Contents Tourism Planning & Management 2019 (016)【講演】聖地巡礼盛り上がっているけれどもアニメの業者には利益がもたらされていない

今回のコンテンツツーリズム論演習はコンテンツツーリズムとカネの話でした。

  • 問題提起と結論と今後の課題
    • 問題提起:聖地巡礼が盛り上がっているけれどもアニメの業者には利益がもたらされていない。
    • 結論:確かに経済的利益はもたらされていないので、貨幣価値の回収は難しい。だが視点を変えれば、聖地巡礼はブランド価値をもたらしている。
    • 今後の課題:ブランド価値がもたらされているが、指標化できていないので、それを明確に示す必要がある。

序論 アニメ研究について

  • 日本アニメーション学会について 
    • 日本国内でアニメを研究する学会はこれまで無かった。産業という切り口から研究するケースはなかった。
  • アニメ産業とは何か?の定義付け
    • アニメ産業はスタジオが受注して作られるアニメ作品そのものか、それともIPから生まれる派生商品も含むのか。産業規模が大きく違う。専門家の人にどこまでアニメ産業かと聞くと答えられないのが現状。アニメ産業とは何かという定義をしなければならない。
  • 講師の方の研究テーマ
    • 人気が収益につながりにくいアニメコンテンツ
    • アニメとネット・ソーシャルメディアの関係を探る 
    • メディアの伝播力をマネタイズにつなげる方策 
    • アニメの労働環境の過酷さ 非正規雇用出来高払いなので月10万しか稼げない 監督の給料もリーマン並み
  • 講師の方が修論を書いた時
    • ネットでアニメを見てもらう黎明期だった
    • ウィンドウコントロール どのサイトで動画を見てもらうか、どこで課金するかをインタビューしていた

本論 コンテンツツーリズムは製作会社に利益をもたらしていない

  • 今はコンテンツと地域を特に研究している
  • 盛り上がる聖地巡礼
    • ゆるキャン△ 消費総額は8000万 これを多く見るか、少なく見るか
    • 聖地巡礼の典型的なストーリー:地方に遠方からたくさんの客がやってくるので交通と宿泊で儲かる・・・だがキャンプはキャンプ場にカネを支払っても旅館業にはカネが落ちない
    • 聖地になった場所が潰れる問題 
    • 著作権者・現地にとって経済的利益が必要
  • 産業的観点からの課題
    • 1.製作者の構造が複雑で外部から行動原理が分かりに行くい
    • 2.アニメコンテンツの展開の時間軸(ウィンドウ展開)と地域が望む時間軸が異なっている。
    • 3.3者での文脈の共有の難易度が高い。
    • 4.そもそもの収益が高いとは言えない。
  • 製作委員会方式
    • 1クール13話で2億円以上の資金が必要
    • そもそもの仕組みとして聖地巡礼から利益を吸い上げる仕組みになっていなかったのに、その仕組みを変えないまま聖地巡礼から利益を取ろうとしてもできないのでは?
  • 製作委員会は民法上の任意組合
    • 〇〇製作委員会にはどの企業が関わっているかを知ることができない
    • 産業側から聖地巡礼を研究しようとしても難しいものがある
    • 研究をする際にも幹事会社が分からない。出資比率も分からない。
    • 取材をするにはクレジットを見て、SNSで繋がり、コネで調査する。第三者的な検証を行うのは難しい。
  • 講師の方は製作委員会モデルそのものを否定しない
    • 聖地に選ばれた地域のプロモーション効果などについて以前ほどはネガティブに考えられていないため
  • コンテンツ産業研究での課題
    • コンテンツツーリズムの失敗事例で関係者は口を割らない
  • 製作委員会は「儲けたい」が命! 
    • 制作→クリエイティブの話 制作者は実際に現場でアニメを作っている人々。この人たちは人気作を自分の会社で作って名を挙げたいので製作委員会から不当に安い値段でアニメの制作を引き受けてしまう。
    • 製作→カネの話 アニメを作るためにカネを出す人達 アニメごとに離散集合する。
  • アニメ会社は儲けたい。しかも長期ではなく短期決戦モデル
    • そのため地域と足並みが揃わない
  • 地域展開を阻む要素
    • 委員会が準備にリソースを割けない
    • 作成と宣伝が最優先
    • 情報解禁できない
    • 放送前に提供できる情報や版権素材が少ない
    • 地域が盛り上がることには委員会の構成社は次の作品にシフトしている。
  • 製作者への経済効果は?
    • 直接的な経済利益はないが、何らかの影響はある
    • しかし定量化・算出する術がない。
  • ガルパンの事例は製作委員会の行動原理と外れた特殊事例
    • 彼等は自分たちの身と時間を削ってコソコソ会議なるものをやったので成功した。労働とその代価としての賃金という資本主義の原理からは外れている。
  • コンテキストの重要性
    • ヴァーチャルとリアル
    • のうりんポスター事件に見る「外部集団」とのコンテクストの共有

