【演習B報告002】リサーチクエスチョンの設定「満洲への人口移動を促進させるための大衆的欲望の喚起について」

大きなテーマは「観光が日本人の満洲認識形成に果たした役割・機能とは何か?」
その中でも「なぜ人々は満洲へ観光しようとしたのか」(大衆的欲望の喚起)を扱う。

参考:大衆的欲望の喚起

満洲観光の先行研究

  • (1)満洲観光研究の始まり
    • 90年代以降、植民地研究において帝国史やポストコロニアリズムの研究が盛んになると、資本主義を経済史研究とは異なる関心から問題にするようになり、その一つとして観光の研究が始まった。【資料1】
    • 研究のほとんどが2000年代に入ってから公表されたものであり、日本統治地域における観光現象というテーマが2000年代に入るまで等閑視されていた 。
      • 満洲観光研究の最古のものは、荒山正彦「戦前期における朝鮮・満洲へのツーリズム:植民地観察の記録」『鮮満の旅』から」(『関西学院史学』26、1999、pp.1-22)
  • (2)先行研究の分類 【別表1】
    • 新聞社 
    • 旅行会社の出版物 
    • 旅行記録 
    • 観光資源 
    • 博覧会 
    • 修学旅行・学校教育 
    • 交通 
    • 戦時中における観光政策 
    • 戦後における満洲観光 
    • 旅行業者・ホテル業など
  • (3)先行研究の分析
    • 当時の観光の実態を解明するものが多く、なぜ人々が観光を行おうとしたのか(人口移動の原動力となったものは何か、観光を実施するにあたっての対満洲認識)に関する議論が不十分。
    • 観光の結果、人々が抱いていた従前の満洲認識がどのように改められたのか、または強化されたのかに関する考察の必要性。
    • 千住(2012)における先行研究への指摘
      • 内地と植民地を結ぶ船舶あるいは航空への言及があまり多く見られない
      • 観光の成立要件という観点からは、宿泊業や旅行斡旋業についての考察が不足
      • 観光関連メディアについて、交通業者以外が作成したメディアや紙媒体以外のメディアへの着目可能性
      • 団体旅行に関し、修学旅行や新聞社による取り組み以外での、その他の組織によって主催されたであろう団体旅行の存在
      • 植民地間での移動、植民地から内地への移動、他国からの日本帝国植民地への移動に関する議論

リサーチクエスチョン →「人々に欲望を喚起させる装置」

  • 「観光が日本人の満洲認識形成に果たした役割・機能とは何か?」
    • なぜ人々は満洲へ観光に赴いたのか/移動の原動力となった満洲認識はどのように形成されたのか。
      • →新聞社、旅行業者、鉄道会社の宣伝。
      • →旅行雑誌・紀行文・博覧会などの機能。
    • 満洲を実際に観光した人々の認識はどのように変わったのか/変わらなかったのか/強化されたのか
    • 植民地現地は日本の満洲認識によって、どのような対応をしたのか。
      • →現地社会での観光資源の創出、観光インフラの整備、見られる客体としての現地人など

人々に観光への欲望を喚起させる装置

これからの方針

  • (1)先行研究の分析・読み込みを続ける。
  • (2)一次史料の収集・読解を進める。
    • 満洲で発行された現地系の新聞 →『満洲日日新聞』など
    • 国内新聞社の外地版 → 『毎日新聞外地版』、『朝日新聞外地版』
    • JTB発行の雑誌 →『旅行満洲』(改題して『観光東亜』、『旅行雑誌』)
    • 満鉄から創刊された写真グラフ誌 → 『満洲グラフ』
    • 博覧会関係 →『近代日本博覧会資料集成《植民地博覧会 2 満洲》』(全5巻)