雑録

【下馬評】2021年9月発売新作ノベルゲーは何を買ったら良いですか?

9月は大激戦区。著名なライターやメーカーがしのぎを削ります。
8月に散らしてくれれば良かったのに……とちょっと思ってしまいました。
私はふゆくるとAPOLLOCRISISを買いました。キャラゲー群は様子見かな?

概要

  • シナリオ重視勢 ~渡辺僚一と新島夕~
    • ひしめき合う作品群の中で、一際目立った存在はやはり『ふゆくる』でしょうか?四季くるシリーズのトリを飾る作品であり、SF的宇宙観と仏教的世界観を融合させた独自の世界観とシナリオのギミック、人物描写や心情表現などキャラの掘り下げも巧みであり、非常に楽しみな作品と言えます。
    • ふゆくるにシナリオで対抗するのが新島夕先生のファンディスク。ラストを描かずに投げっぱなしにした本編末尾をちゃんと回収してくれるのかに注目が集まります。プレイ時間は4時間ほどとされておりやり残しが無いように全部詰め込んであると公式webに書かれていますが果たして。最後の場面でラスボスバトルに挑む主人公のダディのイベントをちゃんと書いてくれることを祈ってお布施を払います。

  • キャラゲー群雑感
    • 主要タイトル
      • 渡辺僚一&新島夕に続いて、三番手に位置するのがキャラゲー群であり、ポンコワ、アイコイ、トメフレ、槇村などがあります。抜きゲーではアトリエかぐやが今月も出現。
    • ポンコワ
      • ポンコワは原画師池上茜先生を主力とするHulotteの作品。処女作の『With Ribbon』以外ぶっ飛んだタイトルをつける事で有名となり、そのトンチキな題名の一方で意外にシナリオが丁寧に作られていることで評判の良いメーカーです。池上茜先生のカワイイ萌えイラストと、複数ライターを駆使しながらもギャグゲーのようでありながらホッコリするシナリオで、作品を上手く仕上げてきます。
    • HOOK VS 十全
      • ポンコワに続くのはHOOKSOFT関係者たち。最近のHOOKは系列メーカーアサプロ&SMEEでウケた要素を前面に押し出した芸風となっています。そのためSMEE化したと指摘されており、本作のアイコイもギャグを基軸としたテンポ良い作風に仕上がっているためアサプロ&SMEEのノリが脳裡によぎります。そんなHOOKに対し、アサプロで恋ゼロ・一橋・±を書いた十全先生がトメフレ2で襲い掛かるという構図になっています。
    • ピンヒロインものと抜きゲー
      • ピンヒロインモノではあざらしそふとの槇村。ピンヒロインモノなのにヒロインよりもギャグ要員のサブキャラたちの方がキャラが立っておりヒロインの空気感は否めません。抜きゲーではアトリエかぐやの『HOMESTAY a la mode』。アトリエかぐや生え抜きのライター華田久作さんとアストロノーツ・コメットからやってきた原画師たいのね先生のコンビ。ホームステイにやってきた白人JKと一つ屋根の下でイチャラブすることがウリとなっています。異文化交流がテーマであり、ロシアにおける日本のヲタク文化事情と、日本近現代文学クラスタが描かれるので、キャラの味付けで程度はなく本格的に閨房シーンに取り入れることができれば深みが出そうですが抜きゲーでどこまでやれるか!?という感じ。

以下作品別雑感

ふゆから、くるる。 (シルキーズプラス)

