雑録

内田弘樹『ミリオタJK妹! 異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します?【立ち読み版】』の感想・レビュー

HoIのAAR読んでいるような感じ。粗製乱造された異世界転生モノの「お約束」をメタった上で現代兵装とドクトリンが輝きます。
近世国王主権期のファンタジー世界に異世界転生。ジリ貧消耗戦を軍事知識でひっくり返すことでカタルシスを得ることに成功。
近世常備軍に過ぎなかった状態からナポレオン時代の国民軍をすっ飛ばし世界大戦の総力戦体制で国民総動員をかけるところまで急速発展!
【立ち読み版】の伏線からするにおそらく戦闘担当のJK妹は旧ソ連圏で育成されたデザイナーチャイルドソルジャーかなんか。
妹は戦術戦略戦史担当のお兄ちゃんに拾われ反抗期を経て好感度MAXになるのだろう。製品版でその過去エピソードが描かれてたら買う。

「詰み」状態を強調しているわりには消耗戦要素は結構薄い。

  • 数々の異世界転生モノの世界設定をメタった上で軍事知識の目線から再解釈する所が見所!!!
    • 異世界転生モノの魅力といえば皆様はどのようなことを思い浮かべるでしょうか?やはりカタルシスを感じるのは、前近代ファンタジー世界を現代知識で変革するところにあるのではないでしょうか?しかし、その世界観や展開に対してツッコミどころ満載な気分になったことはありませんか?この作品はそんなお約束となっている異世界転生モノの「ツッコミどころ」や「お約束」をメタりながら軍事知識の観点から論じているところが趣き深いのです。異世界召喚されてソッコーで召喚したメインヒロインをぶっ倒したり、自衛隊から教えてもらいましたとかいいながら現状把握と勝利条件の設定をサクサク行ったり、よくある異世界転生モノだと火縄銃で軍事革命だけど水洗トイレだから硝石とれずにできないので悔しい!代替としてクロスボウだぜ!!だったりとか。そしてタイトルはJKイモウト推しですが、兵士担当のイモウトが銃火器ナチュラルに異種亜人族を倒しまくるよりも、内政パートで兄貴が作戦指揮を執るところの方が輝いています。さすがは兄さんです!と『さすおに』までメタる。
  • 総力戦体制の構築
    • 異世界設定としては複数の種族たちが世界統一を目指して抗争しているところからスタート。残された人類は滅亡寸前であり、竜族に包囲殲滅されているところに異世界召喚されます。指揮官殺しによる首狩りと煙幕により飛竜兵を退け軍事交渉へ。カマかけ度胸試し駆け引きによって停戦を引き出すとともに、ドローンによる偵察と交渉術によって相手の国力と外交状態を暴きます。どうやら竜族はエルフとの戦争が泥沼化したため主人公くんたち兄妹の軍事知識と強制連行するための奴隷労働力を欲しているとのこと。ここでファンタジー世界の戦争が日中戦争の泥沼化と資源獲得のための仏印進駐に比定されており結構好き。で、主人公くんは総力戦体制の構築を目指してメインヒロインの王女に国家総動員させ高度国防国家を作りあげていきます。王女演説による戦争目的の国民全体の共有は運命的平等性を前提とする国民主義イデオロギーを醸成していきます。まさに死に向かう運命共同体に属する「国民」統合、死を肯定するに足る情念を共有する者たちを集団としてまとめあげていきます。
  • 【立ち読み版】は第三章の途中のp.188まで(製品版のp.155まで)読めます。
    • 【立ち読み版】では主人公くんたちが伸び切った敵の補給路を遮断することで飛竜兵を使えなくさせ、空軍の危険性を取り除くところ(第三章)まで読むことができます。目次で思いっきりネタバレしているのですが、主人公くんたち大勝利の後、敵軍のターンでピンチになり、さらにそれを現代軍事知識&魔法ファンタジーでひっくりかえし、大勝利するような流れになっています。竜族の猛攻をどのように凌ぐのか、現代ミリタリ知識をどのように魔法と融合させるのか、そしてお兄ちゃん大好きイモウトの人格はどのようにして形成されたのか!?期待が持てそうな展開となっています。
  • お兄ちゃん大好きミリオタJK妹について
    • 本作品のイモウトは義妹設定なのですが、最初から好感度マックスであり、お兄ちゃんのこと好き好き大好き好き好きです。しかしながらお兄ちゃんのことをここまで好きになったのはどうやら凄惨な過去があったかのような伏線が張り巡らされています。軍事教練を受けて戦闘のエキスパートであることや、要旨把握能力に優れ淡々と情報をインプットできること、そして割と無表情キャラぽっかったりするようなところ。そして主人公くんとその父に紛争地域っぽいところで救い出されたかのような描写。これらのことから個人的にはイモウトがデザイナーチャイルドソルジャーとして育てられたのではないかと邪推してしまいます。きっとイモウトがこんなにもお兄ちゃん大好きになったのは数々のエピソードがあったのでしょう。傷ついた獣のように主人公くんに反発するイモウト、それでも愛情をもって包み込んでくれる的な流れ、最期にはイモウトの改心が待っているお涙頂戴展開、どのようにイモウト問題が処理されるのか、非常に楽しみで仕方がありません。