雑録

国史概説007 明治国家は天皇超政だし全然中央集権ではない件について

  • 今回から(近代)の講義の趣旨
    • 日本の近代史を構造的に理解するのに必要な知識について3回に分けてお話しする。
    • 明治国家がどのような理念として作られその実態はどうだったのか?
    • 判で押したように中央集権国家を目指してると習っているが我が国は全然中央集権国家ではない!
  • ニーチェのおはなし
    • → 近代人 約束を守る人 遅刻をする人間は文明人ではない

1)明治維新の理念と実態

1-1)理念:天皇親政=明治国家の正統性の根拠
  • 明治維新について
    • 明治維新とは 
    • 明治維新で成り立った国家を明治国家といっている 
      • 〜1945までの日本の国家のこと 大正も昭和初期も
    • 理念は二つ 
      • 1.天皇の位置づけ(天皇親政を理念としては掲げていた) 
      • 2.中央と地方の関係でいえば中央集権であったと
  • 天皇親政について
    • 天皇親政っていうのは何なのか? 親ってのはシタシク・ミズカラと読んでください。→天皇自らが政治を行うことである。
    • 明治国家は正統性の根拠に天皇親政を置く 正統性の根拠 何か行動するにあたって悪を根拠に行動するのは難しい これこれこうで正しいんだ!という拠り所が欲しい
    • それが正統性 国家の掲げる正統性 ウェーバー 3つの正統性 明治国家の場合 支配の正統性 伝統的支配 天皇が自らやるから権力を持っているんだ
    • その証拠は明治維新 別名は王政復古 王が自ら政治をやっていた政治に戻る 初代天皇 神武天皇のところまで戻る
    • 神武天皇は初代の天皇だが伝説上の天皇 実際はどんな政治をやったかは伝わっていない 自ら政治をおこなったことだけは残っている
    • なんでこういうことをするのか? → 明治国家 徳川幕府を倒してできた 徳川幕府以上の正統性が必要 
    • 幕府=仮の出張所という意味 当時の人々は幕府などと言っていない → 江戸時代の人間は幕府のことを公儀と呼んでいる
    • 幕府は「公儀」 おおやけのことがら 普通名詞が固有名詞に化けている 江戸時代は公のことがらそのもの 正統性そのもの まさに「おおやけ」のことをやっている存在
    • おおやけであった幕府にとってかわったことが正しいことなんだということを理解させねばならない
    • おおやけよりももっとすごいおおやけのことをもってこなければならない それが天皇だった
    • 神武天皇が始めたことだったのでものすごく正しいことなんだという説明
1-2)実態:天皇超政
  • 天皇超政について
    • しかし、天皇親政は理念でしかない。個別具体的な問題に天皇は関わらない これを突き詰めていくと象徴天皇制
    • 政治から超越した存在として振る舞っている それが天皇超政
    • 生方敏郎『明治大正見聞史』中央公論社、平成17年改版、26-27頁
      • 生方の母と祖母は御一新は薩長のクーデタだろうと見なしている 数え年15の明治天皇はほぼ関係ない
      • 明治天皇は見てただけ ばーさんたちの方がリアルに政治を見ていた 生方少年は明治政府の洗脳を受けており素晴らしいものだと思っている
    • 薩摩藩長州藩の出身者で明治政府は占められている 薩摩長州がこの国家を支配している 天皇はお飾りであった。 
    • これを天皇超政という
  • 一般論として 天皇には親政をさせてはならない
    • 政治とは、全国民を対象に価値の配分を行う事。全国民 権威的に価値を配分することが重要
    • 簡単に言えば 税金をとって福祉のかたちで再配分する 
    • 関係なく一方的に徴収される 2/15〜3/15確定申告 こんなにとるのかよというくらいとられる
      • 【雑談】源泉徴収 確定申告にいくと返ってくる 所得が250万以下の人は確定申告に行くと返ってくる
    • 誰に配るかというのは政治をやっていく人が一方的に配る 権威的配分 やってること自体は価値の権威的配分
    • だれがどう政治をやっても得をしたと思う人間と損をしたと思う人間がかならずでてくる 
    • あいつのせいで損したんだと思う人間が一定数でてくる → 民主政治では選挙をして交換させるというシステムになってる
  • 天皇親政を掲げて作られている この国がなぜ存在できるか? 
    • 天皇いるから だけど天皇が失敗したら交換ができない 
    • 政治はだれにやらせてもいつかかならず失敗する 天皇にやらせたら瑕がつく 国家の失敗そのものに結び付く
    • だとすれば天皇親政を掲げているけれども天皇超政でやらねばならない 矛盾を抱え込んでいる
  • 超政:藩閥政治 → なっとくできねぇ → 政党政治 国民が選んだ政治
    • 天皇親政を選んだ以上、政党政治を選択せざるを得なくなる
    • 【結論】天皇超政を納得させておこなうためにはどうすればよいかという試行錯誤の歴史であった!
1-EX)中央集権国家について
  • 理念:中央集権国家
    • 高校レベルでは国家ができれば中央集権を目指すと説明する明治政府
    • 江戸時代は幕藩体制国家 藩という小さい国家の集まりである連邦制のような国家が幕藩体制国家
    • 明治国家は幕藩体制のような連邦制はとらないよ 幕藩体制を否定するため王土王民論
    • → 天皇の土地・天皇の民 → 版籍奉還廃藩置県 → 明治国家中央集権の体制を整えましたというのがストーリー
  • 実態:地方の隅々まで行政権が行き届いたことがない
    • この国において国の権力が個人に到達したのはいつか
      • 今に於いてもまだ国家の権力が個人に直接届いているとは自信をもっていえない → 簡単にいうと人手が足りない
      • 監視監督して国民をコントロールすることができていない
      • 地方の隅々まで国家権力が行き届くのがおかしい
    • 幕府はしばしば全国を統治しているというが
      • 幕府がやっていたのはなんだったかというと、(1)軍事・警察→治安の維持、(2)徴税→年貢をとる これ以外のことは武士の政権においては無関心
      • 鎌倉幕府の成立年代の根拠:源頼朝が幕府を作る時の義経を追討するための日本国総追捕使(1185) 軍事警察権を持ったこと 全国どこでも徴税できるようになった
      • 軍事警察、徴税権が武士の本質 それ以外はプラスα 余力があるのでサービスでやってあげている 
      • 例)町奉行所で町人同士のトラブルを幕府でやってくれといってくる → そのうちに却下するようになる → 相対済令 民事訴訟は管轄外 刑事訴訟はやるよ警察権
      • これが武家政権700年の実態 国民に対してサービスする発想はない 軍事警察・徴税のみ
    • 日本には行政サービスを行う発想がなかった
      • 国民って現在だと大事なことばでしょ? しかし「国民」以前の一般的な人間は「民草」と呼ばれていた 多少死んでも生えてくるから大丈夫 漢文でいえば「億超」
      • 多少増減しても全然へーき 飢饉で死んでもそのうち増えるから大丈夫 福祉なんていう考え方はこの国には存在しない
      • 結局は、中央権力の及ぶ範囲内で軍事警察、徴税のみだった
  • 江戸時代までは日本史は京都と鎌倉の歴史 全国ほとんど関係ない

