2018年発売のノベルゲームまとめ

2018年に発売されたノベルゲームを発売日順に振り返っていきましょう。
名作や話題作でもプレイできずにスルーしてしまったものもありますが・・・
今年は完結した『ランス10』と既存のKey作品の主題を昇華させた『サマポケ』が二強でしょうか?
長い年月を積み上げて醸成されたものが、一点にまとめ上げられた所にカタルシスが生じますね。
シナリオが練られていたものとしては『ぬきたし』や『アメグレ』などもおススメです。

2018年2月

玉沢円、持田康之、秋月ひろ、時田シャケ、春眠暁、桜野伊吹『ひとつ屋根の、ツバサの下で』(Harmorise、2018-02-23)

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  • 感想・レビュー
    • 第二次世界大戦の航空機による空中戦をウリしたゲームだったのですが・・・なんと肝心要の空中戦が殆ど描かれず残念な結果に。おそらく多くのプレイヤーは第二次世界大戦の航空機の蘊蓄とその機体が現代の空中戦でどう活躍するかを期待していたのではないでしょうか。しかし蓋を開けてみれば肩透かし状態に。もう少し空中戦を濃密に描いて欲しかった感があります。また第二次世界大戦においてどのような位置づけであり、戦史上どのような活躍をしたのかを掘り下げて、飛行機を中心としながら各キャラの個性にシナリオを絡めることができれば、良い作品になったかと思われます。飛行機がちょっと勿体なかったかもしれません。


ダイスころがし、ヨイドレ・ドラゴン『ランス10』 (ALICESOFT、2018-02-23)

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  • 感想・レビュー
    • ランスシリーズの集大成。バッドエンド周回プレイが前提であり、全てのエンディングを見るためには莫大な時間を注ぎ込むことが要求されます。第一部と第二部に分かれており、第一部では魔神軍の侵攻と人類軍の防衛が描かれ、最終的に魔神ケイブリスを討伐することが目的となっています。しかし、どのクリアAに辿り着いてもシィルが殺害され、ランスが魔王化してしまうことは規定されています。そして第二部においては、ランスの子どもたちが魔王ランスを救済することが目的となります。本作の面白さはこの過程において、ランスワールドの創造神との問題が解決されることです。ランスシリーズの世界観は、創造神が無聊を慰めるために世界を創造したという設定です。そのため人類が平和になってしまっては娯楽性が乏しくなるため、常に人類には試練と苦悩と危機が与えられるのです。この形而上学的な神との戦いの設定をどのように風呂敷に畳むのかが注目されてきましたね。なんと第二部において、傍観者であった創造神を実際にプレイヤーに転生させるのです。そして記憶ゼロ状態に設定した上でクルックーの息子として育て上げ、他の子どもたちと一緒に魔王ランスを討伐する冒険に出させ、そこで友情・努力・勝利を学んで体験させます。こうして、この旅を通して創造神は人間世界の楽しさを知ることになります。無聊を慰めるために人類に試練を与えて乗り越えるさまを視聴するよりも、実際に自分で冒険に出るのがイイネ!ということを神に体験させたのですね。こうしてランスワールドは、当事者にとっての魔王問題を片づける一方で、形而上学的な神との戦い問題も解決し、シリーズ全体に幕を閉じたのでした。


桜城十萌『ロスト・エコーズ』 (petitlinge) (2018-02-23)

