Summer Pockets 総評(「物語構造分析」、「本編で描かれなかったこと/ファンディスクで描いて欲しいこと」)

  • 目次
    • 1.物語構造分析
    • 2.本編で描かれなかったこと/ファンディスクで描いて欲しいこと/もしくは二次創作

1.物語構造分析

  • 概要
    • 冷え切った父子家庭に耐え兼ねた少女(うみ/羽未)が、父親(主人公くん)と母親(しろは)が交際を始めた西暦2000年の夏に過去跳躍し、両親の愛情を求めて永遠の夏休みを繰り返す話。
  • 個別√
    • 主人公くんは部活問題で挫折し傷心を抱えたまま、現実から逃げるようにして、祖母の遺品整理を名目に瀬戸内海の島へとやってきます。そこで、島民たちと交流しつつ、傷ついているからこそ出来るフラグ構築を展開していくのです。攻略対象は4人で鳴瀬しろは(「時の編み人」として翻弄され苦悩するぼっち巫女)、空門蒼(成仏できない死霊の導き手の巫女・植物人間状態の双子の姉持ち)、紬ヴェンダース(熊のヌイグルミの付喪神)、久島鴎(死んだホスピスが未練を残していたため現界した死霊)です。少女救済の典型例で、問題を抱える少女を救う過程で少女たちから肯定されることにより自己も救済されるというパターンが展開されます。
  • エンドレスエイト
    • しかしこの作品のギミックは永遠の夏のループ。現代から過去跳躍してきたうみの狙いは、両親と家族愛を育むことであり、それが満たされるまでは夏をループさせエンドレスエイトにさせてしまうのです。うみの過去跳躍の異能は記憶を代償にするため、使うたびに幼児退行していきます。するとどうでしょう。幼児退行により自分を曝け出せるようになったうみは、主人公くんに対して、もう逃げたくないと告げることができました。こうしてうみの願いにより、幸せな家族生活を現出させるため、疑似家族生活が営まれることになります。この疑似家族生活の描写が、サマポケの真骨頂であるといっても過言ではありません。3人でおりがみをして遊ぶ一連のイベントはグッときますね。両親を早くに亡くし、家族の愛情に飢えていたしろはだからこそ、うみに対して母親であることができるのです。幸せな時間を過ごす3人でしたが、過去跳躍の代償として幼児退行がさらに進んでいき、うみはどんどん赤ちゃんのようにまでなってしまいます。さらに御家芸である存在忘却であるONE展開が発動し、うみの存在が認識できないようになっていくのです。打ち上げ花火を見ながら最後の別離をするところは涙腺を緩ませます。この後、うみは意識体となり観測を行うだけの存在となります。主人公くんとしろはが幸福に過ごす様子を眺めていたのですが、なんとここでしろはが未来予知の異能を発動させ、うみの存在を思い出し、うみの出産とともに自己が死ぬ未来を見てしまうのです。そして予定調和として死ぬ。意識体となったうみが何度ループさせても、うみが観測している限り、しろはが死ぬ未来は変わらないのです。
  • 世界改編
    • こうしてうみは観測をやめ、しろはの幼少期に転生し、しろはが未来予知の異能を持たないように世界改編に挑むことになります。しかししろはと主人公くんが出会ってうみを産んだのは、しろはが異能のせいでぼっちになり、主人公くんと傷心を分かち合えたからです。しろはが異能を持たなければ、フラグ構築されないため、うみは生まれないことになります。それでもうみは自分の存在をかけて世界改編を行います。ここで家族を結び付けるのがチャーハン。しろはが主人公くんに伝授し、(現代の時間軸で主人公くんがうみに伝授し)、転生したうみが幼少期のしろはに伝授するという円環の理が生まれるのです。しろはがぼっちでない世界線では主人公くんとのフラグはへし折られるのですが、偶然主人公くんが食べたしろはのチャーハンが並行世界の世界線を想起させます。疑似家族生活の際に作ったおりがみの紙飛行機により既視感を刺激された主人公くんは、チャーハンの作り方を教えて、とフラグ構築に成功します。こうして、永遠の夏のループから解放され、しろはが死なないで主人公くんと結ばれる世界線が生まれて、ハッピーエンドを迎えます。

