【感想】漫画版『メイドインアビス』における「烈日の黄金郷」編の終局部について

アニメ2期は最終回を目前にして特番となり1週分空いてしまった。そのため続きが気になり漫画原作で「烈日の黄金郷」編に該当する部分を読んだ。ここでは最終回に備えてアニメ11話以降の内容が漫画原作ではどのように描かれていたかをまとめていきたいと思う。

【目次】

「烈日の黄金郷」アニメ11話までの概要

【1】巨大な大穴の発掘・調査を生業とする探窟家たち。その大穴は潜れば潜るほど上昇負荷がかかり、第六層ともなると「人間性の喪失か死」が待っていた。主人公の少女リコたちはついにこの第六層にまで到達する。なんとここには異形の姿になり成れ果てた人々が居住する村が存在していた。

【2】この村は創立当初から呪われたものであり、一人の少女イルミューイを犠牲にすることで成り立ったものであった。イルミューイは1日1人子どもを産むよう改変された挙句、生まれた子どもは食料としてカニバリズムされたのである。さらにイルミューイの改変は進み最終的に巨大な支柱と化し、その胎内に村が形成された。この村は膜で護られており、居住民は外に出られなくなる代わりに、第六層の呪いや原生生物から逃れることができた。

【3】だがイルミューイは最後の子どもを産み残し村の殲滅を願った。イルミューイの悲願を継承した末の娘はファプタと名付けられ、村への復讐を誓う。だが母親の胎内に子どもが戻ることなどできないのと同様に村の中に入ることが出来なかった。それ故、ファプタは奈落のコトワリを書き換える火葬砲に着目し、紆余曲折を経て村の護りは破壊される。

【4】ファプタは母の望み通り住民を惨殺していくが、村の護りが消えたため原生生物が入り込み、復讐如何を問わず圧倒的な力の前に住民やファプタは嬲り殺されていく。死にかけるファプタに対して住民がとった行動は自らの身体を血肉としてファプタに捧げることであった。こうして復活したファプタは再び原生生物との戦いに挑むことになる。ここまでがアニメ11話までのお話。

原作58話

復活のファプタによる血の解放&ジュロイモー業物披露

復活したファプタVS原生生物リュウサザイ

滅ぼすべき対象であった成れ果ての村の住民たちから身体を捧げられそれを食らうことで復活したファプタ。盛大にリョナられた原生生物に勝てるのか。ここでファプタはジュロイモーを呼び出す。これまでの戦闘は村内であったため業物の力を発揮できなかったが、広い場所を得た今回はその破壊力を示す。無数の原生生物を広範囲攻撃により消し炭とする。残った個体はファプタが片付けるのだが、昂るファプタの血が原生生物を食らっていく。ファプタが自分をおろかものでよいそすと認め、主体的意志により役目のその先を見つけられた所がポイント。
 

ワズキャンの最後

ワズキャンの目的とは何だったのか

リコ・レグ・ナナチは原生生物大暴れの混乱の中、マジカジャさんに回収される。マジカジャさんの変形形態・強身体の上に乗る生き残った住民たちは落下したワズキャンの所へ赴く。ここで死にゆくワズキャンと最後の問答を行う。

まずはリコのターン。ワズキャンはリコに対しここに来れてよかったかを問い、リコは堂々とめちゃくちゃ来てよかったと応える。冒険に出たことを1ミリも後悔していないリコ。さらにガンジャ隊の羅針盤がリコに伝わり、さらにそれが次のヒトに渡って冒険の連鎖が続くと良いと自論を展開し、ワズキャンからいいねを貰う。つづいてナナチのターン。ワズキャンが一体何をしたかったのかという答え合わせ。ワズキャンは冒険を諦めてはおらず。ヒト以上のものになることを望んでいたのだ!