2)明治憲法の理念と実態

2-1)理念
2-2)実態
  • 詔勅
    • 詔:国民全体に出す
    • 勅:限られた人々に出す
  • 天皇はごく限られた役割を演じている
    • 天皇は名前を書くだけが仕事
    • 詔勅の本文は国務大臣
    • 名前を書いて権威づけてあげるためだけに天皇の役割があるんだ!
  • 国務大臣はどうやって決めるの?
    • → 美濃部がいうには、政党政治 国民の支持を背景に政治を行うんだ!
  • 当時の人々 
    • 小学校においては天皇主権説で義務教育を教える
    • 帝国大学まで進学した人々は美濃部の天皇機関説 官僚になると国家の運営は両者を忖度しながら行う
      • 明治時代の大学生はホントウにエリート 研究者か官僚か オザキホウサイは生命保険会社に就職するが帝大卒として初めて就職 東大出たのに生命保険会社(民間企業)かよ!
      • 面接試験「天皇は犯罪をおかしうるや否や?」=リトマス試験紙 不敬→穂積八束門下なんだね! 機関説で答えても合格 → 官僚の世界では主権説と機関説の使い分けが重要 
      • そんなことで果たしてうまくいくのか? 昭和になって破綻してしまう
  • 【エピソード】「官尊民卑」のはなし
    • 国立大学生と私立大学生の扱いが厳然として違った
    • 面接「官」について 「官」=国家公務員に使う 警察は警視庁捜査「員」 企業の面接で面接「官」に会うことはない
    • 国立大学は2004年までは教官 それ以降は国立大学法人 迂闊に面接「官」を使うと教養がないことを証明してしまう
    • 即戦力を求める企業になんて行かなくてよろしい ハタチそこそこの若造を「戦力」にする企業になどアブナイ 大卒が即戦力の企業などブラック

3)中央集権・地方自治の理念と実態

3-1)中央集権の模索
  • 連邦制国家の幕藩体制を否定するべく中央集権の理念を掲げるが・・・
    • 失敗する
3-2)中央集権の挫折
  • 中央の人数が足らないので、支配を末端まで行き届かせるのは物理的に不可能だった
3-3)地方自治制(1888)
  • 府県・郡・市町村 三段階に地方を分けて統治しましょう
    • 府県と郡は地方自治と言いながら そのトップは内務省の役人が赴任する 戦前は官選制度 中央から地方に出張する
      • 帝大卒業するとすぐに郡長、40代で知事になる。
    • 問題は市町村。一番みじかな単位。市町村長は地元で互選。地元の有力者が話し合って誰がやるか決める。
      • 地元の有力者とは?江戸時代において名主と呼ばれていた村の指導者たち。
      • 元名主たちの間で互選して市町村長を決める 市町村のことは元の名主たちで話し合いでやる 市町村は自治でやる
      • 郡までは役人を派遣してなんとかしよう → 郡は明治末年までは形骸化している → 府県と市町村で回っていく 
      • 府県は政府、市町村は地元 こういうスタイル つまり名目の上では中央集権だけれども、末端は江戸時代のシステムを横滑りさせて代行している
  • 戸籍 
    • 戸籍というのは基本的に市町村で代行する
    • 本来ならば法務省の仕事だが、全部市町村でやってくださいとなっている
    • 国の事業をやってもらっている → 国政委任事務 行政委任事務
3-4)中央集権へ?
  • マイナンバーカードは国から委託された市町村がやっている
    • 他の県に引っ越すと使えなくなる あくまで市町村が監督している 国の事業なのに・・・
    • 国家は国民を直接把握できていない
  • 年金トラブルがあるのもそのせい。
    • 市町村が1980年代までやっていた。だが社会保険庁ができて国が年金事業を吸い上げますとなったが、能力がなく大失敗!
  • 我が国がホントウの中央集権国家であるかどうか
    • 国はそもそも個人がどこに住んでいるか知らない。市町村にきかないと分からない。
    • そのため国が直接福祉をすることは難しい
  • 次回は内閣制度。3回目は陸海軍のはなし。これで明治国家の骨組みが理解できる