雑録

埼玉県秩父アニメ『あの花』を題材にした地理教科書!~二宮書店の『基本地理A』におけるコンテンツツーリズムと教科教育の融合~

二宮書店の『基本地理A』(2016年3月18日検定合格)に掲載されている「アニメを通して地図を読もう」(170~171頁)という題材が話題になっている。作品としては埼玉県秩父市を舞台とした『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が取り上げられており、GISを用いた地図技能の習得が目的とされている。

目次

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二宮書店におけるコンテンツツーリズムを利用した地理教育への取り組み

コンテンツツーリズムを利用した地理教育は二宮書店の特徴となっている。文部科学省に提出されている「教科書編纂趣意書」や公式webサイトの「編集にあたって力を入れた点」、教科書紹介パンフレットにおけるアピールポイントの4番目「バラエティに富んだ地図学習」の箇所で、「アニメを利用した地理教育」の意図に関する記述を読むことができる。また二宮書店が発行している『地理月報』においても、『あの花』を題材にした地理学習に関する論考が掲載されている(秋本弘章「『聖地巡礼』と地理教育 〜「あの花」を事例に〜」、『地理月報』549号、二宮書店、2017年)。ちなみに埼玉県は県庁の観光課がアニメツーリズムに力を入れており『あの花』は「秩父三部作」として埼玉観光の観光資源の一つとなっている(「「アニメの力を信じて!埼玉県観光課の挑戦」」)


(1)文科省に提出された教科書編纂趣意書より

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出典:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/tenji/1371187.htm


(2)公式webでの「編集にあたって力を入れた点」より

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出典:http://www.ninomiyashoten.co.jp/item/978-4-8176-0395-1


(3)教科書紹介パンフレットにおけるアピールポイントの4番目「バラエティに富んだ地図学習」より

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出典:http://www.ninomiyashoten.co.jp/wp-content/uploads/A309_pamph_2020.pdf


2019年度における高校地理の教科書の採択数 (出典:『内外教育』第6726号、時事通信社、2019年2月5日)

2019年度のA・B含めた全地理の教科書の部数は67万1404冊。そのうち地理Aは59.3%。
二宮書店の『基本地理A』の占有率は地理Aのなかでは9.7%、地理A・B全体では約5.7%である。
残念ながら多いとは言えないのが現状である。

2019年度地理A占有率

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2019年度地理B占有率

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2019年度地図占有率

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雑感

  • コンテンツ産業と観光学と教科教育の間
    • 学校の勉強が苦行で、大学受験にパスするための手段にしか過ぎないというのは、あまりにも無益な事ではないか。本来、勉強というのは楽しいものであり、知らないことを知ったりモノの見方を深めたりすることは知的な歓びがある。
    • 単純にコンテンツ産業を消費するだけではなく、それを知的好奇心につなげる楽しみを教えられるのが教科教育の機能ともいえよう。そのためには、コンテンツ産業を深く理解していると共に、それを体系的な教科教育の中に位置づけることができ、さらに学校現場でその教材を通して授業を展開できる人材が必要かと思われる。