以下引用

我々はねヒト以上のものになりたかったのさ。この大穴を穿つにはヒトを超えなければならない。それは奈落の住人として成れ果てること。祝福され力を得ること。呪いに打ち勝つ身体を持つこと。そのいずれでもない。積み重ねだけだ。それらの積み重ねだけがヒトをヒト以上たらしめる。途方もない年月を奈落と寄り添い培った強かさが、果てを目指す好奇心と純粋さが、導かれた申し子が、混ざり、継いでいった『積み重ね』だけだ。今…その末端にいるのが君たちであり、そして道を決めようとしているファプタだ。だから僕がしたいことは今や一つ。君らにこう言うだけさ。どうか、あの子を頼むよ。望郷を…望郷を旅の先に持つ奈落の子供たち、叶わない夢より恐ろしいものが黄金の先で待つ…せめて夢を叶えて絶望しておくれ

 

最終決戦へ挑むリコさん隊&残りの成れ果てズ

死地へ向かうリコさん隊&村の住民ズ

ワズキャンの散り際を見送ったリコたち。そこへファプタからの呼び声が届く。成れ果て村を滅ぼそうとしたファプタによる純粋なる呼び出し。これに呼応するのがラストメンバーたち。マジカジャを筆頭に料理屋のおかみさんムーギィ、宿屋の店主メポポホン、ヴエコの愛人パッコヤン、汚い尻で有名なマアアさんで挑む。この際、マジカジャとムーギィがリコの母の封書を購入しておいてくれており、リコに選別として贈られた。
 

原作59話

ヴエコ成れ果て化

自らの命と引き換えにヴエコを救うパッコヤン

ワズキャンに絡めとられ共に原初の根まで落ちたヴエコ。過去の人生を想起しながらファプタがいる所まで登っていく。自らを目の奥から出してくれたリコが同様に様々な人々に冒険の手を差し伸べてきたことに思いを馳せ、それに対して自分は何も決断できなかったと後悔するヴエコ。だがそれに自己反駁し過去の冒険の日は自らが選び取ったものであり、それは楽しかったのだと確信する。あとヴエコの回想コマの一つにベラフと寝ているシーンがあるけどこれ気のせいじゃないよね。ファプタからおかあさんの匂いがすると言われた時にたくさんの人と交尾しているとかいうシーンあったけど、あれはヴエコが性的虐待を受けいていただけでなく、ガンジャ隊のみんなの「お世話」をしていたことを意味していたのね。ヴエコが三賢だった理由の「お世話」ってそういう意味だということが分かる。

過去の日々を楽しかったと確信した瞬間にヴエコに襲い掛かってくるのが上昇負荷の呪い。イルミューイの護りが無くなったためヴエコに人間性の喪失の呪いが発動する。死にゆくヴエコを救ったのが、彼女の百合的愛人パッコヤン。自らの命を省みず、上昇負荷からヴエコを守るため、少しでも下へと投げ飛ばします。漫画版だと人間の時にヴエコが身体を重ねているシーンがあるけど、ここまでパッコヤンの見せ場があるとは!?58話でも真っ先にヴエコの下に急ごうとしていたのがパッコヤンだったし。アニメではパッコヤンとヴエコの関係性を(多分)描いていないと思うので、どうするんだろうね。

ヴエコとパッコヤンのガチ百合関係

 

村の崩落

イルミューイを看取るヴエコ

ファプタの呼び声に駆けつける住民たち。ファプタが彼らと会話をできるようにレグがリュウサザイ戦を引き受ける。リコがプルシュカ笛を用いて白レグ化し、ワズキャンが補強した陸橋を破壊する。一方で時間を貰ったファプタは住民に謁見。彼らを食って力を得てイルミューイが残した村を破壊する。成れ果て村の住民が全てを理解した上でファプタに食われていくのが切なさ炸裂しちうまうよぉ。住民を食ったファプタの力は成れ果て村を全壊させるのにふさわしく、これまでの文化や営みが崩れ去っていくシーンは泣ける。そしてラストはヴエコのターン。村の全壊を目の当たりにこれまでの懺悔をするヴエコ。イルミューイの願いは子どもだけでなくヴエコそのものであったようだ。そういやヴエコがパッコヤンと夜伽に励む所をイルミューイは知ってたし、ヴエコを欲したのも当然であったのかもしれない。イルミューイを先に看取ることを最も重い罰と見なし、これを受けさせてくれたことに感謝を捧げるヴエコの姿をお楽しみください。
 

