戦後国際関係史 東西冷戦

1.戦後国際秩序の形成

(1)国際連合の発足までの歴史的経緯

(2)国際連合の性質

  • ①目的
    • 国際平和を維持し、紛争の原因を取り除く 
    • 経済、文化、教育の発展と交流を助ける
    • 基本的人権を擁護する → 1948年第3回総会「世界人権宣言」
  • ②総会と安保理
    • 総会:全加盟国が平等に参加する。多数決制。(連盟の時は全会一致)
    • 安全保障理事会
      • ‣米・英・仏・ソ・中の五大国が拒否権を持つ常任理事国
      • 国際紛争解決の為に、経済的・軍事的制裁を決定する。
  • ③専門機関と補助機関
    • 専門機関
      • ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)…教育・科学・文化を通じて世界の平和を促進する。
      • 国際労働機関(ILO)…労働条件改善などの労働問題について各国政府と使用者・労働者の代表が意見を交換し、協約を結ぶ。
      • 世界保健機関(WHO)…保健衛生の分野を担当する。国際保健事業の指導と調整を行う。
    • 補助機関
      • ユニセフ(国連児童基金)…経済社会理事会の下部組織。発展途上国や災害を受けた地域の幼児・児童の援助・救済を行う。

(3)アメリカの経済的覇権 ~戦後の国際金融・経済協力体制の構築~

  • ①ブレトン=ウッズ会議(1944)
  • ②貿易障壁を除去して世界貿易をうながす体制 
  • ③ブレトン=ウッズ体制…国際通貨体制。米ドルと各国通貨の交換比率を固定(固定相場制)することで国際貿易を安定させ、世界経済の発展をはかることを中心課題とした。73年にドル危機により変動相場制に移行して崩壊。

(4)戦後処理

  • ①ドイツ
    • a ) 4国分割占領…英米仏ソの四国協定で軍事分割占領が決定された。
    • b ) 旧首都ベルリンの分割管理…首都ベルリン自体はソ連管理下にある。ソ連管理下にあるベルリンをさらに4国で分割しているので注意が必要である。
    • c ) 民主化の徹底…非ナチ化。ナチス関係者やナチスの伸長に役立った仕組みを解体。ナチ党の解党、宣伝の禁止やナチス関係者の公職追放のみならず、政治や教育分野にも及んだ。
    • d ) ニュルンベルク国際軍事裁判所…連合国がナチスの中心的な指導者を裁くために行った裁判。
      • ゲーリング…四カ年計画長官となり軍備拡大。軍需生産のために外国人労働者を酷使。空軍司令官としてポーランド猛爆を指揮し、国家元帥となった。
      • ヘス…ヒトラーの秘書からナチ党の副党首となった。41年単身飛行機でイギリスに渡り、独断で和平交渉を行おうとし、第二次大戦終結まで捕縛されていた。
      • リッベントロップ…ナチスドイツの外交官。英独海軍協定を成立させる。38年2月以降第二次大戦に至る全外交政策を指導した。

  • ④日本
    • a) 民主的改革
      • a-1:軍隊の解散…ポツダム宣言に基づき実行
      • a-2:農地改革…寄生地主制と高率小作料から農民を解放し、自作農を創設することが目的。
        • 寄生地主制の弊害:農地の約47%は小作地で、農民の約70%が小作農もしくは自小作農。細分化された小作地と高い小作料が日本を対外侵略に駆り立てた。
      • a-3:財閥解体持株会社整理委員会が設置され、戦前の財閥解体が進められた。
        • 財閥の政治面での弊害:軍国主義に対抗する勢力としての中産階級の勃興を抑える
        • 財閥の経済面での弊害:労働者に低賃金労働を強制して国内市場を狭隘にし、輸出の重要性を高めて対外侵略戦争への衝動をもたらした。
      • a-4:教育改革…GHQが日本で進めた改革の一つで、教育の目標を民主的な人間の育成に置くこととされた。制度面ではいわゆる六・三・三・四制が採用された。
    • b)極東国際軍事裁判所…1946年5月~48年11月。連合国が日本の中心的な戦争指導者を裁くために行った裁判。天皇と財閥関係者は不起訴とされた。
    • c)日本国憲法…1946年11月3日公布、47年5月3日施行。GHQ草案に基づき吉田内閣時代に議会審議に付され、制定。主権在民象徴天皇制・平和主義・基本的人権の尊重などが特徴。