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火の鳥』のマキムラよろしく成長と幼化を繰り返すことで不老不死である少女たちの話。主人公たちは閉鎖空間における箱庭世界で第三者に観測されながら天才を生み出すための学園プログラムに参加させられているモルモットたち。天才を作るために脳の神経細胞を増やすことが目指されており学園では各自がそれぞれの研究に従事しているという設定です。見どころとしては主人公が世界への破壊願望を持っているということ。しかしながら現実の世界など破壊できるわけもないので、プログラミングで精緻なAIを作ることでチェスの世界を壊す研究をしています。この「世界を壊す」という主題がバタフライエフェクトとなって殺人事件へ繋がっていきます。実用品ではなく芸術作品を作る第二手芸部の部長は、この世界を壊すという話に関心を示し、そのせいで死んでしまったかもしれないのです。本作は殺害されてもクローン体で複製として蘇生されるのですが頭部が無いと脳の神経細胞が復元できないため別個体になってしまうとのこと。そんなわけでレッツ名探偵。主人公は第二手芸部部長と親友の頭部を探して惨劇に挑みます。成体と幼体を繰り返すことが輪廻として捉えられており、曼荼羅を用いた仏教的宇宙観も作品にいろどりを与えています。四季くるシリーズのラストということもあり非常に期待されている作品です。

アインシュタインより愛を込めて APOLLOCRISIS (GLOVETY)

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あいこめのFD。新島夕先生の特徴として挙げられるのが、①伏線を回収し切れない強引なラストと②個別ルートとそのキャラがグランドエンドを描く為のパーツと堕すること。『はつゆきさくら』では主人公を長年支えてきたランとの邂逅は捨象されましたし、『恋×シンアイ彼女』はヒロインのアジールであることに主人公が自己の存在意義を見出したのに、居なくなったメインヒロインが突如現れるという情緒もへったくれもないエンドで終わります。サマポケではRBまで出したのに妊娠後のしろはの弱さの克服と現実世界における羽依里のネグレクトの解決は捨て去られました。あいこめ本編では一番盛り上がる最後のバトルが丸々カットされ突如エンディングが流れ出します。流石新島夕先生だぜ☆そこに痺れる憧れるぅ。いや、新島夕先生は全体の構成が出来ないだけで(しないだけで)、いいところはたくさんあるのです。特に鬱屈した主人公の内面描写に優れており、様々な葛藤やヒロインとの交流を通して、自己の存在意義を見出していく所は共感できるところしきりです。(というかそれが真骨頂?)。コイカケの主人公がヒロインのアジールになるところとかはサクラノ詩と似ているなと思っていたらサクラノ刻にライター参入してましたし。ですので!今回初めてファンディスクを出して、投げっぱなしで終わってしまった最後を回収してくるだけでも嬉しい!初めての試みに感謝感激雨あられ。4時間程度の小品らしいのですが、全部詰め込んでくれたとのこと。騙されそうな予感もしますが、お布施を払いますよ、私は。

俺の恋天使がポンコツすぎてコワ~い。 (Hulotte)

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Hulotteのタイトルがぶっ飛んでいるシリーズ。原画師池上茜先生の絵だけがウリの原画集メーカーと思いきやあら不思議。その題名と題材に反して、なかなかシナリオも読めるものとなっています。本作は挫折系主人公モノであり、怪我で陸上部を辞めることとなって空虚な時間をバイトで潰している主人公が、愛天使に導かれ恋愛してくことになります。怪我を契機に疎遠となった幼馴染と復縁?していく様子や挫折経験を共有するヒロインとのフラグ構築が丁寧に描かれています。個人的に一番好きなキャラは友人ポジションのまそら。怪我で陸上部を辞めて一番鬱屈していた時期の主人公をバイトに誘って、当面の生き甲斐を与えてくれた恩人でもあり、日常でも気軽に話しかけてくれてステキなナイスガイです。『北へ。DD』のまふゆや『はぴねす』の準にゃん、『ぬきたし2』の秋野水引などトランスジェンダーをテーマにして攻略できるキャラも結構いるので、まそらに期待をかけてもいいんじゃない?まそら攻略出来たら買うわ。

思い出抱えてアイにコイ!! (HOOKSOFT(HOOK))