原作第60話

崩落からの退避

マアアさんとマジカジャの最期

イルミューイの願いを果たしたファプタは事切れようとするが、意識を失った後にレグにより救われる。マジカジャとマアアはファプタに食われずリコたちを村外へと連れ出す役目を与えられていた。シナリオの前半でマアアがメーニャを潰した際に清算としてぬいぐるみを没収されていたが、リコは代わりのぬいぐるみを作っておりそれをマアアに渡す。これによりマアアは最後の力をリコのために振り絞る。次いでマジカジャ。駆動機体では崩落を逃げ切ることが出来ず全ての脚を失い万事休す。ここでマジカジャの特性である憑依が発動。何と気を失ったファプタに憑依して、崩落から逃げ切ったのである。自らの命を散らせながらリコたちを守ったマアアとマジカジャの最期が感動的に描かれる。
 

ファプタとヴエコの邂逅

イルミューイがファプタにヴエコの記憶を継承しなかった理由

崩落から逃れ全てが片付いた。ここでようやくファプタとヴエコの邂逅が成立する。イルミューイは母親から全てを継いだと思っていたが、ベラフに記憶を託されるまで、ヴエコの事を知らなかった。イルミューイはわざとヴエコの事を継承せず自分だけのものとしたのであった。亡き母のことをヴエコから伝えられるファプタは、イルミューイがヴエコのことだけは渡したくなかったのだなと推量する。イルミューイを看取ったヴエコが、その娘であるファプタに看取られながら死んでいくシーンは感涙必至。ヴエコは自分を虐待していた養父が残した黄金郷が何でも黄金に変えてくれるという言葉を思い出し、イルミューイが変えてくれたのだと感謝しながら死んでいくのであった。
 

ファプタの旅立ち

レグの誘いを断り一人で旅立つファプタ

全てに決着がついた。レグはファプタを冒険へと誘うのだが、ファプタは約束を思い出せないことに固執する。それでもレグはファプタに対して熱弁を振る熱心に勧誘。だが容易にはファプタは仲間にならない。ファプタはリコに対しレグが記憶を失ったままでも優しいのはリコたちによるものだと告げる。また石となったプルシュカとも会話をすることができリコの役目を知る。それは出会ったものたちをだいじにしたいという役目。ファプタとはここでお別れであり、一人で旅立っていく。成れ果ての村の残骸を見ながら、いってきますと述べるファプタ。黄金郷が生み出した黄金とはまさにファプタであったのだとタイトル回収エンドを迎える。
 

原作61話

ファプタ仲間になる

リコから食事に誘われ仲間になるファプタ

リコ達の前から一度は去ったファプタ。だがつかず離れず行動し、旅の様子を遠巻きに見ていた。それを発見したリコはファプタを食事に誘う。レグとファプタに獲物を狩って来てもらい肉入りスープを振る舞う。ベラフの記憶にあったイルミューイの子どもの肉を使ったスープがフラッシュバックするファプタ。だが一口食べて見ればその味に感動し、ガブールンがリコを庇うことで守ろうとしてくれたファプタの行く末を知る。料理の概念を知ったファプタはこれ以降リコ達のメンバーとして一緒に行動することになるのであった。
 

原作62話

ワズキャンの真の目的は回収されずにまだ引っ張られた

プルシュカも指摘するワズキャンへの違和感

リコは睡眠中に夢の中でプルシュカと会うことが可能らしい(おそらく覚醒状態の人格に記憶は引き継げない)。その夢の中でプルシュカはリコレグの仲においてファプタとの関係性を危惧したりなんだりする。そして話題はワズキャンの違和感についてとなる。「ファプタを頼む」や「積み重ね」についてワズキャンが誰かに冒険を託すことなどあるはずないという結論に至り、烈日の黄金郷が全て片付いたわけではないことが示唆された。

ワズキャンの真の目的とは何なのか?