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  • 感想・レビュー
    • 歴史改変モノ。戦国時代にタイムスリップして大友氏を救え!!フラグ構築後の現世編は微妙ですが、戦国時代編は結構面白いです。九州地方の戦国大名の大友氏を主題とするなんてマイナーでは?と思っていたのですが、どうやら背景には世間における誾千代ブームがあり、戸次鑑連や高橋紹運がクローズアップされてかなり有名な話だったのだとか。思わず国史大辞典で調べてしまいました。岩屋上の戦いが本作品のメインイベントとなっておりますので、下記に本作と関係のある国史大辞典の岩屋城の記述を引用しておきます。「〔……〕天正六年(一五七八)大友氏が島津軍に大敗してのち、北九州の国人層の間に反大友の動きが強まってくるが、岩屋城は立花・宝満城とともに、この時期における大友勢力の拠点であった。同十四年、豊臣秀吉が九州平定を期して西下すると、島津氏はこれに対抗して大軍を率いて筑前に入り、高橋氏を宝満・岩屋に包囲した。鎮種(当時出家して紹運)は、わずか七百の兵で岩屋城に島津軍三万五千の総攻撃を受け、十三日の攻防戦の末七月二十七日、紹運以下全員壮烈な最期を遂げ落城した。しかしこの戦闘による島津軍の打撃も大きく、結局秀吉の九州入部までに筑前制圧を了えんとした島津氏の意図は挫折した」


2018年3月

保住圭、天宮りつ、砥石大樹『RIDDLE JOKER』 (ゆずソフト、2018-03-30)

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  • 感想・レビュー
    • 学園異能バトル潜入捜査スパイアクション。異能を悪用する犯罪者を秘密裏に逮捕する政府系組織に飼われている主人公くんは、異能育成学校を捜査するためにイモウトと一緒に潜入することになります。そこでの調査と学園生活、異能キャラ達との交流を楽しむことが本作のメインとなっていますが、どちらかというとキャラゲーなノリが強く、秘密捜査パートは結構ご都合主義でまとめられる感じが強いです。概略を述べると、異能育成学校が暗躍しているのは、学園長の娘が異能事件で昏睡状態に陥っているからであり、それを救うために様々な実験を繰り返しているとのこと。そしてそれに付け込んで利用しようとしている集団がいるというわけですね。主人公くんたちは、ヒロインと協力しながら学園長の娘を救い、悪の組織を討伐します。キャラとしては母性溢れるものの年齢を気にする茉優先輩や、主人公くん大好きっ子なイモウトが良くできています。一方で、ひたすら貧乳いじりをされてしまうメインヒロインととてつもなく面倒くさい二条院羽月さんがいます。特に二条院羽月さんは作中でライターからセルフ言及されるくらいウザさを醸し出しており、一種のネタキャラと化しています。


 天都、八日なのか、言川紺、内藤自由『かりぐらし恋愛』 (ASa Project、2018-03-30)

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  • 感想・レビュー
    • ギャグゲー、キャラゲーで有名なアサプロの作品。故郷に帰って来たものの実家がボロボロで住めなくてピンチ!というところにオサナナジミーズが集結。リフォームの目途がつくまで各ヒロインの家に持ち回りでホームステイすることに。アサプロの作品といえばヒロインがぶっ飛んでいることで有名であり、本作もメインヒロインの黒髪ポニ子は比較的まともなのですが、アホの子、汚女、ヤンデレと揃い踏みです。また借りぐらしというからには各家庭の家庭環境も面白おかしく描かれそれが魅力的となっています。未亡人であることを強烈にアピールしてくるアホの子のママン。汚女母娘の世話をする苦労人の父親、そしてヤンデレ一家は家族全体がとち狂っています。この点で黒髪ポニ子だけアパートの一人暮らしなのでそこでもキャラ属性は半減してしまっているかのように感ぜられます。ワンルームでの共同生活も楽しいのですがね。生ごみは小まめにレジ袋で凍らせて臭いを防ぐとか。本作はギャグと笑いが持ち味なので、お気楽にプレイしたい時におススメです。


2018年4月

かずきふみ『9-nine- そらいろそらうたそらのおと』(ぱれっと、2018-04-27)

