ウマ娘「メジロドーベル」シナリオの感想・レビュー -

幼少期のトラウマにより観衆の前で実力が発揮できなくなるツンデレウマ娘の話。
メジロドーベルはメジロ家の一員として幼少期からレースに興味を持つようになった。
だが自ら望んで出た大会では序盤に転びメジロ家のプライドが傷つけられ精神崩壊。
以後ドーベルは高い実力を持ちながらも衆目を浴びるとPTSDが発動するようになる。
チーフに見込まれサブとして弟子入りしたトレーナーはドーベルと絆を育んでいく。
メジロ家の中では年下の方であり特にライアンを姉の如く慕っていた模様。
それ故ドーベルは年の離れた弟妹に自分がしてもらったように接しようとするのであった。

メジロドーベルのキャラクター表現とフラグ生成過程

メジロ家のメンバーに対する劣等意識
- メジロドーベルのキャラストの前半は、トラウマを解放するシナリオです。主人公はチーフに見込まれサブとして弟子入りしトレーナー道を歩み始めます。このチームにいたのがメジロドーベルであり、チーフが担当する最後のウマ娘でした。高い実力を持ちながらも、レースでそれを発揮できないドーベルを、少しずつ、だけれど着実に育成していたのです。主人公はサブとしてドーベルのメントレに協力していくのですが、なんとチーフが老齢のため倒れてしまいます。ドーベルは結果を出せない自分を見捨てずに担当してくれたチーフに恩義があり何としても勝利をプレゼントしたい……その気持ちは自己をして無茶苦茶なトレーニングをさせしむことになります。そんなドーベルを支えるのが主人公の役目。自分を弱いと思い込み、トラウマを発症させる拗らせ系ツンデレを精神面で支えます。
- ドーベルのトラウマはメジロ家のウマ娘たちに対する劣等感に起因していました。メジロ家の皆がレースで活躍するのを見たドーベルがレースに出たいというのは必然的な流れであったのですが、幼少期における初めてのレースでは序盤に転んでしまい、屈辱を味わうこととなったのです。皆がレースで賞賛を浴びる一方で自分だけは憐憫の言葉をかけられたことにより、観衆の前で走るとPTSDが発動してしまうようになったのです。自分は弱いと自嘲することでしか自分を保てないドーベルに、強さを信じる心を発露させてあげればフラグは成立！ドーベルが観衆を意識しまいとするばかりに逆に意識してしまうことに気付いた主人公は、レース前に観客席を見るよう助言します。そしてドーベルは強いとさけぶのです。主人公のなりふり構わぬ信頼にドーベルも刺激を受け、チーフが見に来てくれた最後のレースで見事勝利を果たしたのです。

テンプレ系ツンデレは初級お姉ちゃん
- キャラストの後半はドーベルの家庭事情の掘り下げに入ります。ドーベルが幼児アニメのイラストを描いていることに気付いた主人公。それはカワカミプリンセスが好きなニチアサのように大きなお友達がいる作品とは違って、もっと低年齢層なアニメでした。話が進んでいくと、その番組はドーベルの年の離れた弟妹たちが好きな作品だと判明します。ドーベルは幼少期にメジロのお姉さん方に色々と面倒を見てもらっていたので、自分も彼女たちのように良きお姉ちゃんをしたかったのです。普段は寮生活でなかなか会えないためコミュニケーションに苦労しがちなようですが、イラストを描いたらウケたためそれを交流のとっかかりにしようとしたのでした。それ故、話を合わせるためにイラストの練習をしたり、映画を見に行ったりしていたのですね。主人公はドーベルが弟妹たちにプレゼントするための映画館配布シール集めに協力し一緒に映画をみたりします。ドーベルを理解しようとする主人公の行為は、頑なであったドーベルの心を溶かしていき、ツン８に対しデレ２という黄金比で急速にデレ化していきます。照れたドーベルが、照れ隠しに後ろを向いてしまう仕草の3Dモデリングの仕草は素晴らしい出来栄え。
- ラストは夏合宿において紙芝居作りをすることになります。まだ映画館でじっとしていられない弟妹たちのために、映画のストーリーを紙芝居化して見せてあげようというのです。ここでもメジロ家との交流が想起されパーマーが紙芝居好きであることが判明したりもします。紙芝居の背景絵に苦労するドーベルに、背景は写真にすることを提案。二人で素材集めに奔走していきます。ドーベルが弟妹たちに何かをしてあげることは、自分がメジロのお姉ちゃんたちから色々してもらったことを辿る道でもありました。そのことを噛み締めるドーベルに対し、主人公がドーベルもお姉ちゃんの顔をしてるよと指摘する流れは実に良い雰囲気となっています。