ヤマノススメ21巻の感想・レビュー

面白かったのは①妥協と落とし所・②矛盾の肯定と不可思議の受容・③寂しさと自由。
オッサン趣味をJKにやらせるシリーズだが、オッサンの皮を被ったJKではない。
(オッサンはオッサン役としてちゃんと出て来て見せ場を作っていく)
登山を通して思春期の少女が抱える問題を解きほぐして行くところが良い。
山を登ることで色々なことを体験して人生哲学を深めていくとことか?

妥協と落としどころ

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大学受験の話。早々に推薦合格を決めた千手院小春が受験勉強に煮詰まる笹原ゆうかを登山に誘う。小春は妥協と諦めを繰り返す中で大人になっていくことを説き、落としどころを見つけることが肝要だと述べていく。これに対し受験勉強が上手くいっていないゆうかはダメージを受けまくり。高望みしすぎとか言われてグサッとくる。だがゆうかは精神的に大人であり他者の諫言を受け入れることが出来る人であった。小春が大した山でなくても良い景色が見られることを示し、妥協しても最善を尽くせばよいと励ますと、その小春の想いを斟酌するのである。煮詰まっていたゆうかは確かに気分転換に成功したのであった。ゆうかが悪くない、久しく忘れていたわ、こういう時間と述懐する場面はグッときます。自分が受験の時にこういうの読んでれば気持ち的には楽だったかもしれない。就職して受験指導してる時とかに管理職の言いなりになって生徒を東京一工にぶち込むのでは無く一人一人の進路選択に寄り添うべきったのかもしれない(懺悔)。

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矛盾の肯定と不可思議の受容

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ゆるキャン△でなでしこがランタン買ってたけど、ヤマノススメでは倉上ひなた(黒髪ショートツインテ/ツーサイドアップのキャラ)のママンがランタンを買う。なでしこのランタンとは異なり、こちらは電気式。ゆらぎ機能がプログラムされた作り物であったとしても、「それでもいいなぁと思っちゃう」と言うシーンはグッとくる。さらに名言は続き、ひなたが「くつろぐために働いてヘロヘロって矛盾してるなぁ」と母親の労働様式の矛盾を突くと、矛盾しても良い、正解しかない世界なんて面白くないと返すのがバツグン。よくあるJKにオッサン趣味やらせるシリーズだと中身オッサンのJKがイキってたりすることが良くあるけど、JKとは別に大人のキャラ出して価値観の相違とかやるのは趣深い。そしてママンの価値観を受け継いだひなたが、あおいに対して、何でもすぐわかっちゃうと面白くないって、わかないくらいがちょうどいいのよと嘯くシーンは割とエモい。

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寂しさと自由

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労働でメンタル削られているひなたのママンのために手軽に登れる山へGo。栃木県の那須連峰の茶臼岳に行きます。高校生にもなって家族で出かけてくれる娘ってのも貴重なのかもしれない(最初はトモダチ誘おうとしていたけれど)。ママンの手軽にのリクエスト通りサクッと登れてしまいひなたは物足りなさを感じるもママンは十分に心が洗われたのであった。途中分岐点まで家族で行動するも父親の勧めもあり、ひなたは一人で朝日岳へ行くことに。初めての一人の登山で自分を見つめ直すひなたのモノローグがいい味出しています。自分は誰かと繋がるために登山していたのかなと自問自答しながら、寂しさを感じつつも自由であり、山そのものを楽しむことの意義を見出していくところはハラショーだ。最後に景色を見渡しながら、たまにはこういうのもいいかという境地に至る展開は良くできていると思う。共感。

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