2.東西陣営の対立

①1947年

  • 【西】対ソ封じ込め政策
    • 3月、ソ連の地中海進出を防止するためにトルーマンが両国への援助を宣言(トルーマン=ドクトリン)。
    • 6月には国務長官マーシャルがヨーロッパ経済復興援助計画(マーシャル=プラン)を発表。

②1948年

  • 【東】2月25日、チェコスロヴァキア=クーデタ
    • マーシャル=プラン導入で対立した結果、共産化する
  • 【西】3月17日、西ヨーロッパ連合条約(ブリュッセル条約)調印
    • チェコ革命に衝撃。ベネルクス三国+英仏。NATOの雛形
  • 【西】6月20日、西ドイツ通貨改革
    • マーシャル=プラン導入のためソ連に無通告で実施
  • 【東】6月24日、ベルリン封鎖
    • 無通告で西独通貨改革をされたので封鎖

③1949年

  • 【東】1月25日、コメコン(東欧経済相互援助会議)
    • ソ連が東欧に資源を提供してマーシャル=プランに対抗

④1955年

  • 【西】5月6日、西ドイツNATO加盟
    • 5月5日、パリ協定発効し主権を回復。西独再軍備・米軍の西独駐屯を強行。

3.アメリカの「巻き返し政策」

  • 1953年1月米国務長官ダレスが提唱。対共産圏軍事対決の為,アジア・太平洋地域に同盟網を形成。

アメリカの同盟網の形成

  • 米比相互防衛条約:1951年8月。フィリピンを極東反共陣営の一環に組み込む。
  • 太平洋安全保障条約(ANZUS):1951年9月。豪州・NZ・合衆国の集団防衛条約。
  • 東南アジア条約機構(SEATO):1954年9月。米,英,仏,豪,NZ,比,タイ,パキスタンの8か国反共軍事同盟。
  • 南ベトナム支援:米はジュネーブ協定に調印せず。南部のベトナム共和国ゴ=ディン=ディエム政権を支援。
  • バグダード条約機構(METO):1955年11月。トルコ・イラク・イギリス・イラン・パキスタンの反共軍事同盟。
    • ※イラクが革命で脱落すると中央条約機構(CENTO)として再編成。イラン革命で崩壊。

4.冷戦と核兵器

  • ②核の上での均衡
    • 核戦争による共倒れを恐れて、直接対決や相手側陣営への介入を避け、自陣営の結束を固め、同盟国の獲得による勢力拡大、中立諸国への支援などにより対抗。 →冷戦体制

5.ヨーロッパ統合の始まり

  • 1948 ヨーロッパ経済協力機構(OEEC):西欧18カ国によるマーシャル=プラン受け入れ機関
    • ※両大戦の反省に立って経済を復興させるために、エネルギー資源や工業資源を共同で管理し、相互の対立を防止しようとする構想があらわれた。
  • 1950 シューマン=プラン  →1952 ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)
  • 1957 ローマ条約 →1958 ヨーロッパ経済共同体(EEC)/ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)
  • 1967 ヨーロッパ共同体(EC)
    • 原加盟国
      • インナー・シックス:フランス、西ドイツ、イタリア、ベネルクス三国(ベルギー・オランダ・ルクスセンブルク)
    • 政策
      • ①関税同盟の形成
      • ②商品・資本・労働力の自由移動
      • ③共通の農業政策

6.国際経済体制と戦後政治のゆき詰まり

(1)ブレトン=ウッズ体制崩壊

  • アメリカ財政の悪化
    • ヴェトナム戦争の戦費
    • 社会政策費の増大
    • 日本、西欧の先進国行国の躍進
    • 貿易収支の赤字(1971年。これまで1世紀近く黒字を維持していた)
  • ②ドル=ショック
    • 金兌換停止
    • 10%の輸入課徴金の導入
  • ③ブレトン=ウッズ体制崩壊
    • 1971年の金兌換停止以降、米ドルの価値の下落が明らかになり固定相場制を維持できなくなる。
      • →世界経済は変動相場制に移行し、ブレトン=ウッズ体制は崩壊した。