アニメは大衆娯楽で低俗だという意識は払拭しにくいのでは?

  • 地域魅力創造サイクル
    • 発見(異化)→確認→編集(地域ブランドメッセージ)→正統化(市民による承認)
  • 「ブランド」が一つのキーワードになってくる
    • →品質の保証・ステータス
    • アニメコンテンツが地域イメージを強化する

結論 経済的利益として貨幣価値をもたらしてはいないがブランド価値は生み出している。数値化できないけど。

  • 結論
    • 解決策はブランド価値 cf.ブランドランキングは指標化されている 
    • 直接的な経済効果で図ると、決して大きくは無い「コンテンツツーリズム」
    • 間接的なブランドの価値がコンテンツツーリズムの大きなメリット
  • プロデューサー=ブランドマネージャーの必要性
    • 地域資源ブランドと地域空間ブランドを統一されたコンテクストでつなぎ、断続的な活動を行い、地域内外とのコミュニケーションを行う必要がある。
    • 企業における「ブランドマネージャー」、コンテンツ製作における「プロデューサー」のような人材がコンテンツツーリズムの推進を図る地域には欠かせない。

質疑応答

  • ①タイトルがコンテンツツーリズムだが内容はアニメに特化している。なぜアニメなのか?
    • コンテンツの中で影響力が大きいのがアニメであり一番カネが動く。
    • 漫画ゲームアニメなどのメディアコンテンツがあるが、アニメというのが海外を含めてインパクトが大きい、
  • 製作委員会方式はコンテンツツーリズムを視野に入れていない時代に作られたものであるため、そもそもコンテンツツーリズムで儲けるための仕組みにはなっていない。政策委員会方式でコンテンツツーリズムによる経済的利益を論じるのは限界があるのでは?製作委員会方式ではない新たなアニメ製作のシステムが必要なのでは?
    • 資金調達で一番強いのが製作委員会方式。今回の講演の趣旨はブランド価値であり、投資回収として貨幣価値に目を向けるとコンテンツツーリズム事業はしょっぱいが、ブランド価値については大きな価値がある。製作委員会方式でもブランド価値としての評価基準を設ける必要がある。
    • 失敗事例に目を向けるとやらない方がいいのではないか?という抵抗感はある
    • 貨幣の回収を目的とするとメリットはないが、ブランドの価値を認めて評価できる余地がある。
  • CFはアニメ1本分作れるほどカネが集まらない。
    • 企業の論理を飛び越えられない。
    • コンテンツに関する愛着:グッドウィルを利用してCFでアニメーションを作る場合、成功事例でも1クール作るのに達していない。
  • ショートアニメなら可能性がある。
    • 平枠とのショートアニメーションなど。インターネットの短編アニメ
    • 今後のユーザーの志向の変化とメディア環境の変化で決まる
  • アニメ
    • 変化に晒されているので「ネタに尽きない」