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アサプロSMEE化したHOOKの新作。今回は幼馴染成長変化がメイン。幼馴染の変化を描く作品は、管見の限りですが以下のものがあげられます。古くは『ときメモ2』、幼馴染に洗練をもたらしたのは「ねこねこソフト」諸作品、(個人的)神ゲーとしては『幼馴染と十年、夏』の小中編、現在ではtone work'sがお家芸としています。幼馴染と幼少期に絆を結び、成長してから再び出会ってその絆を確かめていくというパターンはお決まりながらグッとくる展開です。幼少期における始原的体験って後々の人格形成に影響を与えますし。三つ子の魂百までとかいうやつ。本作ならではの芸風は、アサプロSMEEを引継ぎしそのギャグとテンポと言えるでしょうか?駄菓子屋に集まって公園で遊んでカードゲームに興じるのも楽しい。本作では幼馴染編で全てが描かれず、本編における個別ルートで過去回想を取るという手法になっているので、フラグ形成ごとに過去エピが挿入されるのだろうと予想されます。幼馴染とのノスタルジックラブがシナリオにおけるフラグ構築を深めたものにしてくれるといいな。

彼女は友達ですか? 恋人ですか? それともトメフレですか? Second (DESSERT Soft)

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アサプロで猛威を振るった十全先生のバカギャグゲーです。バカとギャグで彩りながら、社会的な問題を描きつつちょっとホッコリするエピソードも入れながら、やっぱりバカギャグゲーであるというのが十全先生の特徴。本作は神待ち家出少女を素材とした作品の続編。家というものは自分の帰属と所属となるものですが、それが却って足枷となる時もあります。また自立するためには反抗期が必要であり家に反発して外へ出るのも自然な現象です。だけど、一人は寂しいの。このような寂しさを埋めるために、友人や仲間を求めるのかもしれません。そんなわけで家を出て来た少女たちと、家持ちだけど孤独なコミュ障根暗ぼっちの主人公が邂逅し、身を寄せ合う姿が描かれます。注意点としてはバカギャグの題材となるのがヲタ的特徴なので、プレイヤーは自己解体を迫られるため死にたくなったりするので気をつけましょう。

槇村葉月の恋語り (あざらしそふと+1)

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ピンヒロインモノなのにサブキャラたちの方がキャラが立っているという矛盾。本作のウリは何といってもオンボロアパートでのオモシロ生活。大家を筆頭に、奇人変人の住人たちと過ごすトンデモハップンな毎日が描かれていきます。煩雑な選択肢がことある毎に出てきて、1個間違えればすぐにバッドエンドという月姫Fateもかくやという程の分岐を誇ります。知恵留先生やタイガー道場をパロっており、バッドエンドになるとサブキャラたちからオモシロアドバイスを貰えるというのも嬉しい展開です。そのためメインヒロインの存在を完全に食ってしまっており、メインヒロインが体験版でほとんど出てこないこともあって、ピンヒロインものなのに本末転倒となっています。体験版でメインヒロインとのイベントをもう少し見せるべきだったんじゃない?それはそれとして、賑やかワイワイな集団生活とかを楽しみたい人達にはおススメかもしれません。サブキャラたちの方が活躍して主人公やヒロインが完全においてけぼりとなった作品としては他のメーカーの作品ですがラズベリーキューブなどがあります。

HOMESTAY a la mode (アトリエかぐや)

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突如お家にホームステイしに来た3人の白人JKと一つ屋根の下で異文化交流を楽しむ抜きゲーです。英米露とアングロサクソン2人にスラブ1人とより取り見取り。単なる抜きゲーかと思いきや(キャラ付けのためかもしれませんが)割としっかり英露の文化的背景がしっかりしていたので驚き。ロシア人ヒロインは日本のサブカル文化ヲタクで、イギリス人ヒロインは日本近現代文学クラスタ。きっとロシアとはアニメ漫画ゲームラノベを基にしたコスプレプレイなどが展開されるのでしょう。そして注目すべきは日本近現代文学プレイ。川端・谷崎・三島が引き合いに出され、日本人の閨房描写を文学にまで高めた文章表現の美しさが語られます。と、いうことは日本近現代文学プレイをすることが期待されており、川端谷崎三島の内容をイベントでパロ的に再現したらかなり面白くなるかもしれません。抜きゲーですので味付け程度に終わる可能性も大ですが、大化けするポテンシャルは秘めている可能性があります。

参考