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  • 感想・レビュー
    • 学園異能バトル。和泉つばす先生の原画ゲー分割商法の2作目。1作目は分割商法にも関わらずシナリオが中途半端に終わるという投げっぷりを見せつけ戦犯となってしまいましたが、2作目は小奇麗にまとめてきました。テーマとなっていたのは「存在忘却の恐怖」。ノベルゲーでよく使用されるシナリオ記号の一つであり、自分の存在が消滅してしまうという危機感によりキャラの掘り下げを行うという手法です。主人公くんのイモウト;天ちゃんは異能を付与されるのですが、その代償として自分の存在が徐々に忘れ去られてしまうのですね。『ONE』でこの手法が有名になって以来、「存在忘却」は数々の作品で使われて、手垢に塗れたテーマとなっているので、如何にして差別化するかがメーカの腕の見せ所なのです。本作の場合は、やはり和泉つばす先生の原画が追い風となっている部分もあるのですが、明るくて可愛い天ちゃんのキャラ造形が評価をうなぎのぼりにさせています。率直に言って学園異能バトルは割とどうでもいい扱いですが、天ちゃんのキャラが素晴らしいので、明るいイモウトが好きな人はプレイしてみてはいかがでしょうか?

 

 

2018年5月

かずきふみ『君と目覚める幾つかの方法』 (Navel、2018-05-25)

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  • 感想・レビュー
    • 近未来ヒューマノイドもの。借金のカタに両足を切断され売り飛ばされた少女がメインヒロイン。シナリオは大きく分けて前半と後半に分類することができ、前半は人身売買、後半はヒューマノイド叛乱が扱われます。人身売買編では、メインヒロインの足を売り飛ばしたのは誰かということが焦点となります。解決方法が結構強引で、三重の罠を仕掛けるという車輪-とっつぁん展開です。「こちら側が相手に罠を張ったら、逆に相手の策略に嵌ってしまったけれど、実はそれこそが見せかけでした~」という展開ですね。後半はヒューマノイドの叛乱。作中では『ちょびっつ』のようにAIロボットが実際の人間のようになって主人をサポートしているという世界観です。これらのヒューマノイドが一地方都市で人類に叛乱を起こすのです。これに対して、実は主人公くんも事故に遭った際に脳みそがほぼ人工知能的なものになっていたことが明かされ、割とアッサリと叛乱は鎮圧されます。わりと荒い展開も多いですが、人工脳みそにされてしまったことに負い目がある主人公くんに対し、明るい幼馴染が全く気にせずに接してくれたり、足を切断され義肢を付けたメインヒロインが同じ機械の身体ですねと共感するところは結構グッとくる描写となっています。


桜井光、茗荷屋甚六(木村航)、禾刀郷『瞬旭のティルヒア ~What a Beautiful Dawn~』 (Liar-soft、2018-05-25)

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  • 感想・レビュー
    • 架空戦記スチームパンクで幕末・維新します。ピンヒロインモノでシーボルトの孫娘とされる人物が攻略対象です。日本の開国がペリー来航ではなく空中要塞の襲撃であったり、禁門の変でまさかの幕府軍負けゲーだったりとやりたい放題です。しかも戊辰戦争は列強諸国の新兵器実験場扱いとなり、幕府軍が負けそうになると、大型兵器が貸与され血で血を洗う争いとなります。このような中でヒロインは幕府軍の空中要塞:五稜郭の動力源とされてしまうのです。主人公くんがスチパンの力でヒロインを取り戻すところが見どころと言えるでしょうか?前半は主人公くんが歴史の流れに翻弄されるばかりであり、後半はトンデモバトルとなるので、歴史ものというよりもスチームパンクとして楽しむべきなのでしょうけれども、日本が舞台でスチームパンクというのも結構違和感があるかもしれません。


伊倉ナギサ『神待ちサナちゃん』 (Frill、2018-05-25)

