スローループ 第1話「とても変わった女の子」の感想・レビュー

死んだ父親の幻影に囚われる内向的な少女が釣りを通して再婚家庭と打ち解ける話。
山川ひよりは母親の再婚でナーバスになり亡き父に教わったフライ釣りで黄昏ていた。
そこへ現れたのが海凪小春で一緒に釣りを楽しむが再婚先の娘さんだったというオチ。
お約束な典型パターンだが、所々で漂う父親の死臭が作品にアクセントを加えている。
第1話では亡き父の部屋を小春が使用する際に抱く複雑な感情が丁寧に描かれている。
ひよりが釣り、小春が料理で、二人が徐々に絆を結んでいく過程がとても素晴らしい。

亡き父の幻影、再婚家庭への不安とわだかまり

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  • 釣りを通して少女の内面描写と心の交流を描く
    • オッサンの趣味をJKにやらせるシリーズ。2021秋アニメには無かったので1クールぶりに登場。(ごめんウソ、陶芸アニメとかあったわ)。釣りがテーマだと『放課後ていぼう日誌』とか前例がありますね。本作は前例に比べると、すごく雰囲気が落ち着いていて柔らかい印象があります。同系統の雰囲気作品は『スーパーカブ』がありますが、あちらは設定だけJKが利用されて中身はオッサンバイカーの精神性が描かれたのに対し、こちらはきちんとJKの心情が丁寧に描かれて行くので好印象です。『スーパーカブ』はカブとバイカーを描くことが先にあり、JKは単なる手段でしたからね……。
    • 第1話で是非見て欲しいのは、ファザコン気味であったひよりが、死んだ父親を忘れられずにいつまでも引き摺っているところ。特にその象徴となるのが亡き父の部屋であり、そこが再婚先の娘である小春の部屋として浸食されていくことに、寂寥感を抱く姿はグッときますね。一方の小春もいつまでも荷解きをしなかったのですが、それが表面的には小春のだらしなさに見せかけて置いて、実質は小春もひよりの内面をそこはかとなく感じ取り遠慮していたという展開。再婚家庭当初の馴染めない雰囲気がひよりだけでなく、小春・父・母の間に漂い、それを釣りが解決していくという流れになっています。こう書くと、じゃあ釣りは単なる手段じゃん!とツッコミが入りそうなものですが、釣りの魅力を感じさせる描写もなかなかのものであり、JKらしさと題材の専門性を見事にマッチさせたイイ感じの作品に仕上がっています。例えるなら『恋する小惑星』のような路線。
    • ひよりは釣り専で、意外なことに小春が調理担当。ひよりはもっぱらお刺身しか作れません。しかも「父親に教わった」という枕詞がつきます。そしてエモいのは父親から教わった技術で小春と仲良くなるのですが、それにはやはり限界があり、自ら新しい知識を習得しようという気分になるのです。それ即ち、父親の幻影からの脱却。今までは新しいことをやろうとせず死んだ父親から教わった範囲内に留まっていた少女が、一皮剥けて行く瞬間が最高です。ラストは小春がひよりのもとを訪れ、一緒に寝るエンド。ひよりの対人バリアに小春が踏み込むことで絆が交わされる姿がステキです。

 

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