地理歴史科(歴史総合・地理総合・日本史探究・世界史探究・地理探究)の教科書採択数・占有率の変遷(2022-2024)

2022年度の高1から新課程になり地理歴史科は総合科目と探究科目に分化した。それまでは世界史A/B、日本史A/B、地理A/Bのうち世界史が共通必修であり、選択必修として日本史か地理かを選ぶという形式であった。2022年度の高1からは歴史総合・地理総合が共通必修となり、探究系統は選択科目となったのである。2024年度は総合科目3年目、探究科目2年目を迎える。

探究系統は選択であるため学校ごとの履修方法に違いが見られるので一概には言えないが、教科書の採択数からある程度は推測できる。日本史を選択する場合が一番多く、次いで世界史、地理の順番となっている。日本史探究・世界史探究は歴史学的見地・史資料の取り扱い・歴史的思考力がどの程度国立二次や私大に反映されるかで、今後の授業実践が大きく変わってくると言えよう。また地理についてはそもそも論として以下の様な問題があった。旧課程の地理はセンター地理・国立二次地理論述・私大地理と出題傾向が全く異なる試験形式であった。理系がセンター地理を取り、東大地歴2科目めとして地理論述が選ばれ、他は殆ど選択者がいないという状況であったのである。この問題が探究になってどう変わるかに注目が集まっている。

高校生は探究科目で地理・日本史・世界史のどれを選択するか~教科書採択数から窺う~
理系が探究科目を履修しなくても良い事から圧倒的に日本史の採択数が多いことが分かる。
 ※1.探究科目は2023年度から開始
 ※2.これはあくまでも教科書の採択数と占有率であり、選択者数の数値ではない
 ※3.占有率は四捨五入されているため、必ずしも合計の数値が100とはならない。

探究科目全体の動向


以下では各科目の出版社の年度ごとの採択数・占有率の変遷について概観する。
また占有率は四捨五入されているため、必ずしも合計の数値が100とはならない。

【目次】

歴史総合

歴史総合

歴史総合は2022年度から始まり、2024年度で3年目を迎える。2024年度の歴史総合の採択の特徴は山川の1位からの転落である。これまで山川の『歴史総合 近代から現代へ』は2022年度、2023年度と共に1位をキープしていた。だが2024年度は2位に転落し、帝国書院の『明解 歴史総合』に1位を明け渡した。またこれまで3位の座につけていた山川のもう一つの教科書『現代の歴史総合』も4位に下がった。こうして歴史総合は帝国・山川・東書がトップ3を占めることとなった。占有率を見てみると大きな差が生じず、ほぼ横並びな状態となっている。

地理総合

地理総合

地理総合は2022年度から始まり、2024年度で3年目を迎える。最初は6冊のスタートであったが、翌年に帝国がもう1冊発行し、2023年から7冊態勢となった。地理は帝国が1強であり、『高等学校 新地理総合』が過半数を占めて来た。しかし2024年度は5割を割ってしまうのだが、これには理由がある。2023年度に新たに帝国が発行したもう1冊の『高校生の地理総合』が占有率を伸ばしているのである。2位につける東書は2割には届かないが常に16%以上を維持している。地理専門の二宮は第一や実教よりは上についている。

日本史探究

日本史探究

2023年度から始まった日本史探究は2年目を迎える。特筆すべきは山川の『詳説日本史』の占有率の低下であり、2023年度は64.3%と凄まじいシェア率を誇ったが、2024年度は10.8%も低下。5割弱にまで減少した。一方で同じ山川の『高校日本史』が躍進していることも見逃せない。実教の『日本史探究』を抜いて、3位に躍り出ている。探究学習により歴史教育の転換が起こり、これまでの知識偏重から歴史学的知見や史資料の取り扱い、歴史的思考力が重視されるようになり、『詳説日本史』頼みの授業では通用しなくなっていることが窺われる。

cf.飛躍を見せた山川の『高校日本史』の公式ページ

世界史探究

世界史探究

2023年度から始まった世界史探究は2年目を迎える。日本史で山川の『詳説日本史』が占有率を低下させていたが、『詳説世界史』も同様であり、6割近かった占有率が4割半ばまで減少した。そしてこれもまた日本史と同様に山川の「高校」シリーズが躍進し、『高校世界史』が3位に躍り出ている。僅かな差しかないとはいえ、実教だけでなく帝国まで抜き去っていることが特筆されるべき事項である。実直な記述がウリの山川の詳説、社会経済史に強い東書、グローバルヒストリーの帝国という3系統の一角に、山川の第2派が食い込んで来ているのだ。

cf.飛躍を見せた『高校世界史』の公式ページ

地理探究

地理探究

2023年度から始まった地理探究は2年目を迎える。3冊しか教科書が発行されていない地理探究。日本の高校において地理教育が軽んじられているとされる理由の一つである。2024年度は2023年度に比べて東書の占有率の増加が目立つ。帝国は占有率を下げてはいるが6割以上を維持している。二宮はやや微減といった所である。