくなったサキに唆されたさくらは、同じく温泉に拘る純子ともども3人で温泉へ。(ここでおずおずと温泉に入りたがる純子の可愛さがすごい)。そこで久光製薬の社長?と遭遇した挙句に首がもげてしまい、さらに旅館中を逃げ惑うなかでゾンビ体験をさせてしまうことに。こうして女社長は記憶が吹っ飛んでしまい、サガンシップZとのタイアップはお流れになってしまうのでした。

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第5話「君の心にナイスバード SAGA」の感想・レビュー

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  • ドライブイン
    • アニメによりご当地飲食店が一挙に有名になる事例。可愛いアイドルのキャラクターたちが、おいしそうに焼き鳥を食べるだけで、それはもうものすごい宣伝効果になります。思わずドライブイン鳥の公式webサイトを見に行ってしまうほどです。さらに、歌と踊りのCMソングをゾンビアイドルキャラたちがカバー!!しかもただCMを収録するだけではなく、物語のキャラ造形の掘り下げに絡めているところがたいへん趣深いです。まだ意識を覚醒していないゾンビキャラが雄叫びをあげてしまうというシナリオ上の問題点を、CMの鶏の鳴き声に合わせるという手法を取ることで、克服しているのです。さらに、このアイディアは平成アイドルである水野愛の発案であることもさりげなく紹介され、キャラの関係性の掘り下げも行っているのです。さすが佐賀県

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  • ガタリンピック
    • Bパートはガタリンピック有明海といえば『釣りキチ三平』がムツゴロウ漁をしたことで有名ですね。図書館で読みました。その時にガタスキーがでてきていましたが、まさか町興しが行われていたとは!!初めて知りました。これだけでも佐賀県の宣伝効果は抜群です。そして何より欠かせないのが、可愛いゾンビアイドルのキャラクターが泥まみれになるというシュチュエーションよ!!可愛いゾンビが泥まみれになるんだぜ!?これはもう最高さ!ガタチャリやガターザンで次々と珍プレイを披露していく完全にネタキャラと化したアイドル達の様子をごらんください。そしてガターザンで優勝したと思いきや、優勝したのは人間の意識が戻っていないゾンビ山田たえさんでした。ここでメインヒロインが機転を利かせてTシャツを見せつけて宣伝しようするのですが・・・なんと!着ていたのはドライブイン鳥のTシャツだったでござるの巻き!というオチでした。こりゃもう佐賀県知名度や人気度がうなぎ上りになるのも当然ですね!!!!

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第6話「だってセンチメンタル SAGA」の感想・レビュー

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  • 世代における価値観の対立
    1. 人間は自分が生まれ育った社会的背景により人格形成に影響を受けるため、世代ごとに価値観が異なりジェネレーションギャップが生まれます。例えば、幕末の両親世代が藩閥政府を公儀の徳川家から政権を簒奪した者と見なすのに対し、明治の教育を受けた子ども世代が明治政府を腐敗した江戸幕府から近代国家を作り上げた導き手と信じるが如く。
    2. 今回のお話では、平成世代と昭和世代のアイドル同士でガチの価値観対立が発生するのです。平成アイドルは、歌と踊り(だけ)で勝負するのではなく、自分の設定や記号を切り売りし、ファンに支えてもらう(=金を巻き上げる)ことを前提としています。しかしながら、そのような拝金主義的な商法に昭和アイドルは耐えられないのです。昭和アイドルはステージの上からファンを魅了してなんぼだとの価値観を尊び、ファンに媚び諂えば実力が伴わなくともよいのかと論じるのです。
    3. 他方で、平成アイドルにとってはアイドルが上から目線で施しを与えるかのような昭和アイドルの価値観を傲慢だと考えており、知名度を上げて身近な存在となり一緒に歩んでいくということを主張するのです。二人の考えはお互いが正当だと信じるもので、正論を掲げてん殴り合う宗教戦争なのです。だって人間が作り出した価値観だもん、どっちだって正しいに決まってんじゃん!と。
    4. 世代間格差による対立の不毛さだけでなく、自己の正当性を掲げて殴り合う愚かさを教えてくれているのですね。

