【感想】ゴールデンカムイ4期13話「尾形とアシㇼパさんの父親への感情の対比」

自分を愛さなかった父にいつまでも拘り続ける尾形と父の生き様から人生の目標を見出したアシㇼパを対比的に描く話。
前半は尾形パート。両親から愛されなかった尾形が自分を愛して貰おうと究極のかまってちゃんムーブをかます
尾形は父の愛情を得るために自分の異母弟を殺してしまったが、尾形を愛した人物こそが異母弟だったという話。
後半はアシㇼパさんパート。極東少数民族連合独立国家でもなくアイヌ民族権益拡大でもなく北海道自然保護を目指す。
明治期末期の和人による資源収奪に直面したアシㇼパさんは北海道の自然を守ることにこそ自分の使命を見出していく。
北海道に国立公園などの自然公園が多いのはアシㇼパさんが土地権利書を得て粘り強く交渉したからエンドになる。

子に対する父親からの愛情とは何か

異母弟を殺しても父からの愛は得られず、父を殺しても鶴見中尉からの愛は得られなかった

ゴールデンカムイでは尾形とアシㇼパさんを対比させながら父親への愛情が描かれる。尾形は妾の子であり父親から認知されず母親は父のことばかりで自分を認めてくれようとしなかった。母は尾形が将校になる事を夢想していたが、父に認知されない貧農出身の彼がなれるわけも無い。誰からも愛されなかった尾形はここから愛を得るために究極のかまってちゃんムーブをしていく。尾形の行動原理の全てはここにあるのだ。それを的確に見抜いていたのが宇佐美であり図星を突かれた尾形は、宇佐美が一番嫌がる言葉を吐き意趣返しを試みたりする(鶴見中尉からの承認欲求のみで生きる宇佐美に一番安いコマと言い放つ)。尾形を愛してくれた唯一の存在が異母弟である勇作だったのだが、高潔で清い存在である勇作は尾形にとって目の上のタンコブであった。尾形がここで大人になり勇作からの愛を受け容れ精神的に結ばれればハッピーエンドだったのかもしれない。だがいつまでも子どもで構ってちゃんな尾形は勇作が女を抱かず人殺しもしないことを許せず殺してしまうのであった。だが勇作は清いまま死に神格化されてしまったので、尾形の中にいつまでも残り続けるのだ。尾形の最期は勇作からの愛を自覚して自殺することになる。その点では尾形は最後に愛を得たためハッピーエンドだったのかもしれない。
 

杉元の過去の女とその旦那との友情を知るアシㇼパさん

一方でアシㇼパさん。アシㇼパさんはウイルクから愛情を注がれて育ったが、父がテロリストであることを知った。さらにアイヌの集団を殺したのではないかと疑念を抱く。物語の中でアシㇼパさんは極東少数民族独立運動の象徴に祀り上げられたり、アイヌの権益拡大のために利用されたり、杉元から清さの象徴として崇められたりする。第4期では白石の説教により杉元がアシㇼパさん個人を見るようになるので、アシㇼパさんはきゅんきゅんして乙女になっていく。しかしアシㇼパさんにはしこりがあり、それは杉元の過去の女の件であった。4期最終話でアシㇼパさんは永遠に金塊が見つからなければずっと杉元と一緒に居られるとの考えが脳裡に過るが、杉元から金塊の使い道と過去の女の話をされると、その甘い考えも断念せざるを得なくなる。杉元は金塊を見つけてもアシㇼパさんが人生に納得できるまで側にいると約束するが、それはアシㇼパさんの求める杉元と結ばれたいという想いに答えるものでは無かった。杉元の過去を知り、自分の淡い感情が仄かな初恋として破れるとアシㇼパさんは精神的に成長。和人により収奪される北海道の自然環境を見て、「残しておく」ことの大切さに改めて気づいたアシㇼパさんは、北海道の自然環境保護が自分の使命だと思うようになる。

杉元の過去を知ったアシㇼパさんは北海道の自然環境保護に自己の使命を見出す