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  • 感想・レビュー
    • 神待ち家出少女ゲー。2010年代後半、中高生の夜遊びが深刻化しつつありました。彼女らは股を開くことを代償に一宿一飯にあずかるのです。そんな神待ち家出少女を題材にしたのが本作品であり、一見すると抜きゲーのような印象を受けますが、家族を描いた泣きゲーとなっています。メインヒロインのサナちゃんは、厳しい躾と束縛が嫌になり家を飛び出してしまいます。あるある家族ゲー。子どもを思っているからこそ、教育ママになってしまい、それがエスカレートすると子どもを支配し言いなりにさせることが子どもの幸せと勘違いしちゃう展開ですね。子どもが思春期に入り第二の誕生よろしく自我が芽生えると親と対決することになり、この闘争を通して、母親は子どもを従属させることが幸せではないということを知るのです。類似したシナリオでは『野良猫ハート』の黒木未知シナリオが有名でしょうか?主人公くんは社会人の視点で、サナちゃんのイラストの才能を活かしてあげることになり、和解の手助けをします。主人公くんが一方的にサナちゃんを救うのではなく、主人公くんもまた家出少女を食い物にする背景を抱えており、それをサナちゃんが癒すというのが見所となっています。


2018年6月

魁、新島夕、ハサマ(玖保田桂吾、飯山満)『Summer Pockets』(Key、2018-06-29)

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  • 感想・レビュー
    • 今までに発売されたKEYの作品群で培われたテーマを昇華させた一種の集大成となっています。路線としては挫折系主人公×ぼっちヒロイン×崩壊家族×タイムリープ×過去改変モノ。メインヒロインしろはとその娘;うみがシナリオの主軸となっており、その他3ヒロインはグランドエンドに至るまでのパーツ扱いな側面も否めませんが、彼女らの活躍によりグランエンドが味わい深くなっているのもまた事実です。前半戦は部活でイキったにもかかわらず結果を残せず挫折し、私生活で問題を起こしてしまった高校生が、ヒロインたちとの交流を通して再生していく姿が描かれます。攻略ヒロインが神霊ぼっち少女、和泉つばす原画の巫女、付喪神、死霊というのもKey作品らしいですね!
    • 後半戦はタイムリープモノになります。主人公くんとしろはの娘のうみが主役に成り代わります。しろはうみを出生してまもなく死亡するのですが、妻を溺愛していた主人公くんはうみをニグレクトしてしまうのです。そのため父娘関係は荒んでおり、しろはの13回忌のことを主人公くんがうみに知らせずにしろはの故郷へ行ってしまうと、うみは現実に耐えきれなくなってしまうのです。こうして過去跳躍の異能に開眼したうみは、父親と母親の出会いの時間軸まで飛び父親の青春時代を垣間見ることになるのです。家庭ではニグレクトをすることになった父親が、青春時代においては人間味があり情に厚く素敵な人物であることを目の当たりにしていくうみ・・・。そんなうみは得られなかった両親の愛情を体験したくなります。ループを重ねるごとに幼児退行していったうみは自分の本音を晒せるようになり、主人公くん・しろは・うみで疑似家庭生活を形成するのです。
    • しかし、何度ループを繰り返しても、しろはの死を防ぐことができません。うみは自分が生まれなくてもいいからしろはの悲劇を防ぎたいと願うようになり、物語は終局部へと突入します。このうみの過去改変により主人公くんとしろはの出会いは起こらず、主人公くんは亡き祖母の蔵の整理を通して精神的成長を遂げることとなります。このままお別れエンドと思いきや、ここで「時を越えたチャーハンの想い出」が炸裂するのです。本作品はチャーハンが重要なシンボルとなっていました。うみの得意料理がチャーハンであり、主人公くんはうみのためにしろはからチャーハンの手ほどきを受け、さらに過去改変においてうみが幼少期のしろはにチャーハンを教えるという円環が成立するのでした。このチャーハン効果により主人公くんは今までの並行世界の感覚を感じ取り、再びしろはと結ばれることになったのでした。『MOON』、『ONE』、『Kanon』、『AIR』、『CLANNAD』と90年代後半~ゼロ年代半ばまでのKEY作品の初期作品をプレイした人々にとっては本作は本当に懐かしさを感じられるのではないでしょうか?


