2020年8月発売新作ノベルゲームは何を買ったらいいですか!?

2020年8月はノベルゲー産業においてそれなりに歴史を持つメーカー群がひしめき合います。サガプラの新作は青春をウリにしていると見せかけてその実態は家族ゲーであり資産家一族のお家事情がテーマとなっています。Purple softwareの『青春フラジャイル』は魔法使いモノでワケアリ主人公の過去が物語を動かす原動力となっていますが、共通ルートの日常テキストがつまらなすぎるという欠点があります。『放課後シンデレラ』は下校をテーマとしたキャラゲーでHOOKSOFTの周年記念作品ですがノリがSMEE。シナリオに一番期待できそうなのが、『BETA-SIXDOUZE』ですが、前作はとても中途半端なところで投げっ放しになったので、不安が残ります。PULLTOPの新作は挫折系主人公モノであり『ころげて』をはじめとする他作品との既視感が否めず、ライター紺野アスタ先生の芸風の限界が感じられてしまいます。流石に量産し過ぎたか!?
 

かけぬけ★青春スパーキング! (SAGA PLANETS) (2020-08-28)

青春を否定する苦学生主人公の話。だが実は貧困家庭でも何でもなく資産家の後継者でありながら一族に反発しているだけの反抗期少年だった!という展開です。主人公は資産家一族である実母を恨んでおり、義父と義妹に義理立てするため、敢えて苦労の道を選んでいるのでした。体験版のノリは強権的な学校改革に対抗するためにみんなで頑張るという青春モノの匂いが漂いますが、それは全部茶番。資産家一族の中でも主人公の事を一番大切に思っているやり手ババアの叔母の策略に過ぎなかったのです。全ては視野狭窄になり、青春を否定する主人公を話し合いのテーブルにつかせるためだけのものであったのです。そして主人公がせーしゅんしたいと本音をさらけ出せたら叔母はアッサリ手の平返し。強権的な学校改革を撤回してくれたのでした。こうして体験版はお開きとなるのですが、ここまで見せられてしまうと青春モノというテーマは見せかけに過ぎず主人公のお家事情がメインに感じられてしまいます。複数ライターであるのも懸念事項で個別ごとにシナリオの出来不出来の差が激しくなりそう。

 

青春フラジャイル (Purple software) (2020-08-28)

設定と雰囲気だけ見ると面白そうです。魔法使いモノ。主人公の家系は魔法使いの分家で存在を隠匿しながら地方に根差して生きてきましたが、そこへ突如本家の人間が師匠になるといってやってきてボーイミーツガール。地元には主人公以外の魔法使いはいないはずなのに何故か魔力干渉が起こってしまい、第三者の悪い魔法使いの存在が伏線として張られます。さらに主人公は過去にワケアリだったようでストーカーヒロインからそのことが感じられるという仕様です。ここまでの情報ですとプレイしてみようかな?と期待が持たれますが、共通ルートの日常描写が壊滅的にツマラナイという欠点を持ちます。紛失した本をみんなで探そうとかいうお使いRPGで引き延ばしが図られたと思ったら、実は紛失したのではなくカバンに入ってましたーとかやられて、ちょっとよくわかりませんでした。

 

放課後シンデレラ (HOOKSOFT(HOOK)) (2020-08-28)

HOOKSOFTの周年記念作品です。ウリは放課後の寄り道を楽しむことであり、自分で下校ルートを作成し、ヒロインとのエンカウントを狙うことが醍醐味となっています。しかしこのウリが中途半端。シナリオ重視勢にとっては煩雑な作業以外の何物でもなく、逆にゲーム攻略勢にとっては下校ルート作成前に丸わかりなヒントがあるので攻略性の欠片もありません。どっちつかず感が満載です。シナリオはあってないようなものであり、ヒロインとの交流を楽しむだけのテキストゲーとなっています。ヒロインたちは全員ぶっ飛んだ性格の持ち主であるため、掛け合いとか交流とかはギャグバカゲーの要素が強いです。HOOKSOFTのゲームをやっているつもりが、SMEEの作品をやっているような気分になります。

 

BETA-SIXDOUZE (Liar-soft(ビジネスパートナー)) (2020-08-28)

宇宙SFで、シナリオ的には今月で一番期待できそうな作品です。前作『ALPHA-NIGHTHAWK』の主人公とヒロインの孫が、今作の主人公となります。しかし『ALPHA-NIGHTHAWK』は設定倒れで終わり、ここからシナリオが本格的に始まるのだろうと予感させるところで全てが投げっ放しで中途半端に終わります。いわゆるセカイ系的な作品で設定や舞台装置など所与のものに過ぎず、主人公とヒロインの関係性だけに終始しがちでした。そのため、本作は壮大な設定がきちんと回収されるのかという点に期待と注目が集まります。本作は宇宙薔薇という宇宙空間にある謎の薔薇が蔓を伸ばして侵蝕を開始したので、ロボット兵器でその蔓や蔦を薙ぎ払うという設定が大前提にあります。主人公とヒロインの関係性とかを描くのも良いのですが、ちゃんとSF編もやって欲しいのが正直なところ。ヒロインは前作の主人公が立案した特攻作戦で運よく生き残った少女二人組。主人公とくっつく方のメインヒロインは幼児退行少女で、主人公が本音をさらけ出して正面からぶつかっていくやり取りがいい味出しています。冒頭の伏線からすると、宇宙戦艦のグレートマザーが、この幼児退行したメインヒロインなんじゃね?と類推されます。

あの日の旅人、ふれあう未来(PULLTOP) (2020-08-28)

挫折系主人公モノ。主人公は中学時代は全国大会優勝するほどの実力の持ち主であったが高校で挫折。中学時代にマネージャーであったモトカノは主人公に影響されて主体的に活躍できる何かを求めた結果、女優として大成功するも一時のブームで終わり廃人ニートになってしまった。つまり、挫折系の少年少女の青春群像劇なのである。その挫折系二人に、これからの夢を語る第三者のヒロインが加わる。第三者ヒロインは内気ガールなのだが、声優業を目指していたのである。この夢見る第三者内気ガールが挫折系少年少女をどのように変えるかが物語の見どころとなっている。

 

shin-neko ~再会した妹との新たな関係~ (milimili:AMUSE CRAFT EROTICA) (2020-08-28)

ピンヒロインモノで妹に特化した作品。生き別れになった妹と再会し、再び兄妹の絆を作り上げていくことがメインテーマとなっています。大量生産される他のイモウトモノと差異化するためのポイントは二つあり、一つ目が不器用系イモウトの成長、二つ目がイモウトとの交換ノートです。まず一つ目の不器用系イモウトについて。イモウトモノでは完璧超人なイモウトがお兄ちゃんの世話をしてくれるというパターンやグーたら系イモウトの世話をするというパターンに陥りがちですが、本作のイモウトは少しずつ成長していくところに見どころがあります。最初は料理も満足に出来なかったイモウトがお兄ちゃんのために徐々に料理を上達していくところはグッとくるのではないでしょうか。続いて二つ目のポイントとしてはイモウト後漢ノートが挙げられます。イモウトはなかなか自分の欲望を言い出せないため、イモウトの望みを叶える為に、ノートにやりたいことを書いてもらい、二人で交流を重ねていくのです。8月は伝統ある老舗の作品が多い中で、ピンヒロインのイモウトモノがどこまで戦えるかという点でも注目されます。