【感想】たぬま『今日から悪い子。続』(2022年9月4日)を読んだ。

再婚により義兄妹となり、これまで居場所が無いと感じていた主人公とヒロインが相互救済をする話。
兄は母親の期待に応えるために良い子を演じてきたが義妹に本質を受け入れられた気がしていた。
だが義妹が乙女ゲーを愛好する事が分かり、自分はゲームのキャラの代替ではないかと焦燥に駆られる。
夜伽中自分の感情をぶつけてしまった兄は義妹から嫉妬と指摘され自分の中の気持ちに気付くのだ。
自己の感情と向き合った兄が行為で好意を表現し、それが伝わった際の義妹の表情が大変素晴らしい。
その一方、兄を救済した義妹もまた兄の何気ない一言でイジメから抜け出す勇気を得て救われていた。
義妹が兄の本質だけでなくその演技や嘘も肯定したことにより、兄は自分を受け入れることが出来た。

ヒロインよりも兄の方がかわいい(かもしれない)

自分の本質を受け入れてくれたと思った義妹ですら自分を代替品として見ていた

主人公は母子家庭で育った優等生。だがそれは期待に応えるために演じているだけの姿に過ぎなく内面はドロドロしていた。前作ではそれを義妹の蜜花に癒されていったのだが、今回は本質を見てくれたと思った蜜花にすら裏切られた(と勝手に思い込み)自滅していく。そのきっかけとなるのが蜜花に一緒にお出かけして欲しいと頼まれたこと。行先はなんと乙女ゲーのコラボカフェであり特典の獲得率が上がるからと兄を連れて行ったのであった。その際、蜜花からヲタトークを聞かされるのだが、自分は蜜花が好きな乙女ゲーの代替に過ぎないのではないかと感じてしまう。複雑な感情を抱いた主人公は夜伽の際いつもはしないような強引な行為をしてしまう。訝しがる蜜花に主人公は事情を話すもそれは嫉妬と蜜花に指摘され、主人公は自分の感情の正体に気付くのであった。主人公が嫉妬していることに対して嬉しくなって顔を赤らめてしまう義妹の破壊力は大変素晴らしいものがある。おススメ!
 

兄が自分のためにゲームキャラに嫉妬していることを喜ぶ義妹

こうして蜜花に対する気持ちの本質に気付いた主人公は、今度は丁寧に義妹を慰撫していく。大切にされていると感じた蜜花はいつも以上に感じてしまいすぐに絶頂を迎えてしまうのだが、丁寧な行為の中に兄の愛情を見出すのだ。まるで恋人同士であるかのようなプレイを経て蜜花が兄はその関係性を欲しているということに感づき、「…いいの?本当に?私お兄ちゃんと…」とふるふるして感極まるところはグッとくる表現になっており一見の価値アリ。お互いがお互いの気持ちに気付いた後の伽はその情交の激しさを増すのであった。
 

夜伽における丁寧な慰撫により兄に恋人としての愛情があることに気付く義妹

行為後、蜜花は改めて兄に対して好意を告げる。そして始まる回想シーンで蜜花のターン。母から疎んじられてきた蜜花は幼少から孤独を感じており、離婚後についていった温厚で善良な父に対しては迷惑をかけていると罪悪感を抱いていた。学校生活も上手くいっておらずぼっちでありイジメの対象にもなってしまうのであった。そんな蜜花に勇気を与えたのが、偶然出会っていた主人公。蜜花は主人公の何気ない一言に勇気を貰い、クラスメイトたちからの支援を得てイジメから脱却できたのである。主人公は良い子であろうと演技や嘘で塗り固めていたが、その偽善によって確かに蜜花は救われたのである。主人公は蜜花に本質を受け入れて貰ったが、さらに苦悩の対象であった演技や嘘をも肯定されることで、ホントウの意味で救われたのである。憑き物がおちたように、蜜花のおかげで自己肯定感を持てる気がすると告げる主人公にもまた蜜花はときめくのであった。

義妹から偽善をも肯定され救済される兄

可愛かったコマなど

かわいかったコマ
かわいかったコマ2

前作


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