2018年7月

倉骨治人(骨折王子)、神近ゆう『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』 (Qruppo、2018-07-27)

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  • 感想・レビュー
    • ギャグゲーに見せかけた左派運動社会変革モノ。社会的マイノリティたちが自分たちの思想信条を貫くために、思想統制を図る権力者に立ち向かいます。町おこしに成功し経済的発展を遂げる中で、その手法を受けいられない人々が今、立ち上がるのです。昨今のLGBTがテーマとなっており、多様な価値観を認めず少数者を排斥することで全体としての統合を強めることの危険性を読み取ることができます。社会変革モノでは大衆を立ち上がらせるための「演説」がつきものです。『群青の空を越えて』、『車輪』、『シュヴァルツェスマーケン』などでも、大衆の漠然とした不満を結集し組織するための演説が見せ場となりましたが、本作でも真ヒロインの文乃が愛する島を鼓舞するために語り掛ける姿は心を打ちます。いつだって社会を変えるのは一部の特権階級の高邁な理想などではあく、社会に不満を抱く大衆の根源的なエネルギー!!革命が成功し、既存の支配階層がひっくり返るところはカタルシスを感じますね。と、言ってもノリはギャグゲーなので、ただ笑いを求めてプレイするだけでも十分に楽しめるエンターテイメントとなっていますので、そこはご安心ください。ちょっと突飛な設定でですが、決してタイトルゲーでも出オチゲーでもありませんので、是非プレイして頂きたいところ!!


浅生詠『Erewhon』 (CLOCKUP、2018-07-27)

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  • 感想・レビュー
    • 閉鎖的な鄙びた山村の狂気を描いた伝奇作品。逸脱したモラルが村を支配する中で、マレビト信仰よろしく外から訪れた主人公くんを通して村の謎を解き明かしていくことになります。そのため村の実態を描き出す個別√では攻略ヒロインたちが残忍な目にあうので、耐性が必要です。本作を語る際に外すことができないのが、カニバリズム。すなわち人肉食です。戦後文学において大岡昇平の『野火』や武田泰淳の『ひかりごけ』などでも扱われましたが、本作では民俗学要素が強く「太歳(タイサイ)」と呼ばれる不老長寿の肉片を巡り、人々が殺し合い復讐をし合うことになります。特に印象的だったのが、「太歳」を材料にして作られた人形である「姫様」を飢饉のときに食いつくしてしまった後の描写。太歳そのものはなくなってしまったけれども、太歳を食った子孫の中に太歳の能力を持つ子供が生まれることが判明したので、その子供たちの肉を食らって不老長寿を成し遂げていたという展開はゾクゾクきてしまいますね。最後は異界に取り込まれた主人公くんが過去改変を行うことで、呪われた村の解放が行われます。その点で正ヒロインは愛する村の歪まないカタチをみることができので、一種のハッピーエンドともいえるでしょう。


藤崎竜太『グリザイア:ファントムトリガー 05』(FrontWing、2018-07-27)

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  • 感想・レビュー
    • グリザイアの果実シリーズが流行ったので、作られたであろうと思われる後継作品。分割商法モノ。『ガンスリ』よろしく「軍需兵器少女」がファントムトリガーシリーズのウリとなっています。しかしながら果実シリーズは主人公:風見雄二さんの強烈な個性が魅力となっていたのに対し、ファントムトリガーシリーズでは主人公くんが殆ど活躍せず、凄惨な少女の軍事作戦を眺めることが主眼となるので、イマイチ盛り上がりに欠けてしまいます。もう少し主人公くんが活躍すればいいのですが、「ナンカ・スゴソウ ナ・オーラ」は醸し出しているのですが、それがメインイベントに絡んでこないので、フーンといった感じになってしまっているのです。また「05」では一応主人公くんの見せ場があり「おっ、ようやく活躍か!?」と思いきや、敵があまりにも噛ませ犬であり、スゲー雑にあしらわれてしまうのでガッカリ感は否めません。「05」のヒロインは個人的に一番惹かれていたダウナー系?ロシアン忍者だったのですが、ヒロインと主人公の絡みも薄く、もう少し丁寧に描いて欲しかったかもしれません。


