ハイスコアガール「ROUND11」の感想・レビュー

1995年6〜7月。厳格な家の躾に鬱屈する大野さんを救い出すのは、いつだってハルオ。
疎遠と親密を繰り返しながらも、大野さんのピンチの時には必ず駆け付けるハルオが良い味出してます。
ハルオが自己のプライドに拘った挙句、空回りして一人相撲となるパターンを後悔して涙ぐむシーンもステキ。
終局部は、小学生編と同じくゲームキャラに導かれ、ついに家出した大野さんを見つけ出します。
今回もエンディングアレンジがすごくグッとくる演出。大野さんにとってハルオがどんな存在かが表現されています。

幼馴染モノの最高峰 疎遠と親密を繰り返しながら長い時間を重ねてフラグ構築


  • 大野さん、精神的に追い詰められる
    • 階級格差のある大野さんとハルオがくっつくには、精神崩壊する大野さんとゲームによりそれを救済するハルオという構図が不可欠です。では、高校編では何がどのように大野さんが鬱屈してしまうのでしょうか。小学校篇では厳格な家の躾けだけでしたが、今回は恋のライバルにより揺さぶりが入ります。大野さんとハルオの関係性はとても尊いものなので、二人だけの世界ではそれ以上はナカナカ深まらないのです。そのために、進展を加速させるための装置が必要となって、それが日高さんの役割となっています。それ故、日高さんはゲームという崇高な場に恋愛を持ち込み、大野さんにプレッシャーをかけることになります。はたから見ていると、まるで日高さんが男を寝取るために精神的圧迫をかけているようですね!!大野さんの存在がハルオを引け目に感じさせ劣等感を抱かせるので可哀想であるとまで言ってのけます。
    • おそらく小学生編が一番面白いとされる理由がコレ。小学生編では大野さんとゲームを楽しむという趣旨だったのに対し、高校生編ではゲーム要素があくまでもラブコメするための道具と堕してしまうからなのでしょうね。まぁ大野さんとひたすらゲームをするだけでは話が進まないので致し方ないところではあります。
    • 大野さんはハルオに依存しているからこそ、この日高さんの言葉は痛恨の一撃となるのでした。ハルオと会えず、自分が愛する男に好意を寄せる女子から自己の存在が邪魔だと宣告され、大野さんの精神はもう崩壊寸前。そこへきて、家での躾けが厳しさを増し、ついにはゲーセンに行くことすら制限された大野さんは家出をしてしまうのでした。


  • ハルオの大野さんへの複雑な想い(劣等感・対等意識・プライド・空回り・一人相撲・救済)
    • 大野さんと一緒にいたいと思い偏差値の高い高校を受けるも落ちたハルオは劣等感。受験日の爺やの車の中での一大ビッグイベントがあった反動で、引け目に感じてしまいます。好きな女とは対等でいたいというチンケなプライド。修行などせずさっさと大野さんとゲームで絡めばよかったという後悔。大野さんと会えなくなって初めて、ハルオは自己の不甲斐なさを感じます。中学生編でもそうでしたが、ハルオが涙ぐむシーンは本当にグッときますね。弁当作りのバイトをしながらも、大野さんと会えない切なさや、自分の惨めさを思い知る場面は必見です。
    • ハルオが大野さんの存在により感情を揺さぶられる中、大野さん家出のお知らせ。爺やに要請され大野さんを探しに行くもなかなか見つからず、ここでも煩悶することに。修行をして時間を無駄にした後悔、でしゃばりと思われるかもしれないという危惧、大野家の事情をどうすることもできない自分の無力感、さまざまな思いがハルオによぎります。しかしここで、大野さんにとってハルオは唯一の友達!という爺やの言葉がハルオを奮起させます。夜の川崎を徘徊しながら、ゲームキャラに支えられ、ついに大野さんを見つけ出す展開は、小学生編のような動的な流れではないものの、静的な落ち着きがあってこれまら味わい深くなっています。ラストシーンの演出がこれまた巧みであり、救済者としてのハルオとそれを求める大野さんの関係がエンディングとともに提示されるのです。ああ、このエンディング曲は大野さんの心情をいかんなく発揮しているんだなぁと。最終回はどこまでやるのだろうかと、気になります。


原作名シーン ハルオの煩悶