- 移民政策について
- 成人男性の送出形態
- 満蒙開拓青少年義勇軍の送出形態
- 満州移民の諸形態の中にあって、青少年義勇軍は、数え年16〜19歳(「徴兵適齢臨時特例」公布後は18歳)に設定された応募適齢に加え、入植までの手順においても特異な存在であった。各道府県で採用された応募者は、「満蒙開拓青少年義勇軍訓練所」(所在地に茨城県内原にちなみ内原訓練所とも称された)において軍隊に擬した指揮命令系統の貫徹する隊組織に編成され、2〜3カ月の訓練ののちに「満州国」に渡ることになっていた。そして、「満州国」内に散在する「満州開拓青年義勇隊訓練所」…における三年間の訓練を経た上で、おおむね訓練時の組織である中隊(300名)を基礎として入植することになっていた。また入植後は、「義勇隊開拓団」なる呼称をもって他と区別された。
- 概要
- 満州移民政策の破綻
- なぜ彼らは青少年義勇軍に応募せざるを得なかったのか
- <有用性の自己証明の発現>…自発性の発揮を期待する主体の保持する諸価値を承認し、自らのものとして内面化する行為を強く促すのは、法的な強制力や物理的な暴力を伴った強制力ではなく、自らの<有用性>を自らが立証してみせるように個々人に要求することではないかということである。それが動員の駆動力であり、青少年義勇軍の募集・送出過程においても作動したのではなかろうか。このような観点に立てば、応募を慫慂するさまざまな言説やそれに呼応した動機の表明によるよりも、数万人の青少年が応募した事態が了解し得るように思えるのである。
- 甘言に釣られた結果(pp.155-156) (『海外地邦人ノ言動ヨリ観タル国民教育資料(案)』(『十五年戦争極秘資料集』第一集、所収))
- 「開拓民二対スル日本内地並二現地二於ケル教育ハ国策移民トシテ国士的気概ヲ注入セルタメ徒二自ラヲ高カラシムルト共二原住満人民族ヲ蔑視スル観念ト化シ殴打暴行甚ダシキハ殺害スルニ至ラシメ而モ之ガ集団的ナル為往々ニシテ満人ヲシテ圧迫迫害セラルルガ如キ感ヲ与フルモノアリ」
- 「内地二於テ夢想シタル状況ト現地ノ状況異ナリアランカ之ヲ克服スルノ気概ナク渡満時ノ希望ト熱意ヲ失ヒ悲観スルト共二性粗暴化シ逃走スルモノ或ハ上司ニ改善方ヲ嘆願スルモノ又ハ之ガ要求ヲ容レラレザルニ憤慨シ上司ニ対シ暴行傷害ヲ加ヘ其ノ他犯罪非行ヲ敢行シ或ハ之ヲ誇大二父兄等二通信シ父兄ヲ始メ内地国民二対シ誤レル認識ヲ与へ依テ開拓政策ニ支障ヲ来スガ如キ所為アルモノアリ」
- 青少年義勇軍への応募を勧奨する餌(pp.176-177) (全国連合国民学校高等科校長会編『拓土教本』藤井書店、1940年(1941年訂正再版))
- 実務に従事することへの矜持の喚起
- 諸子は国民学校高等科児童である。世には初等科修了のみにて直ちにて社会に出る者もあれば、更に進んで中等学校、大学へと学問の道にいそしむ者もあるが、諸子はかかる上級学校進学者を羨むべきであろうか。否 決して羨む必要はない。何故なれば諸子は卒業後直ちに国家社会に実務を以て貢献せんとするものであり、実社会に出て、実務に従事するには高等科が最も適当であるからである。〔中略〕商業界、工業界を見よ。産業の戦士とうたはれて最も能率的に事業に従事し、最も多数を占めるものは我が高等科の卒業生である。更に又国家の干城として、戦場に於て第一線に出でて華々しく働き、最も重要なる地位にある軍人も亦概ね我が高等科卒業生である。実に愉快な事である。諸子の同窓は実社会のあらゆる方面に於てその中堅層を成して居る。〔中略〕諸子は世を左右し得ると云っても過言ではあるまい。諸子は我が国に於ける力ある存在であるといへよう。
- 青少年義勇軍=上級学校への進学と遜色のないものであることの強調
- 義勇軍は既に所謂移民でなく、正に世界無類の企であって、実は身体を錬磨し、知識技能を育成するもので、内地に於ける幼年学校と農学校を併せたる如き学校である。而もそれは総て官費であり、更に将来をも保証せられているのである。これ以外他に斯くの如く優遇せられたる学校があるであらうか。三年間の訓練を終へた青少年は現地服役を本則とされて居る。その光栄ある任務を果たし終ると夫々独立し、耕地十町歩、更に牧草地若干を所有する自作農として一戸を構へ、新天地の開拓士、五族協和の選士として邁進することとなるのである。〔中略〕多数の青少年の中には、訓練終了後また訓練所の職員として抜擢されて後続青少年の指導に当る者も出るであらう。更に又特技班として特殊の技能を修得せる者は、或は医師として、或は技師として、又は大学生として其の道に発展する者も出来よう。ともあれ、内地から優秀な青少年を選んで大陸に送り、更に厳格なる訓練を施して行くのであるから、多士誠に済々、やがて満州国の文化は義勇軍の手によって一層躍進の道を辿るであらう。
- 実務に従事することへの矜持の喚起