2018年8月

緒乃ワサビ『未来ラジオと人工鳩』 (Laplacian、2018-08-31)

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  • 感想・レビュー
    • 体験版がクライマックスゲー。航空機事故でたった一人の生き残った主人公くんが事故の遺族と情交を深めていきます。近未来SFが入っており、人工鳩が世界的なネットワークを構築したものの、それが暴走し妨害電波となったという設定です。それ故、本作品のセカイでは無線ランやインターネットが使えない90年代以前の文明レベルとなっています。そのような中で主人公くんがラジオ放送を行うことが、タイトルにも入っているように一つのウリとなっており、未来からのメッセージがラジオから流れてくるというギミックが面白いのですが・・・なんと中盤以降ラジオ放送をする楽しみは全くなくなってしまうのです。分岐した個別√で得た情報を過去に飛ばすためにラジオが使われるというご都合主義の装置と堕してしまうのですね。そして不動の正ヒロインが存在しており、それ以外のヒロインは全てグランドエンドに至るまでのパーツに過ぎません。主人公くんは正ヒロインが人工鳩によって動いているため、人工鳩を止めて世界を救うか、人工鳩を止めずにヒロインとの時間を選ぶかで葛藤することになるのですが・・・。結局は主人公くんも補助脳であり、人工鳩によって生かされていることが判明します。こうして主人公くんは自分の身を捨てることで正ヒロインと意識統合し人工鳩問題を解決することになります。こうして主人公くんの犠牲により正ヒロインは救われてハッピーエンドとなります。


2018年9月

近江谷宥『ラズベリーキューブ』 (まどそふと、2018-09-28)

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  • 感想・レビュー
    • 埼玉県川越市ゲー。フツーの学園モノです。主人公くんは母子家庭出身であり、その家庭環境により荒んだ生活を送っていましたが、母を看取った際に握った枯れ果てた手により改心。これからはお天道様に恥じない生き方をすることを決意したのでした。こうして一日一善を掲げる元不良の主人公くんが、超個性的なヒロイン達と交流しながら人間性を深めていくことが本作の主眼となります。個性的な攻略ヒロインは4人で、借金抱えた大家の娘、農業ガール、ミリオタ喫茶のチョロイン、主人公くんを呪詛るガールです。大家の娘とミリオタのシナリオではヒロインよりもモブキャラたちが目立っており、アパートの変人たちやミリオタ喫茶に集うオッサンたちが主人公くんやヒロインを差し置いて大活躍します。個人的なおススメとしては、農業ガール。農業ガールは主人公くんを慕う仔犬系後輩でありキャラ性能が抜群にステキ。また農業属性が単なるファッションではなく、農業に対する深い愛情が垣間見ることができるのもポイント高いですね。夏休みに農業ガールの祖母の家に行って死期の近い祖母との交流や休耕田にしてしまうことの無念さはグッとくるものがあります。またみなとがカインズホームに行きたがるのも群馬県民としてはテンションが上がります。惜しむらくはホームセンターデートの描写がなかったこと。こんなにも行きたがって一緒に行ったんだから、ちゃんとホムセンデートの詳述やってくれよと無念でありません。


NYAON、和泉万夜『ケモノ娘の育て方』 (SWEET&TEA、2018-09-28)

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  • 感想・レビュー
    • 短い、短すぎる・・・低価格ゲーとはいえ共通√で終わる並みの短さ。せっかく『DMF』、『もしらば』、『さくらッセ』で主人公くんやヒロインの内面描写に長けたNYAONさんがネタゲーではない作品を作ってくれると狂喜乱舞していたのに・・・しかも原画がもとみやみつき先生なのに・・・。色々と惜しい作品でした。それでもNYAON先生の内面描写にはひかるものがありましたし、もとみやみつき先生の原画はとても可愛いです。主人公くんのことを分かってくれている幼馴染との夫婦生活や、純朴なケモノ耳少女を育てる展開にはグッとくるものがありました。個人的には主人公くんのバイト先であるコンビニの常連客;小番千尋さんがとても大好きで、何故攻略できないのかと悔やんだものです。作品の主題は、千尋が数年のトラウマを乗り越えて、ケモノ娘と百合友情エンドとなるので、ある程度スポットライトは当たって入るのですが・・・。良いライター、良い原画師を使っているのだから、きちんとした内容で出して欲しかったものよ・・・。個別√はまだですか?


