Summer Pockets「Pocket」の感想・レビュー

悲劇の根本原因となる因果律を打破する為、しろはの幼少期時代に転生した羽未(七海)が世界改編に挑む話。
その方法とは両親を喪失したしろはを支え、異能を持たせないようにすること。
しかし、しろはが異能を持たないことは、それにより紡がれる可能性を消滅させることでもあった。
つまり、羽未が誕生したのはしろはの異能が紡いだ結果。それが無くなることは自分が消滅するということ。
こうして主人公くんとしろはが交際しない世界線が生まれるのだが…家族はチャーハンによって結ばれる。

すべての悲劇を救済するため、因果律を改編せよ!

  • 幼少期しろはを支えて異能保持を防ぐ
    • 「ALKA TALE」編のラストでエンドレスエイトという輪廻から解脱した羽未。どうやっても悲劇を繰り返してしまうのならば、根本的な因果律を変えてしまおうということになります。しろはの幼少期時代まで過去跳躍した羽未は記憶リセット状態で七海として転生します。この頃のしろはは両親を喪失してナーバスとなっていました。父親の死と母親の蒸発。無骨な祖父は愛情表現の方法が分からず、静まり返った毎日を送ってしました。
    • 鳴瀬家の異能に覚醒しないようにするためには、夏を楽しまなければなりません。七海(羽未)はしろはを元気づけるために、死んだ父親のチャーハン再現に取り組むことになります。七海(羽未)としろはは残されたレシピをもとに調理方法を研究し、材料を集めていくなかで、夏を楽しんでいくことになります。そして、見事!父親チャーハンを作り上げることができたのです。しろはのねらいはもう一つあり、このチャーハンが好きだった祖父に喜んでもらおうとしていたのです。しかし、祖父は逆に勝手に食堂を利用していたことを叱ってしまい、関係性は冷却してしまたのでした。以来、しろはは迷惑をかけないような子どもを演じるようになっていきます。そんなしろはを追いつめることになるのが灯篭づくりでした。死者の魂の話は父親を亡くしたしろはにとっては余りにも酷なものでした。それ故、しろはは異能の獲得を願ってしまうのです。これではまたもやループに入ってしまうのか!?この時、七海(羽未)は過去を思い出し、最後の力を振り絞り、異能獲得をやめさせたのでした。
    • 羽未はしろはが異能を持っていたからこそ主人公くんと結ばれて生れた子どもでした。プロローグにおける傷ついた二羽の鳥が示していたように、傷心の主人公くんとしろはだからこそ、お互いを理解できたのです。もし、しろはが異能を失ってしまったら、今度は逆に異能があったからこそ紡がれた人間関係を喪失させてしまうことになります。ここでしろはも並行世界にアクセスし、羽未√のことを知って、別離を拒もうとするのです。それでも、未来というものは、本来さまざまな可能性があり、いくらでもフラグ分岐できるもの、一つの事象に確定させてはならないと言わんばかりに、しろはを因果から解放するのでした。

  • しろはと主人公くんを繋ぐのはチャーハン
    • そして時間は流れ、主人公くんが島にやってくることに。かつての世界線では、しろはは自分の異能によりぼっちとなっていたので、異能がなければフツーに島民ズと仲良くなっています。同級生である蒼や藍とも良い感じの仲間。勿論、主人公くんと親しくなることもありません。しろはと主人公くんが出会いながらも、擦れ違うイベントCGは切なさ炸裂してしまいますね!
    • この世界線での主人公くんは、今までの世界線では一切やらなかった遺品整理に没頭することになるので、島民との交流も殆どありませんでした。このままフラグが発生せず、スルーされてしまうのでしょうか?いいえ、ここでの鍵となるのは、チャーハンだったのです。七海(羽未)から授かったチャーハンスキルは二人を結び付けることになります。ある晩、食堂に入った主人公くんがしろはにおススメを聞くと、メニューにはないチャーハンを提示され、それを注文することになります。これが二人を繋いだのです。
    • 主人公くんは熱心に遺品整理に励んだ結果、見事、蔵が片付くことになります。ここで祖母の家の蔵が「ポケット」のメタファーとしてとらえられ、一時的に思い出を保管していく場所と位置付けられます。蔵の中のものは結局、処分されることになりますが、雑然と捨てられるのではなく、整理体系化されてから秩序を以て処分される必要性を、鏡子さんから教わります。そしてこの時、主人公くんは別の世界線で作った羽未の虹色紙飛行機を発見するのです。これがしろはとの関係性を構築するためのトリガーとなります。
    • 遺品整理も片付き、夏休みも終わった主人公くんは、島民たちとも交流をせず、地元へ戻ることになります。サマポケ(完)!・・・となりかけるのですが、ここで最後に船からしろはを見かけることになります。そして虹色紙飛行機も効果もあってか、無意識の衝動に駆られるのです。いてもたってもいられなくなった主人公くんは、思わず船から飛び降ります。それを見て驚愕するしろは。だって二人の中には何もないのだもの。しかし上述のように、ここでチャーハンが発動。主人公くんは食堂で食べたチャーハンが忘れられないので、作り方を教えて欲しいとフラグ構築するのです。二人にとってのチャーハンはただのチャーハンではないのです。エンドレスエイトのなかで何度も繰り返され、七海がしろはに伝承し、家族を結び付けた重要な料理だったのですね。体験版の頃から、羽未がひたすらチャーハンに血肉をあげていたのも、全てはこの時の為!!これから、しろはと主人公くんは、新たな未来を歩んでいくでしょう。チャーハンエンド!!


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