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第7話「けれどゾンビメンタル SAGA」の感想・レビュー

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  • アイドルにおける不易と流行
    • 時代に合わせて変わっていかなければならないことと、どの時代でも変わることのない本質的なもの。そしてそれに苦悩するゾンビのジェネレーションギャップ。昭和アイドル紺野純子と平成アイドルの水野愛の価値観の違い。アイドルが皆の憧れの偶像崇拝であった昭和時代の価値観を持つ純子は煩悶します。いつでも会える身近なご当地アイドルが雨後の筍のように現れる平成時代に馴染めずヒキコモリになってしまうのです。
    • 純子を欠く中でチームはサガロック出場のために練習を重ねます。プロデューサーの幸太郎は、一度はアイドル達からの依頼を足蹴りにして純子を放置しますが、陰では精神的なケアに努めます。いつまでもヒッキーやってる純子に対して、説教が炸裂。昭和と平成のギャップ、そして不易と流行を説くのです。いつの時代でも見てくれる皆に影響を与えるのがアイドルなんだ!やりたくなければやらなければいい!自分のキャラを貫き通せと発破をかけます。
    • そして当日、時間となり車を発進させる前に純子が飛び出し、自分も連れて行くように頼むのですが~~~~!!!はい、ここでギャグ展開!車はブレーキをかけず見事に純子吹っ飛ぶ!!そして本番。ステージで雷に打たれて死んだ水野愛は、雷雨の中で本来の力が出せません。そこを救うのが純子というわけで、百合友情フラグ回収ですね。雷に打たれてもダイジョーブ。だってゾンビだもん。と、いうことでサガロックを成功に導き、ご当地アイドルとしてブレイクするのでした。

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第8話「GOGO ネバーランド SAGA」の感想・レビュー

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  • 男の娘であったゾンビィ6号こと星川リリィ(マサオ)回。父親との泣ける話
    • 佐賀県ネタアニメでグイグイ来つつも、シナリオでは全力で泣かせに来ます。御当地アイドルが軌道に乗り話題となる一方で、生前の関係者が出現。ヤーサンと間違えられそうなゴツイ土建屋のオッサンが周囲をうろつきます。ストーカーか何かかと思いきや、なんと星川リリィの父親だったのです!母を亡くし父子家庭で育ったリリィが子役を志したのも、テレビ好きな父親を喜ばせたいからでした。リリィが子役になると父親は仕事を辞めマネージャーとなります。
    • こうして二人三脚で人気抜群となっていったのですが、父親は現実の息子を見なくなりテレビの中の役者としての息子に没頭していきます。父親に相手にされずに寂しく思うリリィでしたが、ついに成長期がやってきます。男の娘であったリリィは男性ホルモンに勝てず、ヒゲが生えてきてしまったのです。こうしてヒゲによる精神的ショックでリリィ(本名:マサオ)は死亡。
    • リリィは父親のことは忘れてゾンビィとしての人生を歩もうとするのですが、ここで助け船が入ります。ナイス百合!(あ、片方は男の娘や!)喧嘩したまま死の別離となった父親の為に、マサオは想いを込めて父親の為の歌を歌うのです。男の娘のゾンビがガタイの良い土建屋のオッサンのために歌うシュールな図ですが、何故だか涙が止まりませんね!こうしてマサオは父親との生前の因縁を解消することができたのでした。

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第9話「一度は尽きたこの命 なんの因果か蘇り 歌い踊るが宿命なら 親友への想いを胸に秘め 貫くまでよ己の SAGA」の感想・レビュー

