森宮正幸『ほどいて、むすんで』(1話~5話)の感想・レビュー

デレマス同人で著明な森宮缶先生が黒髪ロングのヘアアレンジを描く髪フェチ漫画。
幼少期から姉の髪を弄っていたため髪結いスキルを身につけた主人公くん。
一方黒髪ロング素直クール剣道少女の野原さんは不器用で母親に髪を結って貰っていた。
ある時野原さんの髪のほつれに気付いた主人公くんは直してあげることになる。
野原さんはこの時の髪結いをとても気に入り度々主人公くんに髪を弄らせていく。
主人公くんは中学時代に髪結い技術をキモいと言われたトラウマで卑屈になっていた。
この主人公くんのネガティブさを素直で純粋な野原さんが救済していくこととなる。
(※なんかちょっと前、雛人形職人がコスプレギャルに救済される話が流行ったな!とか言ってはいけない)

そういえば森宮缶先生の『後輩日記』でもポニテやお団子が可愛かったですよね。

髪結いから始まる1on1恋愛
  • 卑屈な主人公くんが「髪結い」を通して素直クールの野原さんから救済される所がウリ
    • 主人公くんは中学時代にその特技である「髪結い」スキルをキモいと断罪されたトラウマのため卑屈でネガティブになってしまった高校生。それ故、高校進学後も変にイキらず当たり障りのない人間関係の構築を心掛けていた。だが席替えをきっかけに素直クールな剣道少女野原さんと隣になったことで高校生活が変わっていく。野原さんは不器用であり髪をお母さんにやってもらっていた。だが少し髪結いが甘くほつれてしまっていたのである。そのことに気付いた主人公くんはさり気なく指摘しスルーしてフラグは成立せずに終わった……かに見えた。なんと野原さんは自分では直すことができず移動教室で誰もいなかったこともあり困っていたのだ。ここで主人公くんはお節介を焼いてしまい、見事に野原さんの髪を結い直す。この手際がとても良かったことから野原さんは主人公くんに惚れ込んでいくのだ。
    • 本作の一番の見所は主人公くんの卑屈さにあるといってよく、自分の特技である「髪結い」に対するネガティブな感情がヒロインによって「髪結い」スキルが肯定されることで、癒されていくのである。主人公くんのガードは硬く、中学時代のトラウマと姉からの苦言によって、絶対に攻略されないマンになっている。そんな主人公くんの頑なさをヒロインの野原さんだからこそ崩せるという構図が大変素晴らしく描かれている。ダンドリズムもバッチリで、第2話では汗フェチ、第3話では秘密の共有、第4話では髪結い指南、第5では私服でお出かけがテーマとなり、徐々に二人の間で関係性が深まっていく様子がグッとくる。第2話での汗フェチ回では体育で頑張りすぎて髪が崩れてしまった野原さんがちょっと恥ずかしがる。けれども主人公くんが運動の時とかで友達の汗に触れるのも嫌?と丸め込み野原さんの髪を直していく。野原さんに初めて男の子友達ができた瞬間であった。
主人公くんの髪結いスキルがこれ以上広がらないよう独占欲する野原さん
  • 秘密の共有と独占欲
    • 第3話のテーマは秘密の共有。野原さんは主人公くんに髪をやってもらっていることをクラスのギャルの一人に喋ってしまう。これにより主人公くんはギャルの髪も結ってあげるのだが、ここで初めて野原さんは主人公くんが髪を結っている姿を第三者の視点で眺めることになる。主人公くんの真剣な眼差しに見とれてしまう野原さんの可愛さを是非ご覧ください。そして野原さんは感情を刺激される。いつもは自分がやってもらっている髪結いを今は別の女性にやってあげている所を見せつけられているのだから当然だろう。ギャルが誰にも言わない方が良いよね~とか軽口を聞いて去っていった後、「……私も周りに言わないほうがいいよね……じゃあ内緒にする……」からの「毎朝してもらえたら嬉しいもん……」の流れは破壊力バツグン。主人公くんと秘密を共有することで独占力を満たそうとする野原さんがいじらしい。さらに主人公くんは毎朝野原さんに髪結いを指導することになる。

 

なぜ体育が終わっても髪を下ろさないのか疑問を持つ主人公くん
ヒロインが髪を下ろさないのは中学時代における剣道部でのトラウマがあった
  • ヒロインの過去のトラウマと髪結いスキンシップ
    • 第4話では実際に髪結い指南が行われる。黒髪ロングストレート制服の姿がすこぶるいいね。ここでは髪結いスキンシップが行われ手取り足取り物理的な触れ合いが行われる。また何故野原さんが黒髪ロングストレートではなく髪結いにコダワるのかというトラウマも語られる。野原さんは幼少期から剣道をやっており凄く強くて男子にも圧勝していたことにより中学時代に恐怖の日本人形と陰口を叩かれていたのであった。この過去のトラウマを語る時の野原さんが何とも言えず、これを聞いた主人公くんが間髪入れずに「すげー綺麗だよ」と返せるところがステキ。いった後で慌てふためく主人公くんだが、これに対し野原さん恥ずかしがりながら「……ありがと」と応えるところはおススメの描写となっている。そしてここでも主人公くんの予防線は鉄壁で、スキンシップを行って好感度を高めた後でも、自分は野原さんの力になりたいだけと負の感情を偲ばせるところがたまらない。

 

他の男とのデートのためであろうと髪結いを完璧に仕上げる主人公くん
  • 卑屈な主人公くんがヒロインに尽くす魅力
    • 第5話は私服回なのだが、卑屈系主人公くんが好きな人々にとっては大好物な展開。森宮缶先生の『後輩日記』は卑屈系主人公くんがよりクール度の高い素直クールからグイグイこられる話だが、その同人よりも主人公の鬱屈した内面描写が深まっている。本作の野原さんは髪結いをしてもらっているお礼を主人公くんにしたいのだが、主人公くんのガードは硬く「友達」にはお礼をするようなものではないとやんわりと断られてしまう。そのため野原さんは内緒で主人公くんとデートをしようと作戦を練るのだが、主人公くんはこれを別の男と野原さんがデートするのだと早合点してしまうのである。この流れが実に秀逸。野原さんに髪形のリクエストを聞いた所、「どんなのお願いしてもいいいの……?可愛いかんじのとかも……?」とおずおずと切り出し、それを承諾すると「じゃあ!可愛いので……お願い……!」と請われて主人公くんはとてもやる気になるのだが……。雑談で誰と出かけるの?と振った際に主人公くんの知らない人…だからゴメンねと拒絶されてしまうのである。野原さんの本音はその相手が主人公くんだから言えないのであるが、主人公くんは他の男とデートする野原さんを自分が可愛くするという拷問にかけられるのである。それでも野原さんのことを思う主人公くんは完璧に髪結いを行い野原さんを可愛く仕立て上げ、寂しそうに去っていくのであった『ほどいて、むすんで。』(完)~バッドエンド~となってもそれはそれで味があるのだが、次のページを捲ると衝撃の展開。野原さんはじゃあ行こっかと主人公くんの腕を取るのである。ようやくここで種明かし。なかなかお礼を受けてくれない主人公くんに対し、野原さんが友人の力を借りて実行した作戦だったのだと。この回は主人公くんの卑屈さがもろに出る一方で、たとえ他の男のためだっとしても野原さんのために全力を尽くすアンビバレンツな漢気が大変良かった。

森宮缶先生のヘアアレンジが光るデレマスしぶりん本

黒髪ストレートのしぶりんが髪を結って料理をするシーン良いよね