2.本編で描かれなかったこと/ファンディスクで描いて欲しいこと/もしくは二次創作

  • 因果律の克服編(世界改編前のしろはが運命に抗い無事にうみを出産する)
    • 「ALAKA TALE」では未来予知したしろはが、一人で出産による死の運命を変えようとして、無理がたたって死んでしまいます。しかし、個別しろは√でのテーマは、未来を予知しても、数多あるフラグ分岐により可能性は変えられるということだったはずです。故に、ここでしろはが一人で悩まず、周囲に相談できるようになる強さが欲しいと思ったのは私だけではないはず。個別しろは√では、灯篭流しのイベントで死んでしまうという未来予知をしましたが、その死を主人公くんや仲間たちとの社会関係資本で変えることができたのではありませんか。うみシナリオ(ALAKA TALE)の時には、灯篭流しイベントの際に、この社会関係資本が発動しませんでしたよね。だからこそ、出産イベントの際に、皆で立ち向かう大団円的展開を用意できるのではないかと思います。一人で悩んでないで、みんなに相談してよ!しろはちんルート爆誕なわけです。ぜひファンディスクで書いて欲しいなぁと。
  • 現代時間軸父子家庭編(ニグレクトした主人公くんとうみの和解)
    • そもそもの発端は、主人公くんがしろはを亡くしたショックで、うみをニグレクトしたことに根本要因があります。そのため、うみは過去跳躍したのですね。しかしうみはエンドレスエイトのループ世界の中で主人公くんがホントウは優しい人間であることを知りました。だからこそ、うみには母親と幸せな時間を送りたいという未練を果たしたら、現代に帰るという選択肢をとって欲しいのです。もちろん、しろはは死に、家族三人の幸せな生活という願望は満たせません。しかし、しろはの愛情を受けたため、その愛情で主人公くんにも接し、冷酷な主人公くんを溶かしてほしいのです。そうすれば、ループの過去を経験したからこそ、父との和解を果たせたという感動できそうな展開に持っていけるかと思われます。ここでもチャーハン√が活かせそうで、うみが永遠の夏のループの中で身に付けたチャーハンの味で、主人公くんをオープンハートさせて欲しいところです。
  • 蝶番の儀をちゃんと描写して欲しい人は挙手。
    • よく泣きゲーに閨房描写はいらないとか言われますが、抜き目的でなくとも必要な時もあるかと思います。典型例が本作の蝶番の儀。契りを交わしたとか一行で述べられてしまうと全然感慨が湧かない・・・。ほら、AIRだって抜けないけど、閨房描写がないと前後が断絶し、イキナリ観鈴ちんが消えてしまうので、何が何やらわからなくなってしまうでしょ?私は最初全年齢版やったのでこの置いてけぼり感が分かる。主人公くんとしろはちんが厳かに初夜の契りを交わすシーンがあれば、もっと人描描写の掘り下げができてキャラへの愛着も増すはず。サマポケエクスタシーの発売を心から待っています。
  • のみき√・鏡子さん√・静久√
    • のみきスゲー良いやつ。傷心であるとのウワサが立つ主人公くんを歓迎してくれますし。本編での攻略対象が異能持ち巫女×2、付喪神、死霊なので、一人くらいフツーの人間がいても良いかと思います。アレコレと世話を焼くうちに、主人公くんに情が移ったりとか。治安執行部に所属していることから島への郷土愛を発露させ、主人公くんに島民ライフに愛着を持たせたりとか。色々と展開できそうな気もします。あとはCLANNADの二次創作で、渚が死んだ後に、杏が汐の保育園の先生として岡崎家を家庭訪問し立ち直らせてくっつく薄い本があったのが思い起こされます。のみきもしろは死亡後に、主人公くんを支えるとかどうでしょうかね?
    • つづいて鏡子さん√。Kanonの秋子さんよろしく、おそらく世界観のギミックを全部知ってる鏡子さん。世界改編√では蝶の化身と化したしろはの母親から想いを託されていることが明記されていた鏡子さん。だからこそ、おそらく鏡子さんは主人公くんと密接に関わらなかったのでしょう。しかし、鏡子さんと一緒に蔵の整理を傷心を癒すってのもアリそうじゃないかしらん?
    • そして静久。紬との出会いの描写が薄っぺらいので、もうちょっと深く描写して欲しいと思ったのは私だけではないはず。ポジション的にはKanonの佐祐理さん、もしくは美汐、AIRの裏葉に近いので、それを生かせるのではないかと思います。紬の具現化が解けた後、一抹の寂しさを抱える二人が傷を舐め合うかのように結びつくのも結構よさげだと思うのです。本編でも静久自身が割と本気な感じで主人公くんと子作りして娘に紬と名付けるとか言ってますし。

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