ハイスコアガール「ROUND10」の感想・レビュー

1995年6月。挫折回。第一志望に落ち、好きな女に引け目を感じ、さらにはゲームでもフルボッコ
挫折から立ち上がるという構図はどの作品でも大好物なのですが、本作も屈指の名場面となっています。
劣等意識に駆られ諦めかけるハルオが、ゲームキャラから発破をかけられるシーンがグッときますね。
「若いくせに少しくらいの敗北でもう挫折か・・・!!」→「10年早いんだよぉ!!」
しかも大野さんと同じ名前のキャラ「アキラ」による励ましなのがまた憎い演出ですね!

まだまだお前には希望(クレジット)が残されている!!コンテニューしろハルオ!!立ち上がれ!!


  • 挫折回はわりと好き
    • 物語のパターンの中でも結構好きなのが挫折展開。「主人公が劣等意識に苛まれ諦念や絶望を感じ煩悶しながらも、再び人生を賭けてみようと決意する」という泥臭さは人の心を打ちます。我らがハルオも大きな挫折を経験することになりました。好いた女と一緒に居たいと第一志望の高校を受けるもあえなく不合格。一緒に居たいと願った分、反動も大きく、逆に引け目に感じて避けてしまうという惨めさよ。さらには格下だと思っていた日高さんにフルボッコにされる始末。小学生の頃から劣等分子扱いをされていたハルオにとって唯一の支え・プライドであったゲームにおいて、その自信が打ち砕かれたことは、アイデンティティ崩壊の危機ともいえるべきものでした。ハルオが自分をみじめに感じる場面が本当にグッド。哀愁が漂い、共感してしまうことしきり。打ちひしがれながら街を放浪するハルオが、偶然大野さんを見かけても、隠れてしまう描写が破壊力バツグンとなっております!おススメ!!


  • ハルオに発破をかけるのがバーチャファイターの「アキラ」というのが憎い演出!
    • 全てを諦め家庭用ゲーム機に徹しようとするハルオ。長年連れ添ったガイルさんがハルオを励ます役割だとしたら、アキラはハルオを奮起させる機能を持たされています。このコンテニュー画面の表現が実に秀逸。やられ顔のガイルさんのカウントダウン画像から、たまたまオシッコをしようと起き上がったハルオに、アキラが技を仕掛けるという怒濤の展開。「若いくせに少しくらいの敗北でもう挫折か・・・!!」→「10年早いんだよぉ!!」ゲームにおける名セリフを、シナリオの中に実にうまく組み込んであり、それが主人公を挫折から立ち上がらせるという重要な要素に使ってあってもうたまりませんね。昔、心が砕け散ってしまいそうになった時、何度もこの場面に救われたんだよなぁと懐かしくなりました。これがなければ、私がくたばるのはもう少し早くなっていたことでしょう。現在は「心という器はひとたび、ひとたびひびが入れば二度とは、二度とは、」状態ですが。


  • 宮尾「日高はああ見えてドSだったんだなぁ…」
    • 大野さんルートまっしぐらの中、シナリオ展開のための狂言回しとなる愛すべきキャラクター日高さん。高校生編でも物語を動かす要素となっております。ハルオに挫折を与える一方で、奮起させるきっかけともなるのが日高さん。あくまでもハルオは大野さんと対等でいたいと思っており、大野さんと同じ高校に落ちたことを引け目に感じてしまい、会うことがためらわれていたわけです。ハルオが大野さんに会うためには鍛錬を積み、同じ舞台に立たなければならないのです。宮尾をして「常人じゃ理解できない間柄なんだな」と言わしめます。そんなハルオの前に日高さんが立ちはだかります。肩を並べて対戦をしながら中学生時代の想い出をペラペラと語りつつハルオをフルボッコにしていく始末。どんな格ゲーで挑んでも日高さんにはかてません。それどころか、ハルオの弱みをキャッキャと嬉しそうにほじくって楽しそうな様子。「もしかして「イー・アル・カンフー」からやり直した方がよくて?」というセリフは、かつてのハルオの発言への意趣返しとなっており、ハルオを逃走させたのでした。恋敵キャラとしての宿命とはいえ「男を振り向かせるための恋愛の手段としてゲームをしている」日高さんが、「ゲームを人生としている」ハルオをフルボッコにしたところに意味があるのですね。

漫画版名シーン(1) 挫折からの奮起

漫画版名シーン(2) 日高さんはドS