key的泣きゲー要素とセカイ系文脈から『神様になった日』のOPの読解を試みると、以下のような展開を類推することができる。
1.君と同じ世界を見る それはどうか美しいか 君と同じ時を刻む それはどうか許されるか
佐藤ひなの横顔。「君と同じ世界を見る」ということは並行世界の観測者(=神)としての佐藤ひなと同じ視点で世界を見るということ。観測者の視点で見るセカイの美醜について問われている。
佐藤ひなと主人公はセカイが終わるまでの30日は同じ時間を生きている。すなわち「同じ時を刻む」ことになるが、様々な因子によりセカイが終わることで佐藤ひなと主人公の時間軸は分離する。それ故、「それはどうか許されるか」という疑問形として提示されている。これが物語の最終的結論であり、主人公と佐藤ひなが同じ時を刻めるかどうかが問われている。
2.知らないままの方が 良かったことなんて山ほどあるけど
佐藤ひなとの交流の中で主人公は彼女の人物像を深く知っていくがセカイの終わりというバッドエンドを迎える。佐藤ひなはセカイを正常化させるための部品であり、その真相を知らなければよかったと悔恨する一方で、逆説接続は「だからこそ真理を知らねばならなかったのだ」ということを暗示させている。
3.研ぎ澄ませ 祈り捧げ 命運を紐解け
セカイの終わりに際するバッドエンドを打ち砕くためにはどうすれば良いか。精神を研ぎ澄まして世界線の分岐を探す必要がある。それには佐藤ひなに対する信仰(信頼)が必要であり、これによりセカイの謎を解き明かすことが出来る。
4.新しいゲートが今 音を立て開く それは君へと続く道
セカイの謎を解き明かしたことにより、セカイの修正力で収束してしまう現状を打開し新しい世界線を出現させる。「君へと続く道」の「君」とは「佐藤ひな」のこと。佐藤ひなが消失してしまうことを防ぎ、佐藤ひなが現存する世界線へと至るルートである。
5.眩しさに目覚めた朝は 君の足跡を追いかけた
佐藤ひなが消滅してしまった世界線の話。忘れてしまったけれども記憶の残滓にこびりつく佐藤ひなの面影を求めて、足跡(アシアト)ならぬ足跡(ソクセキ)を追いかけ、佐藤ひなの存在を思い出そうとする。
6.この世界が終わる日には あの旋律を口ずさんだ
世界が終わる日。1周目の世界線では神を殺して世界を存続させる選択肢を選ぶ。それは即ち佐藤ひなの存在消滅を意味している。佐藤ひなのことを忘れてしまっても彼女から授かった曲の旋律を覚えていたので、佐藤ひなのことを想うとひとりでに旋律が口ずさまれてしまうということ。
7.君すら遠く遠く遠く遠く 小さくなってゆく
佐藤ひなのことを忘れてしまった主人公たち。しかし何か大切なことを忘れてしまったことだけは自覚している。それゆえ主人公たちは脳裏に焼き付いた佐藤ひなの残滓を求めて街を探し回る。花の記憶に刺激され覚醒した主人公は金魚のメタファーにより佐藤ひなの存在を思い出す。主人公に「観測」されたことにより佐藤ひな復活。後ろを向いていた佐藤ひなが振り返るシーンはその比喩表現。