2018年10月

姫ノ木あく、桐生恭丞『出会って5分は俺のもの! 時間停止と不可避な運命』 (Hulotte、2018-10-26)

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  • 感想・レビュー
    • ホスピスの従姉が並行世界の観測者となり主人公くんのバッドエンドを回避するために時間停止時計を付与する話。ネタゲー・ギャグゲーかと思いきや、思いのほかSF要素をしっかりやっていました。最初この並行世界の観測者の存在を読み間違えてしまい、てっきり主人公くんの娘が未来からやってきて父親の悲劇を改編すると思い込んでしまったんですよねー。『with ribbon』、『12の月のイヴ』、『サマポケ』がこのパターンだったので勘違いをしてしまったのでした。娘じゃなくて従姉だよ従姉!シナリオの主軸となるのが友達系ヒロインとイモウト。友達系ヒロインは主人公くんに惚れていたのですが、主人公くんは自分のせいでイモウトが事故に遭い運動できない身体になってしまったことを後悔していたことから、自分は人生を楽しんではならずイモウトに尽くすという呪縛にかかっていました。それゆえ正史では、大手製薬会社の社長令嬢でもあった友達系ヒロインを利用してイモウトの身体を治す研究を進めることとなり、夫婦生活は悲惨なものになってしまうのです。研究に成功し、イモウトの身体が治っても、既に時間は過ぎ去っておりイモウトの青春、つまりは大好きな兄と時を過ごすということは、主人公くんが既婚者になっていたため叶わず・・・誰もが不幸になってしまったという展開ですね。これを回避するために並行世界の観測者となった従姉が主人公くんのために奮闘するのです。勿論、全ヒロイン攻略後には主人公くんが従姉を救済するシナリオも用意されています。

 


2018年11月

冬茜トム、しげた(サブ)『アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-』 (きゃべつそふと、2018-11-30)

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  • 感想・レビュー
    • ループモノ。惨劇のクリスマスを回避するために12月を繰り返すはなし。物語の舞台は、芸術を育てるために用意された箱庭世界。1917年に世界が滅び、文明崩壊後のセカイを隔離された箱庭世界だけが生き残ったという設定です。勿論、外の世界はフツーに存在しています。この箱庭世界は第二次大戦中、現代美術から断絶し古典復興のために作られた芸術学校が元になっています。これを再現するために子供たちを隔離し、文字が無く絵だけで伝えるための環境を整えたのでした。主人公くんはこの異常な世界を壊すためにやってきた革命者なのですが、記憶が飛ばされていてフツーの生徒として学園に通うことになるわけです。本作のウリとなるギミックは二重ループと破壊の美学。主人公くんが何度やってもクリスマスに惨劇が起こってしまうのは、主人公くんたち以外にもループを繰り返している存在がいるからだったのです。そして滅びゆく世界にこそ美が現れるという破壊の美学を具現化するためクリスマスに箱庭世界を焼きつくそうとしたのでした。主人公くんは数多のループにより謎を解明し、破壊の美学を防いでハッピーエンドとなります。また本作では絵画史やアトリビュートが題材として利用されており、それもシナリオを味わい深いものとさせています。


 

2018年12月

ルクル『空に刻んだパラレログラム』 (ウグイスカグラ、2018-12-21)

