【感想】小野未練「汽水域の2匹は」を読んだ。

運動部でイジメられぼっちになった巨女が世を拗ねる根暗男子と傷を舐めあう話。
竿役を務める根暗男子は学校にも家にも居場所が無く放課後は橋の下で時間を潰していた。
そんな竿役の下に明るく元気な巨女が足繁く通ってくることになる。
なぜ自分なんかに付き纏うのか疑問に思いながらも悪い気はしなかったのである。
だが根暗男子死は偶然ヒロインがバレー部でイジメられ孤立したことを知ってしまう。
ヒロインは身体に恵まれたため期待に応えてバレーをやっていただけという苦悩を吐露する。
群れに馴染めない二人はお互いを慰め合い人間になれないなら動物になれたらと身体を重ねる。
日常パートにおけるコミカルだけれどもどこか切ない表情変化がグッとくる表現になっている。

社会に馴染めぬハミダシ者たちが擦り寄り合って支え合う

ゼロ年代泣き鬱ゲー~世を拗ねた根暗男子~

ゼロ年代泣き鬱ゲーが好きだった人たちにおススメ。学校空間に適応できず、さりとて学校外においても居場所が無かった。一生社会に馴染める気がしない。そんな世を拗ねた根暗男子が竿役の主人公なのである。そんな根暗男子氏は放課後橋の下で時間を潰していたが、そこへ明るくて元気な巨女が足繁く通ってくることになる。自分とは人種が違うヒロインが何故自分に付き纏うのか疑問に思うも、やはり孤独は寂しいものであり、しかも自分とおしゃべりをしてくれるとあっては悪い気がしなかった。

だがある時偶然ヒロインが何故主人公の所に来るようになったのか、その一端を知ってしまう。ヒロインは身体に恵まれていたため促されてバレー部に入り、何とか期待に応えるために頑張っていたものの、出る杭は打たれる、イジメを受けることになり、群れから排除されてしまっていたのであった。根暗男子氏は柄にもなくブチギレ、噂話でヒロインを嘲笑して楽しむ3人組にイキってはみたものの勝てるわけもなく一方的にボコられることになったのであった。

ボロボロの状態になった根暗男子氏はなんとかいつもの場所に辿り着き、ヒロインと落ち合い、そこで初めて彼女の口から事情を語られる。「一人で居るのはさみしくて 私きみにすり寄った」という台詞がグッとくる。その一方で根暗男子氏はこれまでヒロインのことを知ろうともしなかったことや中途半端に首を突っ込みしかも返り討ちにされたことを詫びる。傷の舐めあいと言ってしまえばそれまでだが、お互いが求めあう流れが趣深い演出。「人間やるのって難しいね 群れになじもうとしても 群れから離れても 嫌な思いするんだもん いっそ どうぶつになれたら いいと思わない?」。

行為描写はヒロインがその巨体をいかして根暗男子氏に圧し掛かりダイナミックな挙動をしたり、腋毛を処理していなかったり、後背位は巨大な臀部を突いたり、噛み跡をつけたりと情愛が深いシーンが展開されていく。タイトルの汽水域は海水と淡水が交じり合う場所として作中で説明されるが、群れに交じるのは難しさを感じた二人が、男女として交じり合うという流れでタイトル回収される。ついでにヒロインと竿役もそれぞれの名前が川と海と関連したものになっており、二人が混じり合う場所であることも回収されている。作中ではヒロインの巨女の表情変化が大変可愛らしく、コミカルだけれども、どこか切ない様子が大変素晴らしく描かれている。

社会の中で群れとして生きていくということ
いっそ どうぶつになれたら いいと思わない?