さくらの雲*スカアレットの恋 体験版フルバージョンの感想・レビュー

バッドエンドを繰り返して謎を解き、その情報を並行世界の自分に伝えて世界の危機を救う話。
1章~3章はお使いRPGに過ぎないが、歴史の「歪み」が肥大化していく伏線となっている。
そして歪みのせいで史実の3年前に関東大震災が発生してしまい完全に正史から分岐する。
時間跳躍と過去改変、並行世界分岐と分岐した世界からの救援などSF描写は面白い。
個別√で回収された謎が、グランド√に収束され、未来に戻れるという構造だろう。
問題は個別ヒロインが全体シナリオのための装置と化してしまう現象を如何に克服するか。
また周回して世界の謎を解く構図はマジチャミやアメグレと一緒なのでn番煎じ過ぎかも。

過去跳躍して大正時代をループ!敵対勢力との並行世界改変合戦

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  • 震災を契機に民衆の支持を得てクーデタを起こし政権を掌握しようとする加藤大尉の野望を打ち砕け
    • 【1】1章から3章までは率直に言って退屈なお使いRPGであり、探偵モノ推理ゲーの読み物として考えると茶番にしか過ぎません。しかし本作の真骨頂はSF展開にあります。バッドエンドを繰りかえしながら、世界の謎を解き明かし、その情報を並行世界のゼロ地点における自分に伝えることで、グランドエンドを掴み取ろうとします。当面のラスボスとして設定されているのが魔人・加藤大尉の存在です。彼はE.H.カーを我田引水しつつ、自分の都合の良いように過去改変を行い、帝都の支配を目論みます。具体的には関東大震災を発生させ、その混乱を収拾することで大衆の支持を得、震災復興を主導することで帝都を掌握するという手段です。史実で東京復興にあたる後藤新平はサクッと暗殺!プレイヤーの初見となるn+1周目では加藤大尉の野望に何一つ気付けず、漫然と時間を過ごしてしまい、バッドエンドを迎えることになります。
    • 【2】主人公を過去に導いた形而上学的存在(並行世界の観測者)によれば、主人公の使命は歴史の「歪み」を修正することです。n+1周目ではそれが果たせなかったわけですが、並行世界の自分に情報を伝達するための手段として電報が与えられます。これには字数制限があって、並行世界の観測者によって字数が決められn+1周目では15文字程度となります。で、この情報を利用しながら「歪み」の修正に努め、ひいては加藤大尉の野望を打ち砕くことが、当面の目的として与えられたのでした。こうして4章に急展開を迎え、製品版への助走とすることに成功しています。
    • 【3】ただこのグランドエンド前提の作品だと各ヒロインの個別√が全体のための単なる情報提供の手段に陥りがちという欠点があります。さらにループものの作品ですと、どうしてもシュタゲの壁があることに加えて、本作のライターは過去作(マジチャミ・アメグレ)で同じような構造の作品を既に提出してしまっているのですよね。n匹目のどじょうを狙ったと思われてしまっても仕方がない部分があります。そして今回の場合は日本史全体を扱うことになるためスケールも大きくなるので、その辺もちゃんと処理できるかが見ものとなっております。
    • 【4】最後に、本作の内容の話に戻ると、過去跳躍先の大正時代で主人公の飼い主となる探偵の伏線について触れていく必要があるかもしれません。彼女は本名不詳で家族構成などもぼかされてしまいます。体験版の時点で分かるのは師匠がいて大分県の別府を探っていることくらい。そのような中で、主人公の先祖の事に話が飛ぶシーンがあります。この描写においてバブミが匂わされていることから邪推すると、探偵=主人公の曾祖母あたりという可能性があります。テキトーですが。

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