【感想】どじろー先生の「逆張り系ゲームオタク陰キャ女」モノの商業作品を読んだ。

自分がリア充になれないからこそ周囲の青春女子たちを見下すことで自我を保ってきた陰キャ女の話。
陰キャ干物女の天野結華は周囲のキラキラ女子に馴染めずにいたが、ゲームを通じて竿役と仲良くなる。
天野結華はキラキラ女子の青春が大したものではないと逆張りをすることでしか自分を保てなかったのだ。
そのためキラキラ女子が恋愛のために化粧やファッションにうつつを抜かしていることを否定しようとする。
お前らが着飾って必死に求めている男との交尾は取るに足らない些末な事であると証明しようというのだ。
しかし結華が否定しようとすればするほど結局は自分もそれに過ぎなかったのだと証明されてしまうことになる。
逆張り女の複雑な内面描写が大変面倒くさく描かれており、秀逸な表現になっている。

逆張り系ゲームオタク陰キャ女の心情描写が大変面倒くさくて素晴らしい作品

逆張り陰キャ女さん、化粧に挑む

話の流れは主に穴役であるヒロインの視点で進んでいく。天野結華は容姿・スタイル共に劣っており、コンプレックを抱いていた。そんな少女が出来る事と言ったら逆張りをすることくらいであった。不細工な自分が着飾ることを恥じているからこそ、逆に化粧やファッションやお洒落をしている周囲のキラキラ女子を見下すことで必死に自分を保っていたのである。フロイト防衛機制でいう所の「すっぱいブドウの原理」と同じやね。だが結華にも理解者が現われる。それが学校で家庭用ゲーム機で遊んでいたら仲良くなったゲーム好きの陰キャオタクであった。結華は徐々に心を開いていき、男女として交際したいという気持ちも生まれるが、それでは今まで自分が否定してきたものは何だったのかという事態になる。故に、処女のままでいるのは面倒だからさっさと捨てたいと言い訳をしながら、キラキラ女子が着飾って求めている男との交尾は大したものではないと証明することを口実に、肉体関係を持とうとしたのである。
 

他者を見下すことで精神的優位を保ち自我崩壊を防いでいた

しかし事に及ぶ前に結華が準備したのはキラキラ女子がやっていることと同じであった。化粧用品を塗りたくったり、自分の肌を綺麗に見せようとしたりするのである。この初めて化粧をする陰キャ系女オタクさんの内面描写が実に秀逸。周囲のキラキラ女子たちが撒き散らしているメスの香りは化粧用品を塗りたくっている匂いであることに気付いたり、自分の身体で竿役がきちんと勃つのか葛藤したりする様子は見ていてグッとくる表現となっている。未経験の竿役が瞬時に暴発してしまった時には自分の身体で昂奮してくれていることに喜びを感じ、自分が見下していたキラキラ女子たちと同類に過ぎないことを自覚してイラつき、何よりも竿役が優しくしてくれるのに自分のことばかり考えている自分にムカつくのである。そんなムカつきを感じる結華がそれでも嬉しさを感じずにはいられず自分の感情を持て余してしまう様子はしみじみとしていて趣深い。陰キャ女の面倒くさい心情を丁寧に掘り下げた作品である。

他者に当たり散らす事しかできない自分へのいら立ち
優しい言葉をかけられても最後まで素直になれない陰キャ女さん