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  • 元ヤンであったため普通の家庭を求めた母だったが、娘もまたチーマーに入ってしまったの巻き
    • サキ回。第8話から家族もの泣きゲー路線に入り、前回は父-息子関係モノでありましたが、今回は母娘モノで泣かせに来ます。刹那的な享楽を追い求めるサキは暴走族を拡大することに命を賭けていましたが、相方のダチ公は違いました。両親が離婚したためグレた結果、暴走族に入ることになったがため、将来はフツーに結婚してフツーに子どもを産み、子どもには青春を謳歌して欲しいと思っていたのです。おそらくチキンレースでサキが死んだことにより、暴走族を辞めたのでしょう。家庭に入り、娘を育て、幸せな毎日を享受していると思い込んでいました。しかし娘が思春期に入ると反抗期に突入。中学頃から見せ始めた変化を認められずスルーしてしまったがゆえに、ついに娘も自分と同じようにグレてしまったのでした。娘がグレた要因は母親が必要以上にペコペコと頭を下げ遜ること。おそらく元暴走族でありろくにガッコーも行ってなかったので身に付いた処世術だったのでしょう。娘は、自分の自慢の母親が周囲にバカにされることを許せなかったのかもしれません(行間を読んで文脈から推察)。

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  • 親友の娘が母親と向き合うことができずに非行に走ってしまった場合、チーマーアイドルとして何ができるだろうか。
    • 鹿島踊りの練習後、サキは自分のマブダチの娘に出会うのですが、プロデューサーの幸太郎から窘められます。ゾンビィであることが故のコミュニケーション制限です。時々真剣な口調になる幸太郎の奥深さよ・・・。しかしながらサキは全てを理解した上で、アイドル活動と称し、チーマーの抗争に介入するのでした。チキンレースに挑むことになった娘でしたが、そこに母親がかけつけます。勝負の場におかあさんが駆け付けるという状況・・・娘の心境はすごいものがあったことでしょう。そんな中、サキはアイドルの「一日○○」をパロって一日特攻隊長だと名乗りチキンレースに代打で出場します。崖に向かってツッコミ先にブレーキをかけた方が負け。サキはかつてと同じようにブレーキをかけずに突っ込みますが、今回はゾンビィなので炎上しても死にません。這い上がって根性を見せるサキに対し、親友はグーパンをかまします。サキは親友の娘に対し、母親は滅茶苦茶気合入ってるだろ?と諭し、真っ正面から向き合うことを説くのでした。そして建前上のアイドル活動も忘れてはいません。見事チーマー連中をファンに引き込み、EDの歌と踊りでその心意気を示したのでした。

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第10話「NO ZOMBIE NO IDOL SAGA」の感想・レビュー

さくら回(上)。大きな功績に目がくらんだ少女がチームワークを忘れ独りで先走っちゃうおはなし。
今迄の放送において、他のアイドルに対しては容赦無く断罪してきた幸太郎であったが・・・
何故かさくらには自分で気づくように仕向けることがゆうぎりを通してクローズアップされている。
勝手に投げ出した後、客観的に皆の練習シーンを見たさくらは独りで舞い上がっていた事に気づく。
また一つ成長したさくらだがまたしてもトラックにはねられ、今度は記憶を取り戻すのであった!

さくら回(上) チームを忘れ一人で勝手に突っ走る痛々しさを知れ!

