たぬま『恋と魔法とえとせとら』(田屋沼屋、2023年)の感想・レビュー

釣り目系柄悪腐JC2と三枚目系コミカル陽キャ高校男子がヲタ文化を共通の趣味として結ばれる話。
CCSやまどマギなど擬似女児向け風アニメを愛好する高校男子がSNSの相互からオフ会に誘われる。
彼は時たま上がるオサレ系写真から相手が清楚系女子大生と推測し、夢見がちな妄想に駆られる。
だが実際に来た相手は目つきの鋭い柄悪系ちびっ子少女であり、会話も弾まず唯々困惑するのみ。
そんなお通夜状態を解消するのはいつだって共通の趣味。JCのスマホケースから会話が広がりだす。
過疎ジャンルかつヲタ友がいなくてリアルで話し相手に欠けたこともありJCは唯一無二の存在となる。
けれども男にとって気の合う友達という心地良い関係でありそれ以上に進展するJC側の行動が必要だった。
JCは童貞であることを馬鹿にし卒業させてあげると言い出し男をその気にさせようと努力するのである。
たぬま先生の竿役はいつもイケメンだが、今回の3枚目のようなキャラも愛らしくて好き。

3枚目系コミカル陽キャ男子が柄悪JCに振り回されるのが見所!、末尾で描かれる実はJCも恋する乙女だったオチもステキ

第一印象はツリ目系柄悪腐JC2
  • 田屋沼屋作品では珍しい3枚目が主人公
    • たぬま先生が描くヒロインの女の子はとても可愛いが、それ以上に愛くるしいのが竿役の男子たち。これまでのたぬま作品の竿役は抜群のイケメンばかりであったが、今回は3枚目系コミカル陽キャ男子が主人公に据えられている。彼が男子高校生としての淡い期待と欲望によって、振り回されていくシナリオが読み物としてもとても面白い。今回の竿役はCCSやまどマギなど擬似女児向け風魔法少女アニメを愛好しているのだが、リアルでは中々ヲタトークを出来る友人がいなかった。またゲスト出演している男友達は過去作のキャラであり皆、彼女(のような存在)がいるため、一人寂しく童貞を拗らせていた。そんな竿役に突如SNSの相互さんからメッセージが届いて物語が始まるのである。

  • 第一印象最悪であったがヲタク趣味の共有により唯一無二のダチ公に変わる
    • この相互さんは普段の何気ないツイートでオサレな写真を投稿していることから、清楚系女子大生ではないかと勝手に推測。淡い期待を抱いて、リアルで会うことにするのだが……。なんとやってきたのはツリ目系柄悪ちびっ子JC2だったのである。10代はほんの数年が大いなる歳の差に感じるものであり、校種すら違うため、話題も無くお通夜状態になり、気まずい思いをする竿役。だがこの状況を救うのがヲタク文化の共有であり、JCのスマホケースが作品キャラを昇華させた美しいオリジナルモデルであったことから会話が弾みだす。JCは自分のコダワリある愛着品を褒められたことで気分もよくなり、以後、二人はヲタ友達として良好な関係を結んだのであった(完)……となってもそれはそれで美しいのだが、薄い本なので行為が描かれなければならない。関係性変化に主眼が置かれた作品は行為がおざなりになりがちだが、たぬま作品はちゃんと肉体的なつながりをを精神的なつながりに負けず劣らず美しく、そして楽しく描いてくれる。心情変化や身体的反応を丁寧に描かれているのが良いよね。

  • 気の置けない友人関係から恋人関係に発展するには
    • 竿役はヒロインが未成熟なJCであるため女性としては見ておらず、仲の良い友達として大切にしていた。だがJCは自分を女性として見て貰いたい。JCは竿役が陽キャなので経験済みかと思っていたら童貞だったので嬉しくなってしまうのだ。それ故、童貞であることを馬鹿にしながら私が卒業させてあげよっか?と煽ってくるのである。温厚な竿役でも揶揄われれば気分を害すというもの。JCにワカラセようと押し倒してしまうのである。フツーだったらこのまま本番に流れ込むのであろうが、隙を生じぬ二段構え。我に返ったコミカル竿役が自分の行いを詫びるところがグッとくるね。本番はちゃんと致しましょうということで場を整えてラブホに行くことに。ツリ目系柄悪JCがここぞとばかりにふんわり系甘めファッションで勝負を仕掛けて来るいじらしさは破壊力バツグン!!おススメ!だがここでもコミカルさがいい味を出しており、学生らしく格安部屋を選んだり、竿役が責任取るからと漢を見せてくれたりするぞ!そしてたぬま作品の行為場面での真骨頂は、女の子を気持ちよくさせる描写がバツグンに上手いということである。愛撫の描写が実にねちっこく描かれ、ヒロインが快感を得ていく表情や流れがエクセレントに思える。また繋がってからも竿役が抜くというよりは女の子を気持ちよくさせることに焦点が当てられており、実に可愛い。

  • ツリ目柄悪ヒロインの無垢な乙女心
    • 終局部は視点変換ギミックにより、竿役視点からヒロイン視点にチェンジする。そして最初こそ柄悪な印象を与えていたヒロインが、実に乙女だったということを明かされてエンディングを迎える。今回はいつものたぬま作品とは異なるイケメンではない3枚目な竿役であったが、実に彼が愛らしいキャラ表現で描かれていたのでおススメである。たぬま作品はヒロインも可愛いけど、それ以上に竿役に愛着が持てるのが良いよね。
主人公が童貞だと知り嬉しくなっちゃって煽ってくるヒロイン
表情変化がとてもかわいい
初めての日に気合いを入れて来るヒロイン

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