ゴールデンカムイ全話無料開放を読んだ感想

公式で五稜郭の戦いまで開放されていたので読んだ。
ウイルクのアイヌ殺し、杉元が陸軍に入った理由、尾形の謎、金塊の在り処はほぼ解明。
まだ回収されていない重要な伏線としては鶴見劇場の真相と南下した谷垣の参戦。
鶴見篤四郎は言葉巧みに大義の実現の過程における個人の救済を説き聴衆の心を溶かす。
これによりアシㇼパは暗号を喋り、ソフィアは涙し、月島軍曹は忠誠を深めるのだが……
なんと月島と鯉登の盗み聞きはビールの匂いのせいでバレておりわざと聞かされていたのだ。
すなわち鶴見はわざと月島と鯉登に美談を利かせ鶴見劇場に再び組み込んだのである。

ウイルクのアイヌ殺しと金塊の謎

アレクサンドル2世を暗殺し極東民族のパルチザン活動のためにアイヌの金塊を利用しようとしたウイルク。だが北海道アイヌと結婚しアシㇼパが生まれると極東連邦の夢から醒め、アイヌ民族独立を優先しようとする。これによりウイルクとキロランケの仲は断絶した。そして金塊の謎。江戸後期、北海道アイヌたちは江戸幕府に対して反乱を起こすため帝政ロシアから軍艦と銃火器を購入するべく金塊を集めた。それは函館に集積されていたが、軍艦が沈没したことにより未使用となり手つかずの状態となった。それ故、アイヌたちは蝦夷共和国榎本武揚と交渉して未開発の広大な北海道の土地権利書を入手する。戊辰戦争で負けたから無効じゃね?という展開になるが蝦夷共和国が欧米列強と結んだ条約が明治新政府に引き継がれたように土地権利書も有効であったのだ。ウイルクが監獄に行くまでの経緯については以下の通り。金塊の残りの存在を突き止めたウイルクたちは、函館の領事館から五稜郭内の馬用の井戸に移す。だがここでアクシデントが発生する。ウイルクは仲間のアイヌたちに極東パルチザンであることを隠していたのだ。これまでウイルクのカリスマ性がバラバラであった北海道各地のアイヌをまとめていた。北海道のアイヌたちには統一したアイヌとしてのナショナリズムなど無かったのである。それ故ウイルクの信頼が失墜すれば空中分解。ウイルクの出自を知ったアイヌたちは擁護派と殺害派に分かれて殺し合いを始めてしまう。ウイルクが(直接的に)殺したのではなく、真相はアイヌ同士の殺し合いだったのである。ウイルクは自分の顔の皮を剥いで死体の頭部に被せて攪乱した後、逃走。第七師団と犬猿の仲であった犬童典獄に自らを捕まえさせ網走監獄に収容されたのだ。そして監獄の中で24人の囚人たちに金塊の隠し場所を刺青として掘り、この物語がスタートしたのであった。

尾形は結局どの陣営だったのか ~花沢勇作童貞死守事件と杉元・菊田・尾形~

花沢勇作童貞事件を描くことで、杉元が陸軍を志願した理由や菊田・尾形がそれぞれ中央に属し鶴見を見張っていたことが明らかになる。結核で一家全滅し村にいられなくなった杉元は上京し、そこで菊田と出会う。菊田は第七師団長花沢幸次郎が引き起こした問題の対応に追われていた。花沢幸次郎は息子の勇作を旗手にしたかったのだが、妻はこれに反対。旗手は童貞でなければならないため、息子に女をあてがおうとしたのである。菊田の子飼いとなった杉元は勇作の替え玉としてお見合いに参戦。つまらない男を演出するもイケメンっぷりを隠し切れず、令嬢の好感度は鰻登り。一方杉元は自分の行動が勇作の人生を阻んでいるかもしれないことに苦悩する。結局、お見合いは破談となり目論見は達成される。ここで杉元がどんな時も被っている軍帽は菊田の弟の日清戦争の遺品であることが明らかになる。そして杉元の言葉により菊田は自分が誘ったせいで弟が軍隊に入り戦死したという悔恨から解放される。杉元は白米が食べられることに釣られて陸軍を志願する。一方で菊田は中央から鶴見の監視を命令される。そこには尾形もおり、鶴見に怪しまれないように二人は別々に独自の方法で鶴見を監視することになったのだ。尾形は自分が妾の子であること、父親からの愛情を受けられなかったこと、弟の勇作を殺してしまったことから複雑な行動をとってきたため、トリックスター扱いであったが、元々の飼い主は中央であったというオチ。後ついでに月島軍曹のいご草ちゃんは生きてるっぽいフラグが立てられていました。

鶴見劇場 ~ビールの匂いで盗み聞きはバレていたはずなのに~

鶴見に捕らえられたアシㇼパとソフィア。ここで鶴見は自分の過去を語りだす。そしてそれを月島と鯉登が盗み聞きする。かつて鶴見はウラジオストクで諜報活動のために母方の姓長谷川を名乗り写真屋をしていた。そこにウイルク・キロランケ・ソフィアがやってきて日本語の読み書きを習う。アレクサンドル2世暗殺の罪に問われる3人に追手がかかったことで、連鎖的に長谷川写真店の真相もバレてしまい、襲撃をうけることになる。これにより鶴見の現地妻と子どもは死亡。鶴見は子どもの指の骨を後生大事に持っていた。ソフィアは戦闘時における自分の流れ弾が鶴見の現地妻を殺してしまったと後悔していたが、殺したのはウイルクの銃弾であったことが判明する。そして駄目押しと言わんばばかりに国家の大義と個人の幸福について語る。大義と個人は相反するものではなく、大義の過程の中で個人が救われることがあっても良いのだと。あとついでにアイヌの人々は色々なものにカムイを見出すが、黄金に神がいるとするならば災厄をもたらす悪い神、まさにゴールデンカムイなのだとタイトル解題されたりする。鶴見劇場はアシㇼパやソフィアに効果覿面でアシㇼパはホロケウオシコニを鶴見に話してしまう。だが誰よりも月島に対してこの鶴見の話は効果的であり、今まで鶴見を疑っていた月島だが、信奉者へと転じる。その瞬間こそ、鯉登は鶴見にニンマリとするが、即座にビールの匂いの一件から自分たちが盗み聞きしていたことが鶴見にバレていたことが明らかになってしまう。すなわち、この鶴見劇場は最初から月島にも聞かせるように仕組まれていたのだ。じゃあ、鶴見劇場で語られた内容は嘘なの!?鶴見劇場の真相はまだ解明されなかった。

 

その他みどころ

生きていたいご草ちゃん
杉元の帽子の謎解明
金塊は土地の権利書だった!?
金塊は五稜郭の馬の井戸で見つかる