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  • 感想・レビュー
    • 超熱血スポコン体育会系モノ。事故により競技者生命が断絶させられ、尚且つ愛する恋人を亡くした男が主人公くんです。挫折系主人公の復活劇ではなく、もう既にトラウマを乗り越えて指導者としての第二の人生を歩み始めており、勝利を目指すイモウトのために学園に舞い戻ってきます。しかしイモウトは幼馴染である死んだ主人公くんの恋人の意志を受け継ぐことを選び、一軍を蹴って二軍に降格してきます。主人公くんは転校生のスポコン少女が死んだ恋人に瓜二つだったこともあり、オサナナジミーズを再興し二軍からスタートしていくことになります。ここまでが体験版。製品版では、体験版の原動力となっていたスポコン少女の存在が希薄化していきます。敵チームの内面描写に詳述が割かれたことに加え、ほたる先輩とイモウトの葛藤がどこまでも引っ張られることになるからです。またヒロインとしても内面描写としてもほたる先輩が優遇されており、ダンスマカブル√の主役はほたる先輩が一歩リードしてるよなぁと思うことしきり。実際、ほたる先輩の壮絶な人生と1軍から転落する劣等感、そして主人公くんチームに入ったことによりトラウマを払拭して開眼するカタルシスは目を見張るものがあります。ほたる先輩が好きな人にはおススメですが、スポコン少女目当てで買った人は少し肩透かしだったかもしれません。あとイーリスは可哀想すぎます・・・

 


範乃秋晴『言の葉舞い散る夏の風鈴』(シルキーズプラスDOLCE、2018-12-21)

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    • 人気声優がスランプから脱出する話。メインヒロインの詞葉は、才能に依存して声優業をこなしてきましたが、見下していた後輩がメキメキと上達してきたことに焦りを感じ、狙っていた役をとられてしまったことからスランプに陥ってしまいます。これまで声優業に対して何の疑問もなくこなしてきただけに、自分がなぜ声優をするのかがわからなくなってしまったのです。そのため声優をやめてフツーの高校生に戻るのですが、声豚の主人公くんに見抜かれたことが縁となり、声優部に入部することになります。趣味程度なら自分の演技経験を仲間に伝えても良いと思って始めたのですが、なかなかどうして自分の感覚を言語化することができず、一苦労。それを翻訳して皆に伝えてくれるのが主人公くんの役割で、二人は二人三脚しながら各ヒロインを育てていきます。3ヒロイン攻略後、声優部の活動を通して主体的意志を獲得した詞葉は再チャレンジできる社会を要求!イチからまた声優を目指すことになります。ところがどっこい、予選を勝ち抜いていくと、詞葉は退職ではなく休職扱いであり、再び職場に復帰することになります。声優部の皆は戸惑いを覚えるのですが、最終的に声援を送り、最終選考で力を与え、見事オーディションに勝利するのでした。最後はみんなで思い出の作品を収録することとなり、3ヒロインが詞葉に感謝を伝え、将来みんなでプロの世界で競演しようねエンドとなります。

 


ハルモニー『宿星のガールフレンド2 -the destiny star of girlfriend-』 (mirai、2018-12-21)

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  • 感想・レビュー
    • ギャグゲーキャラゲーかんなぎれい先生の原画ゲーかと思いきやテキストがなかなかグッド。サクサク進むテンポの良さと小ネタに挟まれる蘊蓄が良い味出しています。分割商法の第二弾の攻略ヒロインはくっころ系ドイツ戦士です(※ただしくっころはない)。母性溢れる包容力と素直クールさがウリで、ヒロインとの共同生活が楽しく描かれていきます。しかしながら中盤はちょっとダレ気味であり、ヒロインの過去を描くために用意されたドイツでの妹分のキャラの登場はトートツさが否めません。さらに割とハイカルチャーな雰囲気を醸し出していたヒロインでしたが、スラム街出身であったことが明らかになります。スラムの子どものまとめ役であり、彼らの生活を救うために、魔神と契約して闇サイドに回ったことが語られます。終盤ではアッサリと光側に転属し、魔神と戦うための特訓パート。最後は主人公くんが元気玉を決めて大団円ハッピーエンドとなります。サクサク進んで気軽にイチャラブできる分、内面描写などはあまり掘り下げられないので一長一短かもしれません。手軽にイチャラブしたい時にはおススメです。