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  • 唐津市ふるさと会館ライブ
    • (1) 本作の語り部でありメインヒロインのさくら。生前の記憶を取り戻せずにいたところ、唐津市ふるさと会館ライブの話が舞い込んできます。するとどうでしょう!自分がアイドルのライブを見に行っていた断片的記憶がフラッシュバックし、テンションマックスとなってしまうのです。唐津市ふるさと会館は、多目的ホールを有するものの、ほとんど機能していない箱物行政であることが紹介され、それではいけないのでアイドルパワーで唐津市を救うことが目指されます。さくらは自分の記憶との繋がりを求めて、自分のことしか考えなくなり、チームワークもバラバラとなっていきます。そんなわけで、プロデューサーの幸太郎さんにより、佐賀県天山への山籠もりが行われるのですが・・・ここでもさくらは一人だけ趣旨を理解できません。他のメンバーが自然と幸太郎の意図を読み解きサバイバルするのに対し、さくらだけ地団駄を踏み、さらに他のメンバーへの不満が高まるのです。そしてついにその不満は爆発し、ひとりで自滅してしまうのでした。
    • (2) そんな中、幸太郎の居酒屋タイム。おそらく残り話数的に担当回がカットされてしまう予感なゆうぎりがここで活躍?します。場末の居酒屋で佇む幸太郎のもとを訪れたゆうぎりは(幸太郎の意図を視聴者に分かりやすく説明させるために)突如芸妓スキルを発動します。シリアスな雰囲気が漂う中、イキナリビンタをかましギャグ展開へ持っていく力技。しかも幸太郎が趣旨説明をした後にもかかわらず、あたかもゆうぎりが自分でそれを言ったかのようにおっかぶせて説教していくスタイル!!
    • (3) で、さくらは幸太郎の意図どおり自分で気づくことに成功します。皆が練習している姿を客観的に外から眺める事で、自省の念が生まれて自分が間違っていることに気づくのでした。謝罪するさくらに対しサキから頭湧いたかと思ったと評されるシーンはある種のやさしさで和む。こうしてわだかまりを払拭したさくらは今日も頑張るぞ☆と朝からランニングに出かけるのですが・・・第一話冒頭の表現がここに繋がり、さくらがイキイキするとトラックに跳ねられる展開が発動します。轢死して記憶を失ったさくらがもう一度轢死することで記憶を取り戻すという構図をお楽しみください。生前の記憶が無かったさくらは、今迄生きていた頃の未練と向き合わないまま、ここまで来てしまっていました。果たしてさくらは自分の死を受け容れることができるのか!?まて、次回!!

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第11話「世界にひとつだけのSAGA」の感想・レビュー

頑張っても、頑張っても、頑張っても、報われなかった少女の諦観を打破せよ!!
努力しても一度も成功したことがなかったメインヒロインが「持ってない」と人生を嘆く。
かつて、無気力状態であった源さくらの救いとなったのが、アイドルパワー。
「失敗とか後悔を全然ダメと思ってないからです」
しかし再起を誓った矢先、轢死しゾンビになる絶望。
こうしてさくらはネガティブスパイラルに陥るのであった!!
「なぜそこまで頑張れるんですか?」⇔「なぜそんなに頑張れないんですか?」


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  • 「失敗とか後悔を全然ダメと思ってないからです」
    • 今まで記憶が無かったさくらは気合と根性でチームを盛り上げてきました。それこそが本来のさくらの姿だったのでしょう。しかし、記憶を取り戻した今回は、自分の死を受け入れることができるかがテーマになってきます。この問題は他のチームメイトが、さくらの助力を得て、乗り越えて来たことばかり。かつて助けてくれたさくらのためにと、一同が他のチームメイトに言い訳をしながらさくらと話に行く泣ける展開となっています。
    • けれども、ネガティブスパイラルに陥ってしまったさくらはそう簡単には立ち直れません。それには理由があり、これまでのさくらの人生においては成功体験が非常に乏しく自己肯定感を持てなかったからです。頑張っても、頑張っても、頑張っても、頑張っても、報われることのない人生に絶望したさくらは、未来を諦観し、傷つくくらいなら頑張らない方がましとの境地に至るのでした。
    • 過去において、そんな状態になったさくらを救ってくれたのが、アイドルパワー水野愛。「なぜそこまで頑張れるんですか?」というインタビューに「失敗とか後悔を全然ダメと思ってないからです」と答える水野愛。この言葉にインスパイアされたさくらは、再び立ちあがる決意をしたばかりだったのです。ここで第1話の冒頭につながり、そんな決意をした矢先に轢死。ゾンビになってしまったので、さぁ大変。メンタルクラッシュからの立ち直りからの再びメンタルクラッシュという怒濤の展開。とうとうさくらは精神崩壊してしまうのでした。



