【感想】『ふつうの軽音部』1~36話まで読んだ。~初ボーカルを失敗した主人公が覚悟ガンギマリとなる16話から面白くなる~

各地で大絶賛の『ふつうの軽音部』。連載初期におススメされた時、数話で読むのをやめてしまっていた。
理由は主人公が余り活躍せずテンポが遅くて地味であり色恋沙汰やら何やらの人間関係が中心だったからである。
(※「遠回りする度に見えてきたこともあって早く着くことが全てと僕には思えなかった」と歌わせる為の演出)
な、なんと本作一番の魅力である主人公・はとっちのボーカルが初披露されるまで8話もかかるのだ!
それ以降もメンバー集めに時間がかかり、桃を加入させるための装置として女の友情の解散劇を見せられることに。
そのためブームにイマイチ乗れなかったのだが、16話が作品の明確な転換点となり、読むと印象がガラッと変わる。
主人公は初めてボーカルを担当したライブで大失敗しメンタルクラッシュするのだが、そこからの立ち直りが凄い。
覚悟ガンギマリとなった主人公が公園で弾き語り修行を始めてから本作はグッと面白くなる!16話まで耐えろ!

この私をバカにしたすべての人間を絶対に殺してやるという強い気持ちをもってがんばる

初ボーカル失敗で嘲笑されるはとっち
  • 序盤の状況
    • 『ふつうの軽音部』の魅力は何と言っても主人公・はとっちのギターボーカルにある。だがボーカル初披露が8話、ギターボーカルになるのが14話、はとっちが覚悟ガンギマリになるのが16話とシナリオのテンポは緩慢であった。それまでは高校生特有の繊細な内面的感情及び恋愛や友情等の人間関係が中心となる。「はとっちがボーカルのバンド」を組むためにはメンバー集めをしなければならないのだが、既に入学初期からある程度の関係性は構築されてしまっていた。(はとっちは厘の画策でヨンス、かっきーをメンバーに迎え、一時的にバンド・ラチッタデッタを組んでいた)。そのため「はとっちのバンド」を組むためには、既存のグループやカップルを破壊し、一度は人間関係を分解しなければならない。その装置として高校生特有の繊細な内面的感情及び恋愛や友情等の人間関係が利用されるのである。故に作品の初期の方を読むと、何か面倒くさい人間関係のゴタゴタをやってんなぁ~としか思えなかった。

これは17話で馬鹿にしたやつ全員殺すマンになっている主人公
  • 先輩による伏線
    • だが作者もまたそのように思っていたのであろう。この後絶対に面白くなるから読むのをやめずに続けてね!という伏線が先輩の口を通して張られるのである。「軽音部って人間関係のトラブルばっかだし楽器はなかなか上手くならないし…頑張っても大人たちは評価してくれない部活だけど、私は入ってよかったと思ってるし、続けることで得られるものがある気がしてるんだ。ちひろちゃんは最後までやめずに続けてね。私卒業してもちひろちゃんのライブは絶対観に行くから!」。これは作品を投げずに読んでねというメッセージなのだろう(私は一度投げてしまったが)。

はとっちの夢
中学時代に歌を小馬鹿にされた苦い記憶
興味が無いフリをして諦めた
覚悟ガンギマリになるはとっち
熱意を燃やすはとっち

  • 16話以降の盛り上がり
    • 作品の転換点となるのは、上述したが16話。14話では、作品を裏で動かすもう一人の主人公とも言うべき厘が、既存の人間関係を崩壊させた後、桃を仲間とし先輩をサポートに加え、はとっちがボーカルの即席バンドを結成する。だが15話において、はとっちは初めてのギターボーカルのライブで盛大に失敗してしまう。鷹見・彩目から大声で嘲笑され馬鹿にされたはとっちはメンタルクラッシュ、精神崩壊して落ち込むのであった。ここからの立ち直りを描くのが16話。挫折からの復活劇はみんな好きでしょ?私も大好きです。はとっちは夏休みは部活に出ず永井公園で弾き語り修行をすることに決める。その覚悟ガンギマリタイムをとくと見よ!

私はずっと自分にも嘘をついていました。本当は子どもの頃からロックバンドのギターボーカルに憧れていたんです。でも中学の時に自分の声を悪く言われて、深く傷ついて、私にそっちの道はないなって…自分の気持ちにふたをしたのです。だけど厘ちゃんが「はとちゃんがボーカルのバンドを作ろう!!」と言ってくれて私は死ぬほど嬉しかったのです。こんな顔してたけど私は本当に嬉しかったのです。でも私はこないだのライブでみんなの期待を裏切ってしまいました。だから私はこの夏休みで自分はボーカルなんだと胸を張って言えるだけの自信をつけたいのです。今日から夏休みが終わるまでこの永井公園で毎日弾き語り修行だ!知り合いに見られたら恥ずかしい?そんなの知るか!!やってやる……!!今日から私はボーカルだ!!

天元突破するはとっち
はとっちがロックになってから『ふつうの軽音部』は面白い!
  • はとっち、文化祭に出場。ギターボーカルでリベンジを図る!!
    • はとっちのボーカルは聴衆に郷愁を想起させるものであり、聞き手の感情を揺さぶるものがあった。高校生になったはとっちの歌を初めて聞いたのが厘であり、脳を焼かれることになった。続いてカラオケではとっちの歌を聞いた桃は、恋愛により友人ズが離れていく前の穏やかで安らかな時間を懐古する。続いて先輩は中学時代の家庭教師であり初めてライブを聞きに行きバンドをやるきっかけになった先生への百合的感情を思い起こす。さらには、家族に命じられた犬の散歩だけが生存理由である無職のこどおじ氏や常に七色の味の飴を持ち歩くおばあちゃんなどの固定ファンを得ていくのだ(このおばあちゃんは水尾春一の祖母であり、彼がはとっちの弾き語りを聞きに来るきっかけとなる)。夏休みが明けた後には、鷹見にフラれて失恋した彩目をバンドの仲間に加えて「はーとぶれいく」を結成。厘は「るりるり帝国」のモブ男子を用いて「吉田商店」を内部崩壊させると文化祭バンドの出場枠を勝ち取る。こうして、ついに、現在(2024年9月1日)36話にて、弾き語り修行を経たはとっちのボーカルが文化祭で披露されることになった。