(2)第四次中東戦争オイルショック

  • ★1973年 第四次中東戦争勃発!
  • ★石油危機…安価な石油を前提に経済成長を続けてきた先進工業国は深刻な打撃を受ける。

(3)先進工業国の経済成長の減速

  • ドル=ショックとオイル=ショックは先進国の好景気に終止符を打ち、経済成長を減速させる。
    • ※日本は産業構造のソフト化に成功!! →重厚長大から軽薄短小へと技術革新を行う。

7.軍縮と緊張緩和の進展

(1)軍縮の展開

  • パグウォッシュ会議(1957)…ラッセル・アインシュタイン宣言に基づき核実験禁止・核兵器廃絶を要求
  • 部分的核実験停止条約(1963)…キューバ危機による核戦争の恐怖体験後に成立。中仏不参加。
  • 核拡散防止条約(1968)…核兵器保有国を米ソ英仏中に限定。譲渡・開発援助を禁止。
  • ④戦略兵器制限交渉 SALT(1969~72)…主として戦略ミサイルの数量の制限による軍縮を目指す。
  • 核兵器の現状凍結協定(1972)
  • ⑥核戦争防止協定(1973)
  • ⑦戦略兵器削減交渉 START(1982~91)…米ソ双方が核弾頭6000発運搬手段を1600基以下に削減
  • ⑧中距離核戦力全廃条約(1987)…核兵器搭載可能な中距離ミサイルを廃棄しその後も製造しない

(2)全欧安全保障協力会議(CSCE)

  • 1966年:ソ連のブレジネフ書記長が提案。
  • 1975年:アルバニアを除く全ヨーロッパ諸国とアメリカ、カナダの首脳が参加して開催。ヨーロッパの緊張緩和について話し合われた。
    • ‣cf.ヘルシンキ宣言…主権尊重、武力不行使、化学・人間興隆の協力をうたう。緊張緩和(デタント)精神の象徴。
  • 1995年:全欧安全保障協力機構(OSCE)として常設の地域機構となる。

(3)ニクソン=ドクトリン

  • 直接的軍事介入をやめて同盟国の自力防衛にゆだねる方針のこと。
    • 日本に沖縄を返還(1972)
    • 米中国交正常化:キッシンジャーの北京訪問(1971)→ニクソン訪中(1972)の実現!による中華人民共和国の承認
    • アメリカの反共同盟網の解消(緊張緩和と参加国の利害の多様化によるため)
      • SEATO(東南アジア条約機構)→1977年に解散
      • CENTO(中央条約機構)→1979年に解散

(4)中華人共和国の承認

  • 日中関係
    • 1972:日中共同声明…「日本と中国は戦争状態を終結した」との声明。日本は中国が唯一の合法政府であり、台湾は中国の領土であることを承認。中国は日本に賠償請求を行わないことなどが合意され、日中国交正常化がなされた。
    • 1978:日中平和友好条約…1978年北京で調印。両国の不戦と友好を約束した。
  • ②国連代表権
    • 1971:国連総会は中華人民共和国に中国代表権を認め、台湾の国民党政府の追放を決定した。

8.冷戦の終結

レーガン政権の末期には「双子の赤字」で経済が弱体化し、対ソ協調に応じるようになっていた。レーガンの後継者であるブッシュ(父)は、新思考外交を展開するソ連ゴルバチョフと地中海のマルタ島で冷戦終結を宣言した。

9.先進経済地域の統合化

(1)サミット(先進国首脳会議)

  • ①背景:一国では解決できない国際問題の増加…73年以降の変動相場制、オイル=ショックや経済成長の鈍化、多国籍企業、環境汚染など
  • ②1975年:フランスのジスカールデスタン政権下のパリで第1回が開催。以降、ほぼ毎年開催され経済政策の相互協力と調整を協議することになった。

(2)EU

(3)NAFTA(北米自由貿易協定)

  • 1992年アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国が調印し94年に発効した地域協定。加盟国間の関税や非関税障壁の撤廃を実現して貿易を活発化させることを目的とする。

(4)WTO

  • 1995年1月 GATTに代わり設立。国際貿易の諸問題を処理する国際機関。モノのみならずサービスや知的所有権なども対象とした自由貿易拡大のためのルール作りを通じて、経済のグローバル化を推進する役割を担っている。