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  • 「お前を絶対に見捨ててやらん!!」
    • フランシュシュのチームメイトの励ましも効かず、街を放浪するさくら。ブランコで「なぜそこまで頑張れるんですか?」の対比表現として「なぜそんなに頑張れないんですか?」が表示された時には、視聴者も同時に絶望です。いやーホントにさくらには共感することしきりで、「頑張っても報われない」という現実を知っているからこそ、共感的絶望・共感的諦念を味わされることとなりました。
    • そんなレジグナチオンなさくら、及びさくらに共感して絶望した視聴者たちにプロデューサーの幸太郎さんは何を語るか!?夜景を見ながら、まともな説得をしても、ネガティブスパイラルに陥るさくらには通じず・・・。ここで終わりか・・・と思いきや。まともな説得がダメなら破天荒で熱意で行け!!「もっとらん」を言い訳にし、「最初から私なんか生き返らんやったらよかったとですよ」と呟くさくらに、幸太郎さんはさっきまでの正攻法での出来事がなかったかのように舞い戻る!!!
    • さくらに、「俺が持っとるんじゃ―――い!!」と演説するところは破壊力抜群です。「そう簡単にお前のネガティブスパイラルに乗るか、この馬鹿垂れ。」(さくら抗弁)「俺がもっとるんじゃぁぁぁぁぁーーーーい。」(さくら「は?」)「いくらお前がもってなかろうが、俺がもってりゃええんじゃい・・・なんかこうでっかい、すっごい、なんか。でっかくてすっごいの。俺がもっとるんじゃい。」(さくらドン引き)「いいか、さくら、だから、俺は、お前を絶対見捨ててやらん!」。幸太郎さんの熱弁に対し、ドン引きしていたさくらが表情を取り戻しキッとなるところは是非視聴していただきたいところ!今までの人生に失敗し絶望し諦念していた視聴者一同にさくらが勇気をくれるのです!!

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第12話「グッドモーニング アゲイン SAGA」の感想・レビュー

挫折系主人公モノはどうしてこんなにも感動するのか。
テーマ自体は使い古され手垢のついた「諦めない思想」なのに涙がとまらぬ。
「終わった存在」の比喩としてゾンビを用いることで「ヨミガエレ」が炸裂。
曲の対象はさくらだけでなくフランシュシュであり佐賀県であり我々でもある。
本作で出て来た曲には本当に励まされ、明日へ向かって立ち上がる原動力を貰えた。

ゾンビだからこそ「終わった存在」であることが強調される。たとえ終わっていたとしても立ち上がれるんだ!!立ち上がっていいんだ!!!「終わり」が「始まり」に変わるんだ!!ということを教えてくれる。

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  • 「諦めない思想」をどのように表現するか
    • 古今東西「諦めない心」を語る作品は枚挙にいとまがなく、普遍的なテーマだと言えます。しかし、それ故にもう既に使い古されて新規性もなく手垢のついたパターンになりがちです。そのため、「諦めない思想」をどのような手法やシナリオ構成、演出をとって表現するのかが問われるのですが、本作は本当にゾンビであるという設定が生きています。作中のアイドルグループ「フランシュシュ」の目的は佐賀県を救う事ですが、この佐賀県自体が風前の灯火、つまりは終わってしまった存在として比定されているのです。
    • 人生に絶望し世を拗ねバックレかましてウジウジしているのは世の常といえども、そこから復活を果たす過程がゾンビらしくてすごく良かったと思われます。今までの放送の積み重ねがあるからこその効果。メンバーたちが、伝説の山田たえの行動を見て、さくらに救われたからこそ今こそ恩返しと息巻く美談的な展開に対し・・・。そんなメンバーに鼻白み、ものすごい表情で蔑むさくら。この表情はぜひ味わって欲しいものです!!そんな捻くれMAXさくらに対し、ゆうぎり姉さんのビンタが炸裂します。正論を吐いて反論するさくらに対して、何もかも粉砕するゆうぎり姉さんの説教がひかります!!、さくらを除いたメンバーでの成功よりも、さくらを含めた失敗の方が良いという言葉は確かにさくらに届いたのです。さくらが不幸スキルを発動させるたびに仲間が支えていくシーンもグッときますね。



