冥契のルペルカリア 第五幕「群青の不条理」の感想・レビュー

匂宮めぐり回。前半戦の終幕。劇団ランビリスで公演を成功させる話。
匂宮めぐりを覚醒させるため愛を芽生えさせた後、憎悪に突き落とすことがメインとなる。
めぐりに与えられた役は相手を憎みつつも根底では愛さずにはいられないという複雑な役。
しかしめぐりは愛を知ったことも、心の底からの憎悪も経験したこが無かったのである。
そのため座長天樂来々はめぐりを追い込むために自ら汚れ仕事を担うことになる。
憎悪に駆られるめぐりは演劇で存分に感情を発露するが、ダークサイドに落ちかける。
だが理世が心の支えとなり琥珀が心を打つ演技をすることで、めぐりは真意に辿り着く。

匂宮めぐりが祖父への複雑な感情を解きほぐす話

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  • 匂宮めぐりと天樂来々の匂宮王海を媒介にした関係
    • 【1】物語の主軸となる劇団ランビリス。この劇団は匂宮めぐりの祖父匂宮王海が作ったものでした。匂宮王海は演出家の巨匠であり役者を追い込み厳しい指導をすることで有名でした。めぐりも祖父から才能を見込まれ、幼少の頃から激しい指導を受けて来たのです。しかし王海は役者を自殺させてしまったことで落ち目となり各劇団を転々とすることになります。その過程で王海の精彩さは欠けていき、最終的には演劇を楽しむことだけを目的にした劇団を作り、そこに落ち着いてしまったのでした。これを許せなかったのが匂宮めぐりであり、自分には厳しい指導を要求し血の滲むような努力を課しながらも180度転換してしまった祖父にわだかまりを抱くことになるのです。このコンプレックスを解消することが第五幕のメインストーリーとなります。
    • 【2】匂宮王海の意志を受け継いだのは座長天樂来々でした。来々は全盛期の王海のように役者を追い込むことを是としていました。そのため、めぐりに試練を与えることとなります。めぐりに与えられた役は複雑な心情を理解できなければ演じられず、恨みを抱きつつも根底には愛情があるという心境を経験することが要求されました。そのためまずは愛情を覚えさせるよう仕組みます。これに利用されるのが主人公であり、めぐりは主人公と二人きりで合宿を行うことで愛情を経験することになります。幸せいっぱいになっためぐりでしたが、次に絶望の淵に叩き落されます。主人公の家に泊まりに行った不純異性交遊を暴き立てるようなゴシップ記事がばら撒かれるのです。そしてその上記事を撒いたのは天樂来々であることを知らされます。めぐりは来々の事を兄のように慕っていたので、この仕打ちに激昂し、見事憎悪の感情を身にまとうのでした。
    • 【3】こうして愛憎を知っためぐりはその感情を演劇に叩きつけていきます。しかしこれは演技ではなく単なる感情の暴走と言えるでしょう。演劇を成功に導くのに重要な役割を担うのが、一度は役者を捨て復帰した理世の存在。理世は折原氷狐が役作りのために狂気に走ることに対して何もできませんでした。しかし最初から氷狐は理世に救いを求めていたのだと今になって気づくのです。では理世に求められていた救いは何か。それは役作りのために狂気に走った役者たちの帰還場所となること。すなわち何があっても信頼し寄り添うことであったのです。今度こそ、それを知った理世は暴走する理世の心の港となり寄り添う演技を全うします。憎悪に溺れかけるめぐりでしたが、理世に支えられ、最終局面で琥珀の演技の中に来々の真相を知るのです。めぐりが「だって天兄は。良かれと思うことを、信じて貫いてきたのだから――」という境地に至ったことは、憎しみならも根底には愛情があるということを表現できた瞬間でした。
    • 【4】以上のように匂宮めぐりが覚醒したことで公演会は大団円のうちに大成功をおさめてハッピーエンドとなります。琥珀が役のために孤独になることや奈々菜や双葉が葛藤を乗り越えながら役を全うする所、来々と悠苑の過去など周辺部分も丁寧に描かれております。

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理世の活躍シーンまとめ

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冥契のルペルカリア感想まとめ