臓器提供者となった5人の死体の霊魂が、移植先の少女に生きる意志を灯させる話。
星空鉄道とはそれ即ち少女の生命であり、機関車が止まったら少女は死ぬ。
鉄道旅行を通して少女が献体の生き様を知ることで拒絶反応を克服するというギミック。
停車する駅は各献体にとって思い入れのある土地であり、擦り切れた人生を再生される。
銀河鉄道の夜もジョバンニを除いて死者の旅であったし、それを臓器移植モノに上手く繋げた。
自分の人生を取り戻した上で、メインヒロインに将来を託すお別れのシーンは感涙必至。
挫折して人生に疲弊し(挙句の果てに死んでいった)大人たちが光る大変グッとくるVNL。
俺たちは、お前になら使ってほしいんだ→俺たちでノワールを生かすぞ!
- 疲弊し擦り切れて行った大人たちが、自分の臓器を提供して少女を生かすことで、自分たちもまた救われる。
- 【1】プレイ前のイメージとしては、銀河鉄道の夜をモチーフにしているのだから、登場人物はジョバンニ(主人公)以外は死んでいるのであろうと思っていました。さらに序盤の方では、銀鉄のメインは人生観の表現なのだから乗客たちが主人公に様々な死生観を示すのであろうと予想していました。本作の主人公は社会人として疲弊しきっており、生きながらにして死んでいるという状況でした。そのため主人公が星空鉄道の乗客たちとの交流を通して救済され再生されていくのであろうと推測していたのです。確かに主人公は乗客やメインヒロインとの交流を通じて再生されていきます。しかし主人公もまた死んでおり、メインヒロインこそがジョバンニだったというオチ。それでも主人公たちが少女を救うことに人生の意義を見出すところは思わず泣けてしまいますね。
- 【2】主人公たちはメインヒロインと車掌ヒロイン以外全員死んでおり、メインヒロインに臓器提供した存在です。それぞれが人生において何らかの挫折や負い目を味わっています。ジビエさんはスウェーデンにおいて親から洗礼された宗教上の理由により肉食を禁じられていましたが、日本に留学した際に信仰を破ってしまいます。タカセさんは小笠原諸島の出身でしたが東京幻想に釣られて上京しゼネコンに入った結果摺りつぶされてしまいました。花江さんは函館出身の役者で頭角を現したものの中央では活躍できず一酸化炭素中毒で死亡します。主人公は美大を出てアニメーターになったものの作画崩壊の責任を押し付けられ二度と浮上できなくなってしまったという過去を持ちます。主人公は大家の娘である裏ヒロインのねりちゃんに人生を救われ絵を描き続ける道を選び筆を折ることを辞めたのですが、そのねりちゃんが交通事故で死亡したため酒浸りになりアル中になって死亡したのでした。
- 【3】以上のように裏ヒロインのねりちゃん以外の大人たちは人生に疲弊し死亡したというわけ。しかし星空鉄道の中で仲間たち(他の臓器たち)と一体となりワイワイすることで、人生を再生することができました。この移植された少女と臓器たちが仲良くワッホイすることが何ともも重要なギミックであり、これが拒絶反応を克服することに繋がっていくわけなんですね。メインヒロインは臓器提供の拒絶反応に苦しんでおり、死にたいと思っていました。そんなメインヒロインに生きたいという主体的な意思を臓器の霊魂たちが持たせるのです。「俺たちでノワールを生かすぞ!」からの、機関車(=メインヒロインの心臓)に自らの意思で火を灯させるシーンは思わず真剣に読んでしまいました。そして最後のお別れのシーンは感涙必至。一人一人がメインヒロインに自分の思いを託して消えていく所は涙なしには語れませんな!そんなわけで死んでしまった後に臓器としてメインヒロインの一部となることで、人生を救われる展開というのもまた良し!
- 【4】ちなみに車掌役のカルハちゃんは、献血大好きっ子であり、メインヒロインに血を提供していたという存在。そのため星空鉄道を循環させる血液としての車掌の役割が与えられていたという流れになります。メインヒロインは主人公と約束して自分から友達を作ることを掲げていました。この約束を守るため、メインヒロインが現世におけるカルハちゃん本体に話しかけるところで、本作品は幕を閉じることになります。感動。このゲームを作ろうと企画してくれた原画師様とそれに応じてシナリオを書いてくれたライター様(しゅがてんコンビ)には圧倒的感謝を捧げざるを得ません。良いVNLをありがとうございました。