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  • 「ヨミガエレ」
    • そして本番。佐賀県なのに大雪になり、開催が危ぶまれる中、ファン魂を発揮して応援に駆け付ける追っかけたち。サキ回のマブダチの娘がすっかり2号さんファンになっていてママン&友達と一緒にライブにきているの本当にほっこりしますね。御当地アイドルだもの、地元に根差した身内ファンでもいいじゃない!集まったメンバーを見て、さくらは自分のせいでライブが台無しになってしまうかもしれないという恐怖に駆られます。それでも仲間に励まされ、何とか歌いだすも、なんと会場の屋根が潰れるというアクシデントが発生!!諦めかけるさくらに対し、プロデューサーの幸太郎さんパワーでバフがかかる(幸太郎さんは名字の方位が逆になってて高校生の時の同級生でしたね・・・)。こうしてメンバーは次々と立ち上がり何事も無かったかのように曲を続けていきます。残すはさくらのみ。倒れ伏したさくらが再びマイクを手に取って立ち上がり「ヨミガエレ」をする所はテンションクライマックス!うるうるのうる!



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  • 諦めなければ終わりは始まりに変わる
    • いや、「ヨミガエレ」は、本当に歌詞がいいんですよ。微妙に何言ってるか聞き取れないところもあるんですけれども。以下本編より。
      • 屋根決壊
        • 「ぜったい 無理だって 逃げてばかりよ~」(そうまとう?)「人生二度三度 挫けたくらいじゃ 一度死んだような 顔できないわ」 「無垢でまぶしい あの瞳には もとめただけの すすめ たとえ 過去を? なくしても~」(屋根決壊ガシャーン、ライブ終了の危機)・・・
      • 復活していくゾンビたち
        • 「なんどでも・なんどでも立ち上がれ 諦めなければ 終わりは始まりへ変わる 残酷でも理不尽でも負けないで 立ち止まった日々に 笑顔で手を振り 新しい夢をみよう~」(さくら回想→ゆうぎり・愛・幸太郎→さくら覚醒!!)・・・
      • 覚醒
        • 「YO MI GA EREEE~~~~」。「テンゴクもソントク?も吹き飛ばせ ボロボロのまま 前を向く 今だけがリアル! 限界もトラウマも乗り越えて~ 首の皮一枚~ つないだ希望に 全てを賭けてゆこう 這い上がれ~~~~」(間奏シーンで回想シーンで泣け)「何度でも 何度でも 立ち上がれ 諦めなければ 終わりは 始まりへ 変わる! 残酷で理不尽でも負けないで!! 立ち止まった日々に 笑顔で手を振り 新しい夢を見よう よみがえれ~~~×2」。
    • この歌の歌詞が、さくらを、フランシュシュ全体を、佐賀県を、そして挫折経験のある視聴者をさしているのです!!クソみたいな社会で搾取され、ボロ雑巾のように使い潰され、矢尽き弓折れ心が砕けた状態で、悲劇の海岸で波打ち際に横たわる死骸のような人生だったとしても!!!たとえそこから立ち上がれたとして待っているのが苦難の連続でも!!!諦めなければ、「終わり」が「始まり」に変わるんだと。そして「立ち止まった日々に 笑顔で手を振り 新しい夢を見よう」と促してくれるのです。これこそ、一度終わってしまったゾンビだからこそ説得力が増し、終わってしまった佐賀県に活力を与え、終わってしまったオッサンたちに勇気をくれるのです!!!よみがえれ~~~~。

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